第2話 君は何か勘違いをしているんじゃないか?
「美林って、ほらA組のあいつと付き合ってるんだってさ」
その噂を聞いてしまった後
俺は学校を病欠する・・・一週間ほど
そして、
在学中、目を満足に合わせることも出来ず・・・
そして高校時代は灰色のまま終わってしまう。
不幸だ。
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それから数年後
上京してそれなりのIT企業に勤めている。
仕事はグレー寄りのブラックだが、まぁ頑張っていた。
「だははははっ!!」
昨日の出来事を語った後の同僚の感想
・・・とにかく馬鹿笑い
うおい、俺はすごく真剣だったんだぞ
「よし、今日もその店に行こうぜ!」
「あほか、もう二度と行かん」
「・・・ええ」
「なんでだよ、好きだったんだろ、その子の事」
「『好きだった』じゃない・・・大好きだよ・・・今も!」
今でもたまに夢に見るし
「・・・」
「そのちょっと『引く』のやめろ!」
「じゃなんでだよ?」
「あれだけ天使で女神なんだ・・・どうせ彼氏いるだろし、俺なんかお呼びじゃないだろうし・・・」
呆れる同僚をよそに鷲尾は下を向きため息をつく。
その様子を眺めていた課長は席を立つ。
彼はいつも物静かな人物だ。
「鷲尾君」
「課長」
「すいません、私語は慎んだ方がいいですよね」
「君は何か勘違いをしているんじゃないか?」
「え?」
真剣な面差しと口調に鷲尾は戸惑う。
「君は彼女が・・・この魔都、東京で順風満帆に暮らしていると・・・本当に思っているのかね?」
「どういう・・・ことです?」
鷲尾の顔に汗がつたう。
考えてもみたまえ、
あんな場末の夜の店で働いているんだぞ、
お金にすごく困って、生活がままならないのかもしれない・・・
はっ・・・もしくは悪い彼氏に騙されているのかもしれない・・・
「・・・ッ!!」
課長は
真剣な顔で話終え、
コップのお茶を少しすする。
「はっはっはっ・・・なーんて冗談だが」
「課長・・・鷲尾の奴、本気にして、退社しちゃいましたけど」