表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/375

夜食の時間

その日の深夜、グリル・アシェヤの扉が開いた。

腕を吊り全身に包帯を巻いた巨漢と、頬と手に湿布を貼り疲労困憊の魔術師を伴って、リヨリがバツが悪そうに入ってくる。


「おかえり、リヨリちゃん。大丈夫だった?」


サリコルがリヨリの姿を認めて微笑みかけた。サリコルは一人でリヨリを待っていたのだ。


「ただいま……へへ、まあね」


サリコルの微笑みに、リヨリが微妙な顔で返す。


崩壊寸前ギリギリのラインではあったが、乙女の尊厳は守られた。


魔力抜きのお陰で痛みと熱は驚くほど急激に治まった。しかし、吐き気と胃腸の動きは治らずそのままトイレに駆け込み、しばらく便器にかじりつく羽目になったのだ。

今はダンジョンに入る前とまったく変わらない、健康そのものになっている。


「そちらは?ダンジョンクローラーの方みたいだけど……」


「こっちがニーリで、こっちがゾート。今日手伝ってくれた冒険者だよ!」


リヨリが二人を招き入れると、二人は挨拶しつつ店に入った。


「遅くまで付き合ってくれたからさ、せめてお礼に料理をご馳走してあげようかと……良いかな?サリコルさん」


サリコルは微笑んだまま、三人分のお茶をいれる。


「シエナはもう寝てるから、なるべく静かにね」


店は休みだが、個人的に招待するのは止められていない。


リヨリが料理をしている間、三人の話題はもっぱらリヨリだった。

サリコルもリヨリのお転婆は知っていたが、ドラコキマイラに向かっていったという話に目を丸くする。


「危ないことしちゃダメって叱らないと……」


「やーでも、そのお陰でこれだけで済んでる所もありますし」


ゾートが頭を掻き腕を見せる、ニーリは頷きつつお茶を飲んだ。同時にリヨリが両手に鍋を持ち、厨房から戻って来る。


「……お待たせ!なんの話?」


「誰かさんの無茶の話だよ。ダンジョンクローラーの面目丸潰れって感じのね」


ニーリがいたずらっぽく微笑む。リヨリは、初めて彼女の笑顔を見た。


「う、えへへ……お手柔らかに」


「それより随分いい匂いだな。もうすっかり腹ペコなんだ。待たされた分、期待しても良いんだよな?」


サリコルが置いた鍋敷の上に鍋を乗せ、リヨリは蓋を開けた。

えも言われぬ香ばしい香りが、焦げ茶色のシチューから漂ってくる。


「へへ、ご期待に添えれば良いけど。……キマイラのシチューだよ。召し上がれ!」

「キマイラ?……この匂いは……」


ゾートとニーリが、一口食べ、驚愕に目を見開く。二人の口元がほころんだ。


リヨリが、小さくガッツポーズをする。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ