拘束
異常を察知したトカゲが爪を振りかぶる。
とにかくリヨリに一太刀入れようと、無我夢中に振り回す体勢だ。
炎を出すには間に合わない。リヨリも危機を察知したが身体がすくんで動けなかった。
「これで良いんだな!ナーサ!」
吉仲が、トカゲに向かってロープを投げていた。
ロープは吉仲の手を離れた瞬間、甲高い音を発し、トカゲの身体に巻きついて拘束する。
そのまま捻り、締め上げ、激烈な力でトカゲの全身の骨を砕き、それでもさらに絞めあげる。
トカゲは呻きをあげ、身体を動かそうと力を込める。
しかし、ロープはトカゲの力ではピクリとも動かず、ギリギリとトカゲを圧縮する。
トカゲの振りかぶった腕が、力を失い不自然な方向に垂れる。
トカゲは、立ったまま生き絶えていた。
「やった!……きゃあ!」
リヨリがホッとした瞬間、ツタの最後の一撃がリヨリを打ち据えた。
身体が大きく飛び跳ねる。
「リヨリ!」「リヨちゃん!」
ツタはそれを最後に力付き、全体が静止した。
背中を打たれたリヨリはうつ伏せに倒れこみ、三人が駆け寄る。
「いたぁ……」
「もう、獲物から集中を途切らせちゃダメだって言ったでしょお?」
ナーサは安心したようにため息をつき、リヨリを抱き起こした。
――トカゲとの決着から、十分ほど経った。
「リヨちゃんどう?立てる?歩ける?」
ナーサに手当てをしてもらい、背中の大きな青痣にが湿布を貼られたリヨリがゆっくりと起き上がり、シャツを下げる。
「いたたたた……ありがとナーサさん。多分大丈夫」
リヨリは立ったままのトカゲと、力を失ったツタに目を向ける。
「それより、これを持って帰らないと……このロープは魔法道具なの?」
「ジャイアントバットの時にも使ったじゃない。血抜きの時に使った吊り上げロープよぉ」
「え?こんな絞め殺すほど強いの!?」
「それは吉ちゃんねぇ、思った通りの挙動をしてくれて助かったわぁ」
暴風を起こした魔法陣を眺めていたフェルシェイルが、ナーサとリヨリの元に近づく。
「あの風も吉仲なんでしょ?一体どういうことよ」
「吉ちゃんのおたまちゃんねぇ。強制的に魔法式を書き換えて、あらかじめ定められた全開以上に効果を吐き出させる力があるみたいなのよぉ」
「はぁ!?そんな魔法道具アリなの?」
「かすかな灯りの魔法は限界を超えて閃光にぃ、換気のための弱い風魔法は炎の壁すら押し戻す暴風、ロープの拘束は獲物を絞め殺すほどに。もっともその魔法陣も道具も壊れちゃうけどぉ、すごいわよねぇ」
「すごいって、そんな陳腐な一言じゃ片付けられないわよ……」
フェルシェイルは呆れたようにトカゲを見た。
爪を振りかぶった体勢はそのままに、首と腕は曲がり、皮と肉だけで繋がっているようにぶらんと垂れ下がっている。
倒れ込まないのが不自然なほどのバランスだ。
「吉ちゃぁん、もう良いわよぉ」
ナーサが袋小路の前の角で待っていた吉仲を呼んだ。




