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王都のダンジョン

この世界の都市のほとんどは、古代から続く巨大なダンジョンの上に建てられている。


都には各家庭の灯りや(かまど)、生活を便利にする機器の他、魔女達が使うより高度な魔法道具がある。

さらには下水の浄化、街灯といった都市のインフラとなる様々な設備も魔法道具に頼っている。


それら全ての動力となる魔力は、ダンジョンからの供給を受けている。


数えるくらいの小さな集落であれば、何もない原野に日々湧き上がる程度の微弱な魔力でもさほど問題は起きない。

だが、その使う人数が数千、数万世帯の単位になれば、例え一世帯が使う魔力は微々たる物でも、自然の魔力供給だけで全てを賄うことは不可能だ。


すぐに魔力は枯渇し、魔法道具は機能を止め、生活の質は確実に落ちる。


膨大な人数が狭い土地で生活できるようにするには、人工的に魔力を余すことなく蓄え、供給できる仕組み、すなわちダンジョンが必要となるのだ。

ダンジョンが無い都市でも、その地下には魔力を蓄える鉱石――魔石が眠ることが多い。


栄えている都市はダンジョンや魔石を魔力供給の源、そして日々産まれる魔物を食糧供給の源としているのだ。

そのためダンジョン、あるいは魔石の余剰魔力供給量が都市の限界サイズを決定する。


王都カルレラの地下ダンジョンは世界でも有数の巨大ダンジョンだと言われていて、巨大な都を長年維持できているのだ。


「本当に危険だと感じたら、市場に行くのも勇気ですよ?ね?」


飄々(ひょうひょう)と喋る司会の声に、覚悟が揺らぐ者はいない。

唯一リヨリだけはよく分かっていない顔で、しきりに首を傾げている。


リヨリは知らなかったが、ダンジョンへの入り口の一つは、まさしくここ、王宮広場の隅にあるのだ。たった今選手が入場してきた門の裏手だ。


一方、近隣の市場までは、どんなに急いで走っても五十分は掛かる。往復で一時間四十分は、この勝負において致命的だろう。ゆったりと、司会が手を上げた。


「……では、始めましょう。今から二時間です。武器はダンジョン内のダンジョンクローラーから受け取ってください……はじめ!」


司会が手を下ろすと共に、花火が轟く。


イサを先頭に、料理人達が、ダンジョンへ殺到した。よく分かっていないリヨリも人波に押し流され門の奥へ消えて行く。観客は沸き立った。


「……さて……何人かは市場に向かった方もいるようですが……。観客の皆様は、こちらでダンジョンの模様をお楽しみください!」


司会の声と共にアリーナの門の上、空中に一つの映像が投影された。観客がどよめく。


石造りのダンジョンの入り口に殺到する料理人達、そしてすぐに画面が切り替わる。吉仲には、門の上に付いているカメラからの映像に見えた。


「え?何あれ?」

<ビジョンズ。光を波長に変え転送して、別の場所で像を結ぶ魔法道具ねぇ>

「はい、お祭りや儀式の時によく使われますね」

「つまりカメラとスクリーンか……?便利だな……」


先頭はイサだ。

リヨリの姿も見えるが、人波に飲み込まれないように追い立てられている。


「なあマルチェ。このルールって……イサさんの仕込み……?」

「どうでしょう?特に何も聞かされていませんでしたが……」

<ふふ、たしかにそうねぇ。最後に入ってきて今先頭な辺り、怪しいわねぇ>


イヤーカフス越しのナーサのクスクスという笑いは、少しくすぐったい。

イサとリヨリが画面の下に消えて行った。死神、トーマ達、フェルシェイルも続々と画面の下、ダンジョンの入り口に飲み込まれて行く。


人がいなくなったアリーナに、次から次へと調理台を押したスタッフが入り、据え付けられていった。


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