ダンジョンの真実
ベレリ、ガテイユ、シイダが帰り、しばらくして料理を食べつつ思い出話をしていた老人達も、カチを除いて宿に戻った。
話は尽きなかったが、老人達も疲労の限界だったこともあり、シチューを食べ終わったタイミングで帰ることにしたのだ。
老人達が帰る頃にはすっかり日も暮れ、吹き込む夏の宵の風が心地よい。
そして後片付けを手伝っていたサリコルとシエナも自室に戻り、吉仲、リヨリ、ナーサとマルチェリテ、カチの五人が残った。
リヨリが、静かに鍵をテーブルに置いた。卓上のランプの灯りを反射し、光沢が鈍く輝く。
「……これは?鍵?」
吉仲は机の上の金属棒をまじまじと見つめる。
それが鍵であることは分かっても、なぜ取り出したのかも検討がつかない。
「あら?随分古い物ですね。染み付いた魔力の残滓も感じます。まるで、ダンジョンから取れた物みたいな……」
マルチェリテの反応で、吉仲はあっと気づく。
「まさか、えーと……四階層の?」
カチが頷く。吉仲がおよそ二ヶ月前のことを思い出す。
村のダンジョンは、四階層に繋がる階段を降りた所で、重い鉄の檻に閉ざされていた。
そこで進むのを断念したのだった。
思い出して見れば、たしかにあの檻の鍵というのがしっくり来る。
吉仲が鍵とカチ、そしてリヨリを見比べる。リヨリは口を真一文字に結んだままカチを見ている。
カチはためらいがちにリヨリに目を向けるが、やがて意を決したように口を開いた。
「……そうじゃな、最初から話そう。ヤツキの死因は、流行病ではない」
「え?」
リヨリは目を見開き、ナーサも驚きの表情を浮かべる。吉仲とマルチェリテは顔を見合わせた。
「たしかにぃ……流行病なのにヤッちゃんしか罹ってないのは不思議だとは思ってたけどぉ……」
ヤツキの死は、ナーサがしばらく仕事で都に滞在していた折の出来事だった。突然の死だったのだ。
彼女にとっても親しい友人を亡くした悲しみは大きく、その反動もあって一人娘のリヨリには特に親身にしてきた。
そして、吉仲が現れた後は、転移者だけが罹る病があるのかもしれないと思い、吉仲から目を離さずいた。料理勝負と、その料理が目当てというのももちろんあるが。
三ヶ月ほど一緒にいても、特に不審な兆候は無い。ヤツキですら村に戻ってから十五年も経って、突然亡くなったのだ。
問い質さずにはいたが、モヤモヤとした物は心の片隅に抱えていた。
リヨリは、見る見る真剣な表情になるナーサと、カチを見比べる。
「え?ええ?……それじゃあ……」
カチは、息を深く吸い込む。彼にしても、これを言えば取り返しはつかないことは分かっていた。
「……ヤツキの死因は、流行病なんかではない。魔物の力じゃ」
カチの言葉に、皆が驚く。
「ヤツキは、魔物に殺された」
真剣な瞳のナーサと、戸惑うリヨリにカチは真実を話はじめた。