表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
314/375

リッチの目的

リッチが重低音の雄叫びを爆発させる。


<数万年ぶりにカラルレリアを掌握シ……その魔力を喰らウ……!>


「……カラルレリア……カルレラの古名ですね……」


マルチェリテが耳を押さえ、緊迫した声で告げる。

脳裏で轟く爆音のために激しく頭が痛むが、今はそんなことを気にしている暇はない。


「それに、魔力……リッチの目的は……王都のダンジョンですか……」


フェルシェイルが弾けるようにマルチェリテを見た。


王都の地下にある、世界有数の広大なダンジョンの、潤沢な魔力を喰らう。


魔力と、魔力を蓄えた魔石を文字通り喰らい尽くし自らの力に変える。

巨大なダンジョンの魔力を利用しなければ使えないスケールの極大魔法を発動する。

ダンジョンを解き放ち、全ての魔力を外界に放出し地上を魔界に変える。


マルチェリテの脳裏にカルレラの魔力が必要となるいくつかのシナリオが思いついた。

ただ、リッチの意図やこれからの行動がなんであれ、王都が滅びることに違いはない。


「そんな!……父さん……レイネ……みんなもいるのよ!?」

「カチじい達に、イサさん、サリコルさん達も!なんとかしないと!」


王都の危機を聞かされたフェルシェイルとリヨリが驚きの声をあげた。


マルチェリテがうなずく。

彼女にも王都には愛すべき友がたくさんいるのだ。リッチが“跳ぶ”までに阻止しなければいけない。


だが、マルチェリテは同時に無力感も覚える。

吉仲は囚われ、おたまの力は使えない。フェルシェイルの炎も、ベルキドアの矢も効かない。

ナーサは放心しているようだ、自分が考えつかなければいけない。


リッチが動き出すまでにはまだ時間はあるだろう、しかし、打つ手が思いつかなかった。


<さテ……貴様らは用済みダ……ご苦労だったナ>


リッチの、左腕に魔術式が浮かぶ。

魂奪い(ソウルスティール)ではない、魔法攻撃だ。だが、込められた魔力は段違い。発動まで多少は時間があるようだ。


「……フェルさんごと殺す気……は、なさそうですね……」


マルチェリテが思考を巡らせる。

自分たちを殺したとしても、フェルシェイルだけは生け捕りにするか、魂奪い(ソウルスティール)を使うはずだ。


リッチは、目的意識のみで動く存在だ。

火の鳥の精紋への執着を覚えたリッチが、捨てる選択肢を持てるはずがない。殺したら、手に入らなくなることは百も承知のはずだ。――それなら。


「フェルさん!全開で炎の壁をリッチに飛ばしてください!」


「わ、わかったわ!」


フェルシェイルが気合を込め、炎を放つ。

広がる炎はまさしく壁、熱気が三人を打つが、下にいることで火傷するほどではない。


<……圧空潰(エアプレス)


同時にリッチが振るう左腕からは、空気の壁が出現した。高密な空気によって空間が歪む。その様子はまさに壁だった。


空気を槍状に固めて飛ばす圧空穿(エアピアス)と同じ魔法だ。ただし、より広い面に空気を固めて放つ。


押し潰し殺すこともできるが、リッチは途中で解除し気圧の変化で気絶させるつもりだろう。

大量の魔力を必要とするが、敵を殺さず無力化させる手段として優秀な魔法だ。


燃え盛る炎の壁と、空間を歪ませる空気の壁がぶつかりあい、せめぎあう。


「くそっ……くそっ……させるか!」


吉仲が片手で、肩に引っかかっていた白い鞄を探る。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ