18 悪役令嬢の2年後
時は過ぎて――――ママと約束した2年後。
15歳となった私は男性画家“エドワード”として画家をしていた。
エドワードは天才画家として世間に名を知られ、彼(私)の作品はとんでもない額で取引されていた。
それもそう。
1年前に王族の1人がエドワードの絵を買ったことで、名を知られ、絵を評価されるようになっていた。
まぁ、これは全力で売り出してくれたパパのおかげだろうけど。
パパが私の絵を積極的に売り出していたので、そのうち貴族の目に留まるようになり、ついに王族の目にも留まったというわけである。
こうして、“エドワード”として有名画家になった私は約束通り学園には行かないと決めた。
「姉さん……やっぱり学園に行かない?」
午前中から作業をしていた私のところにデインがやってきていた。
今日の彼は新品の学園の制服を着ている。
学園の制服は赤ワインのブレザーに、薄っすら白ラインの入った黒のネクタイ。
下にはホワイトのズボンをはいていた。
「ごめんなさい。いくらデインの頼みとあっても行くことはできないわ」
筆をパレットの隅に置き、デインの方に体の正面を向けた。
「だって、私は画家“エドワード”だから」
「そう……」
「だから、デインは学園生活楽しんできて。レン様もいるんでしょ?」
そう尋ねると、デインは寂しげに「うん」と小さく言う。
新しい場所に行くのが怖いのかしら?
「じゃあ、僕行ってくるね。あ、今日は会議だから少し遅くなるかも」
「分かったわ。行ってらっしゃい」
デインはそう言って、アトリエを出ていく。
八星騎士を目指していたデインは私と同じように1つ目のゴールにたどり着いていた。
彼は序列9位のナイト・オブ・コメットになっていた。
★★★★★★★★
授業を終えた放課後。
僕、デインは王城に来ていた。
今日は星光騎士全員が集まる日。
なので、王城の一室に設けられている部屋に向かっていた。
目的の部屋の扉を開けると丸い机。
そして、それを囲む人々。
僕よりも先に数人来ていた。
「おーい! デイン!」
無邪気にこちらに手を振る銀髪少年。
その隣には黒髪のポニーテール少女。
そう、その円卓にはこの国の第2王子レンと侯爵令嬢のアナスタシアがいた。
アナスタシアは出会った時からすでに星光騎士だったが、レンは僕と一緒につい最近星光騎士になった。
アナスタシアは変わらず序列7位のナイト・オブ・ウラノス。
レンはアナスタシアより1つ上の序列6位ナイト・オブ・サターン。
「レン。こんなところではしゃがないでくれる? 子どもじゃあるまいし」
「いいじゃん。ここには見知った人しかいないし、妙に静かだし」
「うるさい。名ばかりのサターン」
「名ばかりじゃないよ。今の僕は君に勝てるんだから」
「…………」
レンがそう反論すると、アナスタシアは眉間にしわを寄せながらも、黙った。
僕もアナスタシアと同感だよ……このレンが3人の中で一番強いだなんて。
レンはコッソリ練習を重ねていたのか、アナスタシアに剣術で勝てるようになっていた。
僕はアナスタシアにもレンにも勝てないのだけれど。
数分経つと全員が集まり、陛下もいらっしゃった。
不在のところもあるので、何個か空席はある。
星光騎士は13人全員がつくわけじゃないらしい。
会議が始まるのをじっと待っていると、入り口の方から光が。
そちらに目をやると、閉めていたはずの扉が開いており、人が1人立っていた。
全員そろっているのに一体誰が…………。
「……!」
あるものを目にした僕は思わずハッと息を飲む。
そんな……バカな。
その人の胸には幻の勲章をつけられていた。