表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
232/375

静寂

イサが体勢を立て直す。吉仲もよろよろと立ち上がった。グリフォンは忙しなくイサと吉仲、両者を見比べている。


自分に恐怖を抱かせ、傷をつけた。その罪は万死に値する。だが、この二匹はただの人間ではないようだ。力任せの攻撃では倒せないだろう。


グリフォンの瞳に冷静さが戻り、冷徹に獲物の死を見詰める知性溢れる瞳に変わる。


イサが歯噛みする。怒りに燃えつつ、それでいて冷静に事を進める知性を取り戻す。グリフォンの最も危険な状態だ。


今までみたいに闇雲に攻めることがなくなった。王のような風格で二人の攻撃を待ち構えている。

鷲の視力で獲物の動きを捉え、獅子の瞬発力で相手より早く反撃すれば、絶対的に人間の勝ち目は薄い。


吉仲は斥力の盾を張ったままグリフォンに近づくことを試みるが、グリフォンは片翼の突風で吉仲の動きを止める。


突風を放った直後に魔法を使えないのは、吉仲にとって幸いだった。

もし連発できれば、とっくの昔に吉仲とリヨリは死んでいただろう。


グリフォンが闇雲に攻めなくなった点もそこにある。この獲物は、力押しするには殻が固い。


そしてイサも動きを止められていた。吉仲のような盾は無い。乱発されてもかわせるだろうが、攻撃の後の隙を狙われたら無防備だ。


膠着状態となる。


「リヨリ……後ろの道からダンジョンクローラー達が近づくの見えるか?もうすぐ来るはずなんだけど……」


吉仲に尋ねられ、リヨリは振り返った。吉仲の盾の中にいる限り、リヨリは安全だ。


「ううん、見えない。あ、でも……」


緊張感で張り詰めた静寂の中、リヨリが耳を澄ます。


「……戦いの声が聞こえる」


グリフォンと相対し全神経を集中している吉仲、グリフォンの息と羽音で物音をかき消されているイサには聞こえなかったが、リヨリにはかすかに聞こえた。


人間の叫び声、魔物の鳴き声、そして確かな戦闘の音。

魔除けの鈴の音でポータルのある広間に押し出された魔物達がいて、ダンジョンクローラーと鉢合わせしたのだ。


「そうか……」


吉仲はダンジョンクローラーの助けは、まだ時間が掛かりそうなことを悟る。おそらく、その前に集中が切れるのは吉仲とイサの方が先だろう。


吉仲は少しでも盾が遅ければ、イサは一発でも攻撃を受ければ、それだけでグリフォンの勝ちだ。残された時間は少ない。


リヨリが振り返り、吉仲に近づく。


「……そうだ、吉仲!グリフォンにもう一回杖の力!」


「でも、重力場で動きを止めるのは……」


今のグリフォンには通用しないだろう。突風で吉仲が飛ばされるのが関の山だ。

下手すれば、発動前に圧空穿(エアピアス)の餌食になるかもしれない。


「逆!ぶっ飛ばすの!ナーサさんの杖でしょ?軽くもできるんだよね!……空中でこれに当てるの!」


リヨリが魔法符を吉仲に押し付ける。吉仲は、杖を握った手で受け取り、ちらりと見る。


青いインクで描かれた、円状に六角形が寄り集まった魔法式。横目の吉仲にも防御力場(シールド)だと分かった。


「これが最後の一枚。イサさんが切る隙を作るの」


リヨリの言葉に、吉仲とイサが頷いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ