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異世界グルメ王 牛丼屋バイトが最強味覚を手に入れて、料理バトルの審判に!  作者: トラウマ未沙
ダンジョン:ジャイアントバット
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継承

「だれ?お前ら?」

魔物はもう一度聞いた。

オレンジの体表が少し赤みがかったように見えた。


「……ノームちゃん、あなたたちが、ここの番人ねぇ?」

ナーサが吉仲の前に立つ。敵意は見せず、幼い子供に話しかけるような口ぶりだが、警戒は崩さない。


「そう、番人。勝手に入ってくるヤツ、食う」

「え?食う?」

ノーム達は頷いた。

とぼけた表情は変わらない、しかし言葉には少し脅かすような響きがある。身体の赤みがより増し、吉仲は恐怖を感じた。


しかし、リヨリに向き直る瞬間、元のオレンジに戻る。ノームの体表は微妙な間隔でオレンジと赤を行き来していた。

「……おまえら、ヤツキ違う。でもおまえ、ヤツキに近いオーラ感じる?だれ?」


ノームの内の一体がとてとてと歩いてリヨリの前に立ち、首をかしげる。

「そりゃそうよぉ、この子はヤツキの娘だもの」

ナーサがリヨリを振り返る。糸口が掴めたようだ。


「むすめ」


「う、うん。ヤツキの娘で、リストランテ・フラジュの料理長のリヨリだよ」

リヨリをしげしげと眺めてから、体表がオレンジに戻る。リヨリがダンジョンに入ることは許されたようだと吉仲は感じた。


「ヤツキは?」

「お父さんは……死んじゃった。半年前、病気で……」

話しているノームが振り返り、ナーサの前に立つ。今度はハッキリとした赤色になっていた。吉仲にも殺気が感じられ、体が少し震える。


「魔女。おまえは」

「うーん、リヨちゃんの仲間なんだけどぉ……そうねぇ……」

ナーサは敵意が無いことを示すように両手を上げる。

ノームの警戒はヤツキの死の情報で強まったらしい。両手を上げたままナーサは白い部屋を見渡す、何かを探しているようにも見えた。


「ああ、そうねぇ。そこの魔法陣を書いた魔女ティシャ……」

「ティシャ、なぜそれを?」

「そうね、私は、ティシャの弟子……みたいな物よぉ」


喋りながら片手で鞄を探る。少しの間の後、一枚の絵葉書を取り出した。

「ほら、これぇ……」


絵葉書をノームに近づけると、ノームは真っ赤になった手をかざす。

ノームも魔法道具へ警戒をしているらしい。もっとも吉仲には、普通の田園風景を描いた、ただの絵葉書にしか見えなかった。


「うん……ティシャ……うん……」

ノームは頷くたびに体色がオレンジに戻っていく。ほどなく、最初の色に戻った。


「魔女、おまえの名前は?」

「ナーサよ、これからよろしくねえ」

ナーサは指先をノームの掌に当て、少し揺り動かす。


オレンジ色の掌の上に、紫がかった白い光の筋が現れぼんやりと尾を引いて消えていく。

ナーサのオーラを当てて、人ならざる者にその存在を教える魔女特有の儀式だ。


「ナーサ」

ノームは掌を見つめ繰り返した。ナーサも許されたらしい。

「ねぇ。私、ティシャはダンジョンには入っていないと聞いたんだけど、どうして魔法陣があるのぉ?」


「この部屋、ティシャが作った。地下に入る前のポータル。でもティシャ、最初の準備以外先には進んでない」


「ふぅん。ポータル……おば様も面倒見が良いことねぇ」

話は終わったとばかりにノームはナーサから離れる。


「最後、おまえは?」

吉仲に向き直ったノームは、ナーサの時ほど赤くは無かったが、それでも警戒色が付いている。この身体に食われるのは相当怖いなと、吉仲はおののく。


「えーと、俺は、須磨吉仲で……リヨリの店の、居候?」

リヨリが頷く。ナーサは微妙な表情で微笑んだ。


「おまえ、ヤツキの匂いに一番近い。でもオーラはヤツキと全然ちがう。なにもの?」

首を傾げて、吉仲をしげしげと見つめる。気づけば仲間のノーム達も吉仲を囲んでいた。


「……え?におい?あー、うーん。……同郷人だから?かなぁ……」

ヤツキは吉仲と同じ世界から来た、というのは推測の域を出ないが、吉仲にはそんなことを言われる心当たりはそれしか存在しない。


「えええっ!?ホントなの吉仲!?」


部屋中に大声が響き渡る。ノームより先に反応したのはリヨリだった。

その声が地下の石壁に響き渡り、うわんうわんと反響する。吉仲は鼓膜が破れそうな感覚がした。ナーサは一瞬早く耳を塞いでいる。

「……あ、ああ。多分……」


音のエコーのため身体が揺らいでいるのか、頭が同じように揺らいでいるのか分からない身体を立て直し、吉仲は頷いた。ノームが吉仲をしげしげと見つめる。


「……同郷。めずらしい」

それ以上は何も言わず、ノームの体色が戻る。吉仲も許されたようだ。ほっと胸をなでおろす。


「リヨリ、ここの継承者の資格ある。リヨリの仲間も入っていい」

「ありがとう」

リヨリは、にっこりと微笑んだ。

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