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16話――しゃる・うぃ・だんす!③

 そこでちょうど、一曲が終わった。私は彼と手を放すと、笑顔を見せてから踵を返す。


「あ、あの!」


「あら、もう一曲踊りたいの?」


 礼儀だし『人造人間』かどうか試したかったので一曲は付き合ったが、これ以上となると私にメリットは特にない。私が振り向いて、悪役令嬢らしい表情で彼を見据える。

 ガースリーはそんな私の顔を見て、一瞬怯んだものの……すぐに意を決したような表情で、背筋を伸ばした。


「い、いえ。次は……次は来年の学院で。その時までに、イザベル様に相応しい男になってもう一度お誘いします!」


「……あら、根性のある男は嫌いじゃないわ。その時になったら、楽しみにしてるわね」


「はい。失礼します」


 礼を言って去っていくガースリー。私は深くうなずき、カーリーの所へ戻る。

 するとそこではややキレのカーリーと、呆れ顔のユウちゃんが待っていた。


「あら、ユウちゃん。マークを置いてきてくれたのね」


「うん。……ところで女神、少しいいかい?」


 私に飲み物(お水ね、中身は)を持ってきてくれた彼女は、苦笑したままフロアの中央を見る。


「女神も理解していると思うけど、夜会というのは社交界。その場で女性に求められる振る舞いは、花だ。いるだけで美しく、華やかになる存在」


「まぁ、そうなんでしょうね」


 特に若ければ若い程、そう求められる。


「ただ当主の娘ならいざ知らず、女神はマイターサの領主。となれば、花としての役割のみならず領主として――領地を背負った振る舞いも求められる。大変だとは思うよ、僕は結局貴族であることを投げ出したからね」


 彼女が気を遣ってくれているのはよく伝わってくるが、話は見えてこない。私が首を傾げていると、彼女は肩を落としてからフロアを示した。


「主役を食ってはいけない。今この会場で、最も注目を集めているのは女神――君だ」


 ……あら。

 言われてみれば、私へ視線が集まっている。良い意味でも、悪い意味でも。


「今回の主役はガースリー君だったからね。女神は……やり過ぎだったんじゃないかな」


 遠慮がちに言われたセリフで、やっと自分の失態を悟る。

 頭から、自分が貴族であり――そして『お淑やかなイザベル』であることが抜けていた。

 舌打ちしたくなる気持ちを抑え、私は二人に謝罪する。


「ごめん、完全にやらかしたわ」


「どこかでやらかすとは思っていましたが、まさかこんな所でやっちゃうとは。……ちなみに、なんであんな真似したんですか?」

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