表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界グルメ王 牛丼屋バイトが最強味覚を手に入れて、料理バトルの審判に!  作者: トラウマ未沙
料理大会準決勝:シーサーペント(後)
267/375

放射

入場してきたフェルシェイルとテツヤを見て、観客がひときわ大きな歓声を上げる 。


真剣な表情のフェルシェイルは気合に満ち溢れ、まさしく真剣勝負に望む表情だ。

一方のテツヤは、いつも通りの考え込むような静かな表情のままだ。戦いはおろか、周囲に人さえいないようにも見える。


吉仲達の視線が、テツヤの手元に集中した。


「なんだあの箱……」

「……特別な食材でしょうか?」


死神テツヤが木箱を抱えて入ってきたのだ。ゾートが運んできたような大きな箱ではない。

小柄なテツヤの両手にすっぽりと収まる小さな箱だ。


テツヤは無造作に調理台の脇に置き、すぐに中央に立つフェルシェイルと対峙する。


テツヤは相変わらず、フェルシェイルの方に目を向けてはいるが、フェルシェイルを見てはいない。


フェルシェイルがテツヤを睨みつけた。

ぼんやりとした瞳の焦点は合わず、 フェルシェイルの遥か奥を見ているようにも見える。


その態度は、フェルシェイルを苛立たせた。


――ただ、あの箱だ。

何かしらの秘密兵器であるならば、テツヤ自身も本気での勝負ということ。

フェルシェイルは気を引き締める。


司会は、二人を見て頷く。弾かれるようにフェルシェイルが威儀を正した。


「……翔凰楼の料理人にして、パイロマンサーのフェルシェイル!父の店の名と、母より受け継いだ火の鳥の精紋に賭けて、料理勝負の結果に異論を挟むことなし!」


死神の目が一層暗くなる。


落ち窪んだ瞳は陰が落ち、土気色の顔と共に一層凄みを増す。まさしく死神の表情だ。


「流れの料理人、テツヤ。……賭ける物など何もないが……勝敗に、異論は挟まない」


フェルシェイルの熱気と、テツヤの冷気がせめぎ合っているようにも感じられ、吉仲の背筋にぞくりと鳥肌が立った。


「それでは準決勝第二試合!開始です!」


包丁を持ち、シーサーペントの前に立つフェルシェイルが目を瞑り、大きく深呼吸をする。


身体の隅々に酸素を送り出すイメージと共に、深く息を吐き、大きく吸い込む。


深呼吸と呼応して、火の鳥の精紋の輝きも明滅した。


「あれは?」


<……精紋から出る魔力が膨れ上がってるわねぇ>


吉仲の問いかけに、ナーサが緊迫した声で答える。


「はい、最初から蘇生魔法でしょうか?」


フェルシェイルから周りの雑音が遠ざかっていく。

料理をするリヨリと同様、集中力が極限まで研ぎ澄まされたゾーンにいた。


ふいごで風を送ることで、炎が大きくなるように精紋の輝きが呼吸ごとに強まる。


深呼吸を終えて目を開ける。観客がざわめいた。


「フェルシェイル……光ってないか?」


外から見ると、フェルシェイルの身体全体が赤く輝いているようにも見える。

身体の輪郭に薄赤色の陽炎がゆらめき、かすかに光を放っているのだ。


「――フェニクシア=ヴァイタライザ」


フェルシェイルの全身から炎が舞い散る。

そこからの動きは、目を見張るほどに素早い。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ