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グリフォン急襲

グリフォンが高らかに叫びを上げる。

その音は天井で反響し、フロア中に響き渡った。


今からこの場の主が不遜な侵入者に制裁を降す。そう宣言するかのような鳴き声だった。


事実、グリフォンの鳴き声に呼応し、静まり返っていたダンジョン中の魔物が再び騒ぎはじめたのだ。だが、近づく気配は無い。凶暴な魔物達でもグリフォンの邪魔はできないようだ。


「……やべぇな……グリフォンの怒りに触れちまったらしい」


イサが後ずさる。その後退に合わせ、吉仲とリヨリも後ろに踏み出した。


グリフォンが翼に力を込める。吉仲の手の中でおたまが震えた。


魔法だ。


一瞬で悟った吉仲はイサの前に出て、斥力の盾を発生させる。同時に、グリフォンの翼が振り下ろされた。


「うわっ!」


荒れ狂う暴風が巻き起こる。軽減されたとは言え、完全に風を斥力の盾で防ぐことができなかったらしい。

風圧の中、吉仲は吹き飛ばされないように踏ん張る。


それでも肝心の魔法は防ぐことができた。吉仲の手にその感触がある。

空気を練り固めた無数の槍が、空中に静止する様子も見える。


圧空穿(エアピアス)と同じ原理の攻撃だ。

ただし、威力は段違い。直撃すればドラコキマイラの翼を穿つことすらできるだろう。


そんな物が十本以上まとめて飛んでくるのだ。大半の生物はこの一撃でなす術なく絶命する。


吉仲の身体から汗が噴き出す。

防がれたことに怒りを露わにしたグリフォンは、後脚で跳躍する。


「散れ!」


イサの言葉で三人が咄嗟にばらけ、空中から急襲を掛けるグリフォンが中央に降り立った。


着地の瞬間を狙い、イサが刃を突き立てようとするが、グリフォンを身を翻し刃をすり抜けた。

獅子の、猫科の柔軟性は段違いだ。


死角から吉仲が魔力で暴走させたロープを投げる。ロープが翼に、獅子の身体に巻き付いた。


「よしっ!」


二足トカゲと同じように、締め上げて倒せるはずだ。ロープは唸りを上げる。

だが、ロープは締め上げるよりも早くズタズタに寸断され、はらりとグリフォンの脚元に落ちた。


翼が小刻みに震えている。

風旋刃(ウィンドカッター)と同じ風の刃が、翼を取り巻いたのだ。


グリフォンは身をよじり、そのまま翼を一薙ぎする。風の刃が向きを変え、三人に襲いかかる。


吉仲の斥力の盾がグリフォンを取り囲むには遅かった。自らの身を守るのに精一杯になる。

どちらも実体の無い斥力の盾と風の刃の衝突なのに、重い衝撃を受けた実感があった。


「イサさん!リヨリ!」


吉仲は盾を構えつつ、二人の方を見る。イサは歴戦の剣技で、なんとか風の刃をいなしたようだ。


リヨリに向かった風の刃は、リヨリの目前で青い半透明の、ハニカム構造の壁に当たりかき消えた。


リヨリは手を伸ばし、目を見開いている。呼吸が荒い。

咄嗟に防御力場(シールド)を発生させたのだ。


キマイラの時にニーリからもらった魔法符の残りだ。あの時から肌身離さず持っていた。

キマイラとの戦いが無ければ、対処できず死んでいただろう。


リヨリが吉仲の近くに駆け寄る。斥力の盾で攻撃を防げるなら、吉仲の近くが一番安全だ。


「だ、大丈夫。……それより、こんな怪物……どうやって倒せば良いの?」


吉仲は黙ったままだった。



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