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2話――会議はお茶と踊る-⑤



 うぎゃーと反論するカーリー。私はそんな彼女をスルーして、三本目の指を立てる。


「ただ、それだと現状維持からマイナス。どこかプラスにしないとどうにもならないわ。ということで三つ目の案」


「三つ目……ですか?」


 カーリーは首を傾げながらタルトを食べる。そのタイミングで紅茶が出来たらしい、アクアが私とカーリーの前に注いでくれた。

 私は紅茶に詳しくないが、相変わらず良い香りだ。こういう所に金をかけてるから領地の運営がおろそかになるんでしょうが。

 私もカーリーが作ってくれたチョコタルトを食べる。甘くて美味しいし、周囲のクッキーとの相性も抜群だ。これは紅茶が進むわね。


「そう、三つ目。私たちは領法を作れるわ、それを使って取引をする」


 この領地を運営するのは私たち。イザベル(真)はバカみたいな運営していたけれど、まだ悪法を連発するという破滅の道までは足を踏み入れていなかった。いや持ち物だの屋敷だのに抵当権がついている時点でアウトだけども。


「領法って……も、もしかして重税を課すとかですか!?」


「おばか。こっから領地の運営をどうにかしようって言ってるのに、重税を課して住民の信頼を手放してどうするのよ。違うわ、金貸しに対して適切なルールを設けるのよ」


 金利の上限や、貸し出す対象の制限、そして登録制度など。前世の貸金業法ほどかっちりした物は作れないし(そこまで知らないし)、実際の調整には時間がかかるけど……少なくとも全ての『金貸し』にルールが無い状況を、『違法金貸し』と『合法金貸し』に分けることが出来るようになる。


「そして、アンタらには先に教えるから――真っ当な金貸しになりなさい、って言うのよ」


 ここまで頭が回るのだ、この取引には乗ってくるだろう。実際はここをフロントにして違法な金貸し屋を作って運営するかもしれないけど……。


「上手くいけば取り込める。こっち側にね」


 狡猾に金を稼ぎたいだけなら、私たちにショバ代を払ってでも合法側にいようとするだろう。ハッキリ言って、アホみたいな借金で身を持ち崩す奴がいようがどうだっていい。

 でも、こうやってしっかり金貸しにルールを作れれば……ちゃんとした融資や弱者救済の融資だって出来るようになる。


「ルールが無ければ、全ての債務者は弱者よ。でもルールを作れば、『金を借りる』ことがちゃんとした救いになる人が必ず出てくる」


 それが金融だからね。


「……えーっと、よく分からないんですけど。だってお金を借りても、結局利子とか手数料とかがかかって……最終的にお金は損するんじゃないですか?」


 私の言葉に、ピンと来ていない様子のカーリー。そりゃ十歳で死んだのなら、お金がどういう物かなんか分かりはしないだろう。

 というかその認識しか持っていない部下一人で、よく領地を運営しようと思ったわねイザベル(真)は。


「お金を貸すっていうのはね、相手に時間を売ることと同義なのよ」


「時間……?」


 彼女は更に意味不明と言った表情になって、首を傾げた。私はチョコタルトを食べながら、笑顔を作る。


「そう、時間。例えばそうね、月に五万ミラ稼げる人がいたとしましょう。でも、馬車があれば月に七万ミラ稼げるようになるとしたら……その人は馬車を欲しがるだろうと思わない?」


 こくんと頷くカーリー。彼女はタルトも食べずに真剣にこちらの話を聞いている。将来、詐欺師に騙されないように守ってあげないとね。


「でも馬車は百万ミラ。そしたら、二十ヵ月時間が必要になるわ。……でも、お金を借りて今すぐ馬車を手に入れたら、その二十ヵ月で差額にして四十万円多く儲けられるってことになるの」


「た、確かに……」


「借りたお金の利子が四十万円以下だったら、その差分儲かる上に二十ヵ月前倒しで馬車が手に入る。これが『お金を借りることは時間を買うこと』ってことよ」


 時は金なり、タイムイズマネー。

 これは「時間はお金と同じく貴重なものなので、浪費することなく、有意義に使うことが大切である」という戒めでは無く、言葉通りの意味なのだ。

 時間は金で買えるし、金は時間に変換出来る。

 ただ等価になるかどうかは、本人次第というだけで。


「これを上手く使えば、お金が無いために自分の力を十分に発揮出来ていない人や、お金が無いせいで我慢を強いられている人たちを救うことが出来る。金融を整備するということは、より多くの人が活躍出来る社会を作れるということでもあるのよ!」


「う、うおおお……」


 感動した様子のカーリー。うん、やっぱりこの子は絶対に詐欺に騙されるわね。

 とはいえ、言っている内容に嘘は無い。金融マンの理想であることは間違いないから。


(理想だけで動けないのが、現実なんだけどね)


 とはいえ、せっかくの理想。異世界なら叶えられるかもしれない。


「それが分かったらカーリー、早速いろいろと準備するわよ!」


「は、はい!」


 頬を紅潮させ、感涙しているカーリーを立たせ――私たちは準備に向かうのであった。


「でもほんと、良かったです。もう既にボクの持ち物は殆ど売りさばかれちゃってたので」


 だからどんだけこの家は困窮してるのよ!! あと十歳児の持ち物を先に売るんじゃないイザベル(真)!


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