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地下二階へ

ノームの身体がわずかに赤く揺らめく。


「強い強い炎の力……おまえ、誰?」


フェルシェイルの前にノームが立つ。

カチは帰り、リヨリ、吉仲、ナーサとフェルシェイルの四人がダンジョンのポータル、ノームの部屋に入った。


「私の……なんだろ。友達?ダンジョン入ってみたいってさ」

ノームとフェルシェイルの傍らに立つリヨリがフォローに入る。


「……友達……まあ、そんな所かしらね」

緊張しつつも、フェルシェイルもまんざらでは無い顔だ。


「リヨリの仲間ならいい」


ノームが手のひらを差し出し、フェルシェイルがその小さな手に指先で触れる。

ノームの身体が高熱の物体に触ったように跳ねた。


「フェニックス……」


「そう、火の鳥の精紋を持つパイロマンサー、フェルシェイルよ。よろしくね」


ノームはフェルシェイルがダンジョンに入ることを許可し、四人はポータルの魔法陣から第一階層へと飛ぶ。


「へぇ……ここがダンジョンなのね……たしかに魔力が濃密。空間中に逃げ場なく閉じ込められてるみたい」


殺風景な荒削りな土の壁に、等間隔に並ぶ明かりの魔法陣。床はボロボロの石畳、部屋の奥には朽ちかけた木の扉。

それらを見回し、フェルシェイルは感慨深そうに呟いた。


「そうなのか?」

「そうねぇ。近い雰囲気で言うと、パンパンに膨らんだ風船の中にいるみたいな感じかしらぁ」

「うーん……あんまり気持ち良さそうじゃないね……」

「ああ……」

「そんなこと無いわよぉ、例えが悪かったかしらぁ。まあいいけどぉ。あ、フェルちゃん」


ナーサがフェルシェイルに声を掛け、帰り方の説明をはじめた。


「それで、今日の目標は?」

その間に、吉仲がリヨリに尋ねる。


「うーん。とりあえずジャイアントバットを……とも思ったけど、せっかくフェルシェイルもいるし、ちょっと奥まで進んでみたいかも?」


吉仲がフェルシェイルとナーサに目を向ける。たしかにこの二人がいれば心強いし、奥まで進めそうだ。


「私は吉ちゃんのおたまを調べてみたいけどぉ……まあ奥まで行けば使う機会もありそうだし、それでも良いわよぉ」

「じゃあ、そうしようか」


吉仲はおたまを弄びつつ答えた。

フェルシェイルには道すがらおたまの事を伝えたが、釈然と来ていないらしい、吉仲に変な目を向けつつも、頷いた。


ナーサとフェルシェイルを先頭に、一向は歩き出す。

前回はナーサの光を放つ魔法生物のみで薄暗かったが、フェルシェイルが灯す炎の明かりのお陰でかなり明るい。


そして、一階を進む間、魔物は一向に出てこなかった。


「なんかおかしいね。こないだはスライムなら結構いたし、ジャイアントバットが襲ってきた辺りも過ぎたのに」


前回ジャイアントバットを狩った地点を越えた頃、リヨリが周囲を見回しながら呟く。


「そうねぇ。一階に出る魔物がスライムとジャイアントバットだけなのかもしれないわねぇ」

「ん?どういうことだ?」


フェルシェイルが三人に微妙な顔を向けた。


「どっちもアタシが原因ね。……スライムは熱に弱いから、アタシから漏れ出る火の鳥の魔力から逃げていくし、ジャイアントバットは光に弱いから、やっぱりこの明かりからは逃げていくみたい。炎を消せばジャイアントバットくらいはエンカウントするかもしれないけど」


フェルシェイルは拍子抜けしたようだった。

ナーサがクスクスと笑う。

「そうねぇ。せっかくだしぃ、ちょっと下の階層に行ってみましょうか」


前回の探索の時に下へ向かう階段は見つけていた。

リヨリとフェルシェイルが激しく賛成し、ナーサは踵を返す。


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