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ニ対二

フェルシェイルが手を翻すと、燃え盛る炎の壁は熱気を残して消失した。


「気をつけなさい!」

「う、うん!」


ひるむトカゲに向けて、リヨリは山刀を突き立てようとするが、トカゲは咄嗟に後退りツタの中へと逃げ込む。

同時に、ツタが激しく動き出した。無限の鞭がバラバラに振るわれているような状態だ。


二人は思わず追いかけようと一歩踏み出すも、振るわれるツタの中に入っていけない。


荒れ狂う無数の鞭の中に飛び込むような物だ。

死ぬことは無いかもしれない、だが身動きは取れなくなるだろう。そして、トカゲの爪牙の格好の餌食になる。


その証拠に大量のツタは全てトカゲをかわし振るわれ、トカゲは様子を伺うように、しきりに舌を出している。


「とりあえず、あのツタをどうにかしないとね……リヨリ、アンタがツタを切り払いなさい。トカゲからはアタシが守るから」

「分かった。お願いねフェルシェイル」


フェルシェイルの能力からすると、植物の魔物は最高の相手だ。

軽く腕を振るうだけで、何もさせることなく完封し倒せる。

しかし、食材を得ようとするとこれ以上に相性最悪の難敵もいない。

何をしても燃えてしまうのだ、リヨリの身を守るだけでも調整に難渋しそうだ。


リヨリが山刀を構える。

目標はツタそのもの。一歩踏み出し、山刀を振るう。

ツタに命中し、先端が飛び、緑の液体が飛び散る。


反射的に荒れ狂うツタを見て、トカゲが飛び出してきた。


フェルシェイルは小さな火球をトカゲに飛ばす。

トカゲを焼く面積を最小限にし、ツタに延焼させないよう調整された火球は弱く、トカゲに満足なダメージを与えられない。


しかし、リヨリがかわす隙を作ることはできた。

リヨリは距離を取り、フェルシェイルの横に立つ。

「いけそうね。……時間は掛かりそうだけど」

「……うーん……でもこの方法じゃ、触手の食べる部分無くなっちゃうかも……」


リヨリは山刀を構えたまま足元の触手を見る。

切られた部分はすぐにしなびて、食べられるようには見えない。


触手植物は、マンドラゴラ同様に触手内の豊富な水分をポンプし動かすことで触手を動かす。

マンドラゴラの抜かれた時にのみ機能する四本だけの動根と異なり、その触手は無数にあり自在に動き続けられる。

その分必要となる水分量は圧倒的に多くなり、水分を伝える管が切られた時、一気に水分を吐き出すのだ。


素早く動く獲物に刃を当てること、これはある程度の訓練を積めば誰にでもできる。

しかし、動き回る獲物の狙った場所に、狙った通りに刃を当て切ることは、熟練の戦士でも難しい。


ましてリヨリは料理人で、動く獲物に刃を当てるのはこれが初めてだ。

山刀を握るリヨリの手が、じわりと汗ばむ。


「ツタの壁に張っている方を切れば剥がれて動きが止まるかな?……お父さんはどうやって採ってたんだろ……?」


切られた触手は、ポンプに使う細胞を膨らませて止水している。

ツタ植物の動きを止めるためにツタを切り続けるなら、可食部はほとんど失われることになるだろう。


トカゲは、しきりに舌を出している。

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