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17話――ヴァルキリー・ドライブ・ヴィランズドウタ―⑥

 ガーワンは多少苛立ったような表情をするも……すぐにそれを消し、私を見つめた。


「それなら――ちゃんと領主として、扱おうかイザベル。確かにお前を子どもと扱うわけにはいかんからな」


 以って回った言い回し。私が警戒心を強めると――彼は、あっさりと口を開いた。


「さっきメイドにも伝えたが、来期の買付をいったん止めようと思っている。お前の領地でとれる、ロッコリーの買付をな。……領主ならその意味が理解出来るだろう?」


「そうですわね、ガーワン様。――暫く、うちの領地の経済が冷え込みますわ」


 決して、この領地に買われなかっただけですぐに経済がガクッと悪化するわけではない。せいぜい、いくつかの中堅商会の経営が悪くなり、小さめの商会が少数潰れるだけだ。

 だがそれが、領主の失政によるものだと知られれば。


「君の領地は――マータイサは、歴代の領主が善政を敷いてきた。大きな改悪は無いが、大きな改善も無い。良くも悪くも常に平均点以上……それと王都に近いという好立地が相まって、特産品が少なくとも人口が増え続けている領地だ」


「流石ですわ、ガーワン様。よくご理解なさっていますのね」


「何代も隣領として交流があったのだ。理解していない方がおかしかろう」


 私のお世辞もさらッと流される。さっきまでのアホみたいな会話とは裏腹に、流石は政治家。ちゃんと締める所は締めてくるわね。

 ガーワンは、長く息を吐いた後……ニヤリと笑った。


「それ故に、領民からの好感度は非常に大切にせねばならない。領主の失政だとバレれば、少なからず悪影響が出るだろう。そこにもう一つ、致命的な失政が重なれば――下手したら、領地を存続させられないかもしれないな」


「……致命的な?」


 言われても、あまり思い浮かぶものが無い。いや現時点で失政だらけ、アホ過ぎる領地経営をしていたイザベル(真)の間になんかやらかしていたら私にも分からないけれど……少なくとも、私が経営するようになってからは失策らしい失策はしていないはず。

 これから領法の改正でバッチバチにデカい商会とは戦う予定だけど、そこまではまだやってないし。

 私が眉根に皺を寄せたからか、ガーワンは意気揚々と口を開いた。


「ああそうだ。お前が先月の頭くらいに確定させた治水工事。――業者の商会がどこの商会かまでは頭に入っていなかったようだな」


 業者?

 確かにイザベルの時代に決めた物だったし、業者本人と金額交渉とかした時もおかしな点は無かったから気にしていなかったけど……。

 私は、さっと血の気が引くのを感じる。


「さて、イザベル。私は特に関係ないのだが……二、三か月もしたら雨季だ。果たしてマータイサは、治水工事をしっかり行っているのかな!?」


 こいつ、まさか――。


「マングーの手がかかった業者……?!」


「イグザクトリー!」


 得意げに笑う、ガーワン。その笑顔に私は――まるで喉元に、ナイフを突きつけられたかのような錯覚に陥る。


(こいつ……!)


 要望が何か分からない、分からないが――私の領民を、人質に取りやがった。

 歯ぎしりしつつ、にらみつける。

 絶対に倒さねばならない敵が生まれたことを、認識しながら。

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