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異世界グルメ王 牛丼屋バイトが最強味覚を手に入れて、料理バトルの審判に!  作者: トラウマ未沙
料理大会準決勝:シーサーペント(後)
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最後の仕上げ

フェルシェイルの作業台の白い球体が、ビジョンズで大写しになる。


「材料全部で球を作ったのか……?」


「王女様の料理みたいですね」


吉仲とマルチェリテがフェルシェイルの方を見て不思議そうにつぶやいた。


形状だけで言えばトーリアミサイヤ王女が二回戦でミミックで作った宮廷の秘料理・凍てつく宝玉にたしかに似ている。


「しかし、全体にまぶされているあの白い粒は小麦粉。まさか凍らせるわけではありますまい」


「フェルシェイルが冷たい料理を作るのも、想像がつかないものねぇ」


作業の手を止めたフェルシェイルは目を瞑り、大きく深呼吸をする。


同時に、自身を取り巻く薄赤色のオーラ、フェニクシア=ヴァイタライザを解除した。

揺らめく陽炎はアリーナの風に消え、赤熱していたフェルシェイルの身体も元に戻る。


周囲からは、光を失ったようにも見えた。

賦活の反動がフェルシェイルを襲う。


フェルシェイルの身体がふらつく。

呼吸とともにこめかみが痛む。

自身の肉体の限界を越えて動かしたせいか,身体も疲労の頂点だ。


だが、絶対に負けたくないという闘志の炎は未だ胸の中で燃え、不思議と頭は冴えている。


呼吸と共にゆっくりと手を握る。まだ動く。あと三十分くらいなら問題ない。


フェルシェイルはもう一度深く息を吐き、吸い込むと共に大きく両腕を振り上げた。

炎の翼が天に舞い、羽の形をした炎が散る。


「さあ!最後の仕上げよ!」


フェルシェイルの叫びに、アリーナが呼応する。


腕を振り下ろし、炎の翼が白い球体を包んだ。


最後まで賦活した状態を保つことも考えたが、火の鳥の生命力で燃え上がり、最大限まで強化された肉体は焼き加減がつかみにくくなる欠点がある。

全身が燃え上がることで火に対する感覚はむしろ鈍化し、繊細な焼き加減ができなくなるのだ。


先ほど使った骨を柔らかくするための秘策のように、加熱し続ける状態を保つだけなら集中すれば問題は起きないが、料理として焼いたり炙るのは難しい。


最後の力を振り絞り、フェルシェイルが白い球体を炎で炙る。


「フェルシェイル選手!最後は十八番の炎の翼での炙り焼きだ!」


司会の叫びにアリーナが一際大きな歓声をあげる。


「一方のテツヤ選手も最後の仕上げに入ったようだ!軟骨は姿を消している!」


フェルシェイルの動きで注目に集まった時テツヤの方も、作業を完了したようだ。


尾の肉を焼く隣で、揚げ物をはじめている。


「……軟骨はどこに消えたんだ?」


ビジョンズが写す鍋の中で、刻まれた背身が揚げられている。軟骨は陰も形も無い。


「む……見当たりませんな。それに、これから尾を切るようです」


揚げ物を揚げつつ、焼かれた尾をまな板に下ろし、五等分に切り皿に盛る。

特に力を込めていない包丁が、固い鱗ごとやすやすと切り裂く。


「たしかに、鱗は柔らかくなったようだな……」


「でも……おいしいのかしら?」


大ぶりの鱗がついたままの焼き魚だ。あまり食欲をかきたてる見た目には見えない。


揚げ物も終え、皿に盛る。そちらは焼き魚と対照的にこんがりと揚げられ美味しそうだった。


「残り時間十分!」


フェルシェイルの球体もすっかり、黄金色に焼き上げられている。


ふとテツヤが、持ち込んだ小箱を開けた。氷の入った袋とともに、小さく細く、透明な物体が現れる。

みずみずしく、細い寒天、あるいはところてんのようにも見える。


「なんだ……?あの透明なの?」


吉仲の言葉にガテイユが首をひねる。


「はて……白魚にも見えますが……シーサーペント勝負で使うものでしょうか?」


テツヤはそのまま使うようだ。皿に盛り付け、調味料をかけて腕を下ろした。


「時間切れです!そこまで!」




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