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キマイラケバブ

「キマイラ肉のグリルよ。召し上がれ!」


フェルシェイルの結論は、あらかじめ下味を付けて薄切りにした複数頭のキマイラ肉を棒に刺し、積み重ねてグリルすることだった。


積み重ねた肉を刺した串を持って入場し、制限時間いっぱい、火の鳥の精紋であぶり焼きにする。


火の鳥の炎が棒の周囲を取り巻き、その熱と遠赤外線で極めて短時間でグリルできる。外からは縦に伸びるキャンプファイヤーのようにも見える。


だが、テツヤの丸焼きと異なり、フェルシェイルの精密な炎の操作により火が肉に接触することはない。

丸焼きのように見えて、あくまで離れた状態でのあぶり焼きだ。焦げ付くこともなく中まで火を通せている。


そして最後に削ぎ切りにすることで挽肉と同じ効果を得られるのだ。


「ドネルケバブか……!」


吉仲が思わずつぶやいた。

ふんだんの野菜と共に、焼いた際に出た脂を使ったソースがかけられている。


ドネルケバブと異なり、火の鳥の精紋を用いた全面グリルだ。肉の塊に熱のムラが起きず、旨味を逃さず、硬くなるのを防ぐ効果もある。


また、縦型の焼き串のメリットとして、上の層のキマイラ肉から滲み出た脂が、下の層のキマイラ肉にかかる。複数頭の肉で同じことが同時に起こり、脂の混ぜ合わせが起きるのだ。


さらに、下へ下へと伝って滴り落ち混ぜ合わせた脂を器に溜めておくことで、全てのキマイラの脂の風味を凝縮したソースが作れる。


「この脂のソースがすごいですね!キマイラの肉自体の混ぜ合わせが起こったのと同じくらい美味しいです!」


マルチェリテが叫ぶ。彼女の大好物、ガッツリとした肉料理の旨味だった。

ソースに混ざったハーブにより、試食が続き満腹に近い今でも少しだけ胃を開ける効果も起きている。これは、マルチェリテやリヨリが見せた技術を彼女なりに使ったものだ。


「そ。キマイラのお肉自体は扱いが難しくても、流れる脂を使えば料理しやすくなるってわけ」


「簡単そうに言っているが、この短時間のグリルでこれだけの脂を出せる者はそうそういるまい……」


ガテイユの言葉にシイダが頷く。


火の鳥の精紋による莫大な火力と精緻な温度調節により、通常のグリルでは出来ない火加減を実現させる。フェルシェイルにのみできる妙技だ。


精紋を持つ魔術師すら珍しいのに、親子二代で料理人をしているのだ。フェルシェイルはマルチェリテとは違った形で有名人だった。


「肉の火の通りが完璧で、外側のパリパリ感と中のコッテリ感のバランスが最高だよ。そのうえ、山盛りの野菜のおかげでクドくなりがちな脂もスッキリと味わえる」


満場一致でフェルシェイルが勝利し、一回戦が終了する。

吉仲は安堵した、高いレベルでの接戦が無かったのだ。


「さあ!一回戦勝ち抜きを決めた八人の料理人の皆様に、次の食材をお目に掛けましょう!」


予選の時同様、勝者はアリーナ中央に集められ、観客がひとしきり盛り上がる。

そして、白い布が掛かった台車が入ってくる。


キマイラよりは、かなり小さい。



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