第4話 私、そんなに困ってない
「マナちゃん、ご指名入りま~す!」
年長のアキナさんは優しい声で私を呼ぶ。
アキナさんに圧されて、マナは渋々鷲尾の隣に座る。
空いている時間だけあってみんなこっちに興味津々のようでやり辛いことこの上ない。
「美林も東京に出てきたんだな」
「うん」
「どうだ?東京での生活」
「どうって・・・別に」
周りがこっそりこっちをのぞく。
いやむしろバレバレだから
ああ、なんかこっちまで恥ずかしくなってきた。
鷲尾君は深刻そうな顔をしている。
さっきからなんだろうこの反応?
「生活に困ってるんなら、俺が助けになりたいんだ!」
これ俺の住所だから、お金も結構貯金してるし、使い道ないし
お金の工面ぐらいならできるぞ
「身受けするって事ね、きゃ~」
アキナさんが叫ぶ。
「・・・困ってない」
「・・・私・・・そんなに困ってないし」
にこりと笑った笑顔に「大きなお世話」だという表情が混じる。
気まずく席を立つマナ
「あらら、ちょっとマナちゃん!」
アキナさんと呼ばれる女性が俺のフォローに入る。
その時はっと気づく。
やっちまった
課長にノセられて
勝手に貧乏だって決めつけて傷つけちまった。
ああ、俺は最悪だ。
俺はお金を払ってそそくさと店を立ち去る事にした。