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ダンジョン料理

人の手で管理されたダンジョンの浅い層の休憩所には、身体を回復をするための種々の薬草が植えられている。


ポーションと同じく、あらゆる外傷を劇的に治癒できるほどの効力は無いが、痛みを鎮め、出血を止め、外に出るため動けるようになる程度には効く。


また、薬草術の知識は必要になるが、簡単な物であれば、毒消しや麻痺治しのような治療薬も作れる。

駆け出しのダンジョンクローラーは、休憩所で先輩から薬草の使い方を学ぶのだ。


だが、ダンジョン内でここまで本格的な料理を作った者はいない。浅層なら都に帰る方が早いからだ。


「コカトリスを倒した時間が遅くてさ、戻って料理するのは難しそうだったんだ」

「水はダンジョンの給水所。熱源はアタシの火の鳥の精紋で、食器と調理器具、調味料代わりの薬草採取はリヨリね」


二人がコカトリスを倒し、下処理を終えた時点で残り四十分を切っていた。


調理台が使えないことと、持って行く時間や待ち時間でコカトリスの品質が落ちることを見越して、休憩所で料理を作る道を選んだのだ。


「コカトリスが逃げた場所がダンジョンの休憩所で良かったよ。本当にラッキーだったね。倒した後、そのまま料理に入れたんだから」


リヨリには薬を作るほどの知識は無いが、食べられる野草については詳しい。そして、薬草はスパイスとしても作用する。


「それにね、包み焼きや蒸し焼きにすることで薬草の香りと効果が肉に移って、肉の美味しさをより深める力もあるんだ!」


リヨリの補足に、ガテイユが唸る。

薬草を料理に使うと聞くと、薬草をふんだんに使った薬用の料理、薬膳が思い浮かぶ。だが、包んで焼くだけでもここまでの効果があるとは思わなかった。


「薬草の中には熱すると芳しい匂いを放つ物もある。熱された香気は温度が下がるにつれて強まるのよ」


フェルシェイルが指を弾くと、彼女の指先から炎の翼が迸った。


「……それがあの芳香の正体か」

「焚き火をする時に入れると疲労回復の効果もあるわ。ま、薬草そのものの味はそんなでも無いけどね」


ベレリの言葉にフェルシェイルが頷く。

料理の味を決め手の一つは香りだ。鼻をつまんだ状態では、料理の味はわからなくなる。

吉仲が指摘した通り、使う薬草を変え、香りを変えることで味わいにも変化をもたらしたのだ。


マルチェリテが微笑んだ。


「それだけじゃありませんね。ダンジョンの薬草花壇の中でも、代謝を上げる物を選んで使われています。審査が続いてお腹がいっぱいになってきた私達でも、食べやすくする作用がありますね」


料理対決の最大の敵は満腹感でもある。

満腹の時は、何を食べても美味しく感じないのだ。


審査員達は長時間に及ぶ、大量の試食で限界が近づいていた。一口一口は少なくても、数が多いと腹は満たされる。


一時的にでも満腹感を抑えられれば、試食に有利になる。そして、それは、リヨリとの戦いで彼女が使った手でもある。


「マルチェと戦ってて、本当に良かったよ。 花壇の薬草のどれを選ぶかで、料理の方向性がかなり変わっちゃうからね」


リヨリも、にっこりと微笑んだ。


試食をしていた誰もが思った。これで食べるのは終わりだと。

そう思った吉仲に、急に満腹感が押し寄せてきた。


予選審査員が話し合う。五人中、三人を選ばなければいけない。

ラクレフ、トーマ、セガルは緊張している。後から来た二人の料理が突出しているのは明らかだった。


話し合いを終えた審査員長が料理人達に向き直る。


「それでは結果を発表する!」


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