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ダシの秘密

吉仲は急に話を振られたことで焦り、つい責められるのかと思った。


「え、あいや本当に、あんたの料理もうまかったんだよ?特にあの、海鮮ダシにほのかに香るエビとカニの風味とか、特にうまくてさ」

「別に判定を責める気は……おい、ダシにエビカニ?使っちゃいないぜ?」


老人達はエビの風味を感じたか話し合うが、誰も気づかなかったようだ。


「え?しなかった?俺の勘違い?」

「使ってない具材ならそうだろ?……ん?いや……」

イサは何かに気付いた後、少し考え込み、驚きの視線を吉仲に向ける。


「……ちょっと待て。……そうか、シーサーペントの稚魚か!久しぶりに獲れて、骨と鱗をダシにしたんだった!」

――シーサーペント、成長後は平均して全長が二十メートル、大きな物になると五十メートルを越える巨大な海蛇である。獰猛で貪欲、海中の食物連鎖の頂点に位置する海のモンスターだ。


プランクトンを食す大きく静かなレプトケファルス幼生から、成長後の気質に近い稚魚へ変態する。

稚魚の段階でも普通の魚よりよほど大きいが、動きは鈍く、しばらくは自分より動きの遅い甲殻類や貝類を捕食し、その殻で安全な寝床を作り成長していく。生涯成長し続けるシーサーペントは、自分の捕食者がいなくなるまで海の中に巣を作る。

成長し全長が大きくなるに従い、より大きな生物を捕食するようになり、隠れずに海底で眠るようになるのだ。


「言っちまえばシーサーペントの稚魚の寝床はエビやカニ殻の天然のダシ袋だ。そこで長い時間を過ごす稚魚の鱗にもその味が染み付く……」

吉仲はピンと来ていない。シーサーペントが何かもよく分からなかった。なんとなく、細長い生き物なんだろうなとは思った。


「だからって、他の魚と一緒に煮出した出汁から、その風味だけが分かるもんなのか!?」

イサは吉仲をまじまじと見る。リヨリも老人達も吉仲を見つめている。


「え?えーと、他の魚の味も分かったんだよ?全部で七種類かな?でも、なんて名前の魚か分かんなくてさ。エビとカニは分かったんだけど」


吉仲は、恥ずかしくなりつい次々と言葉を継ぐ。他の人もそれくらい分かるもんじゃないのか?とは言えなかった。


それと同時に、今までの自分にそんな能力は無かったことにも気づく。どれを食ってもうまいのだ、今までだったら塩と砂糖くらい違わなければ気づかなかったろう。居酒屋やラーメン屋で出汁の味がこれだと気付いたことすら無い。


だが、知らないうちに、それができていた。

イサが、吉仲を眺めて、口を開く。



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