夕暮れ
ダンジョンから出ると、外はすっかり夕暮れていた。どこかから、遠ざかる鳥の声が聞こえる。
「ダンジョンに潜ると、時間の感覚無くなるなぁ」
ツタを置き、吉仲は大きく伸びをした。
「時間が分からないものねぇ。ねえ、吉ちゃん、お願いがあるんだけどぉ」
「ん……?」
「私達、リヨちゃんの治療しなきゃだから一足先に帰るわねぇ。それでねぇ、ツタを蔵にしまって、トカゲを沢に沈めておいてくれない?って、リヨちゃんがぁ」
吉仲はツタと簀巻きのトカゲを見る。
沢は近いから沈めること自体は問題無いだろう、カチの家も一度分かるとそう遠くは無い。
「ああ構わないけど……蝙蝠は内臓抜かなかったっけ……?俺にはできないぞ……?」
「内臓……抜いて……」
リヨリが脇腹を抑え、息も絶え絶えに言葉を発する。歩いている内に痛みが強まってきたらしい。呼吸は荒く、顔も真っ青だ。
「ええ……」
「いいわ、アタシがやってあげる。このサイズの内臓を抜いたことは無いけど、身体の構造は魚とそんな変わらないでしょ」
リヨリが力なく頷き、フェルシェイルに鞘ごと山刀を渡す。ナーサはロープの拘束を解き、トカゲの体は力なく横たわった。
「内臓抜いて、ロープで縛り直して沢ね。じゃ、吉仲はその間にツタしまってきてよ」
「お、おう!」
「じゃ、リヨちゃん。もうひと頑張りよぉ」
吉仲は、フェルシェイルがいてくれて助かったと今日一番感謝した。ツタを持ち上げて蔵へ急ぐ。ナーサはリヨリをロッドに乗せて家に向かった。
フェルシェイルは手際良く腹膜を切り裂きはじめる。
吉仲が戻ってきた頃、フェルシェイルの作業は一通り終わっていた。内臓は取り出され、ロープで身体を締め直している所だった。
二人はトカゲをロープで簀巻きにしたまま沢に沈める。
「これでひと段落ね」
「ああ、助かったよ。店に戻ろうか」
陽はそろそろ沈みそうになり、辺りは薄暗い。
「ねえ。ジャイアントバットの時は内臓はどうしたの?」
「リヨリが持って帰って煮込みにしたかな。食べられない所はナーサが持っていったけど」
「なるほどね、じゃ今日の晩御飯はモツ炒めにしてあげる」
ジャケットから麻袋を取り出し、取り出した内臓を詰める。
「作ってくれるのか?」
「当たり前じゃない。リヨリのあの怪我で晩御飯は無理でしょ。なんなら明日の解体も手伝ってから帰るわよ」
料理人が解体に立ち会うことは普段ほとんど無く、それは彼女に取っても貴重な体験になる。
「そっかそっか、本当に助かるよ」
「ま、あの様子じゃリヨリは作業出来なさそうだしね」
そう言うフェルシェイルもまんざらでも無さそうだった。




