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16話――しゃる・うぃ・だんす!④

「た、確かめようと思って……」


 私の答えに、ため息をつくカーリー。


「そうですか。……まぁ、やってしまった物は仕方ないです。ただ直接確かめなくても、こそこそ調べられるんですから。予定とは違うアクションをする時は言ってください」


「う、ごめん」


 淡々と怒られる方が精神的に来るわね。

 しかし、あんまり使用人と長々話していると、それはそれで良くない噂が立つ。

 そろそろ二曲目が始まるし、目立たないよう端っこでテキトーに談笑でもしてましょうか。


「じゃあ僕はガースリー達の噂にでも聞き耳を立ててくるよ。女神も……」


「ええ。情報を探りつつ、上手いこと隠れるわ」


 目をつけられても良いことは無い。さっき飲んだ酒のせいで、まだ気持ち悪いし。

 私はため息をついて、カーリーと共に歩き出す。


「あと誰に挨拶しなくちゃいけないんだっけ」


「ガーワンは当然として……イザベル様がご挨拶されたいと言っていたのは、マングーで卸売商会のバッグについているマグワーク子爵ですね」


 ああそうだった。梅の件、もうちょっと詳しく話をしたいんだった。

 今日は次に会うアポイントさえ取り付けられればそれでいい。私は周囲に視線を巡らせて、マグワーク子爵を探す。


「……いた、けどなんか端っこの方にいるわね」


「人付き合いが苦手な方らしいので。だから子爵ですが領地どころか自治地すら断ったらしいです」


 この国では子爵以上だと、爵位を子孫に譲る権利と領地を貰える。というか領地を持っているから子爵以上の爵位が与えられるというべきか。

 そして私やレギオンホース家のように、一つの家で領地を経営している貴族もいれば、複数人で領地を一つ治めている場合もある。数で言えば全体の半数くらいかしらね。

 ただ、全部の貴族に領地を与えられるわけじゃない。そういう人が貰うのが自治地だ。

 政治や経営をする代わりに、ごく小さい土地(と言っても庶民からすれば大きいけど)を貰うことを言う。

 経営をしない分、貴族議会の下院に参加することを義務付けられるが、それ以外の仕事を一切しなくて良い特権階級。大体家督を譲った老人や、跡目争いに負けた次男以下なんかがこんな風にして住んでいる。

 貴族でも副業的に商会をやっている人は少なくない。しかしそういう人でも、最低限自治地くらいはもらっている。あって困るものでもないし、不労所得は全人類の夢だからね。

 だというのに、マグワークはこの自治地すら断っている。……相当変人か、それとも下院出席する時間すら無いほど本業が忙しいか。

 まず間違いなく前者でしょうね。でも商会をやってるからには、ビジネスの話には食いついてくれるはず。


「早速行くわよ」


「ラジャー」

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