食材選び
全ての内臓が袋に入り、手を洗い終わる。
そのままリヨリを先頭にカチの家の蔵を目指す。道中ナーサから痛み止めをもらったお陰で、動きに支障は無い。
マルチェリテも重い内臓が入った袋を軽々と持ち運んでいた。
ほどなく、カチの家に着いた。
他のみんなは蔵の戸外に待たせて、リヨリとマルチェリテ、二人で食材を物色する。
「うーん……何作ろうかなぁ。フェルシェイルは炎と肉って言ってたけどさ、マルチェはどんな料理が得意なの?」
「得意料理ですか、そうですねぇ……あ、脂肪のタップリ乗ったお腹の肉、こちらいただきますね」
マルチェリテはトカゲの胴体を取り上げる。リヨリは予想外の顔をした。
「え?バラは骨潰れてるけど良いの?使いにくいよ?」
「はい、多分ですが大丈夫です。私、こういう脂身とか内臓みたいな、濃い味付けにしてガッツリとした料理が大好物なんです」
どちらも、普通のエルフは顔をしかめる料理だ。しかしマルチェリテは屈託なく笑った。
「へぇ、やっぱり……その、変わってるね」
「ふふ、よく言われます。リヨリさんはどういう料理がお好きなんですか?」
「好きな料理か……うーん……」
リヨリが蔵を見回す。
「……あ、そうだ」
トカゲの腕、そしてツタの一部を取り出す。
「あら?腕ですか?淡白過ぎじゃありませんか?」
良く動かす部位でもある腕は引き締まって、歯ごたえが良い。しかし脂身は薄く、その分味はあっさりしている。
「へへ、あっさりしてるの好きなんだよね。……ま、料理勝負のお楽しみってことで」
リヨリもニッコリと微笑む。
「それに、さっきフェルシェイルが面白い物作ってくれたし、そのお返しもしたくなってね。じゃ、行こうか」
店に戻り、リヨリは勝負服に着替える。 吉仲もついでに軽くシャワーを浴び、泥と返り血で汚れた服を着替えた。
カウンターにナーサとフェルシェイル。吉仲のために真ん中の椅子を開けている。
そして老人達がその周りに椅子を持ち寄り、これから始まる戦いの期待で盛り上がっている。
マルチェリテは調理場に立ったまま二人を待つ。
「はー、サッパリした。さっき朝飯食ったばかりなのに、なんかすげー腹減ったよ」
「大立ち回りだったものねぇ」
着替えた吉仲が、フェルシェイルとナーサの間の椅子に腰掛ける。そのすぐ後、白い割烹着に着替えたリヨリが現れた。
「あれ?マルチェはそのまま?準備しなくて良いの?」
「はい、大丈夫です、始めましょう。
マルチェリテは、来た時と同じ服装のまま、旅行鞄すら持ったままだ。
リヨリは怪訝な顔つきでマルチェリテを眺める。
「リヨリさん、誓いを」
マルチェリテは本当に問題ないらしい。




