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休憩

「いーい?リヨちゃん、二足トカゲの気配を感じたら、すぐに引き返して逃げるのよ」

「……は~い」


前回は三階層に降りた途端に威嚇された。

少なくとも三階層に降りる階段から、四階層への階段が隠されていた、ツタが生えていた壁までが二足トカゲの縄張りだったと言える。


ナーサを先頭に、慎重に三階層に降り立った一行は耳を澄ます。トカゲの鳴き声は聞こえなかった。


「いないのか……?」

「そうかもしれないけどぉ、縄張りが違うだけかもぉ……油断はしないでねぇ……」


ささやき声で確認しあい、まずは前回の最奥、ツタが張っていた四階層への階段を目指す。

二足トカゲを追って歩いていた時は長く感じたが、今回はあっさりと着いた。一度往復していることと、気配が無かったためだろう。


行き止まりの空間に、階段があった。

換気魔法陣を潰したためだろう、少し空気が淀んでいる感じがする。

松明の炎が揺らいだ。


階段横の水場からはツタが伸びていた。

長さにして十センチ程度、まだ攻撃の危険性は薄い。


「なるほど、お父さんが頻繁に持ってきたのはこういうことか……」


水場の奥深くに根を張っているのだろう。

その根からツタが延びるのだ。時間が経過することでツタが張り、階段を隠して壁を形成する。


あの後カチから聞いた話によると、昔、カチ達が進んだ時には二足トカゲはいなかった。

しかし、カチ達もツタの先は壁だと思いそこで止まっていたとのことだ。その時は地下三階が最終層だと思っていたらしい。


だが、ヤツキはツタを食材にしようと刈り取った時、下へ続く階段を見つけたのだ。


「つまりぃ、定期的に刈らないと、こないだみたいたことになるってことねぇ」

「まあ、ツタだけでトカゲがいないんなら、問題は無いと思うけどね」


リヨリは山刀を抜き、ツタを刈り取る。

持って帰って食材にするには短すぎるから、その場で飲むことにした。


リヨリがツタの切り口を抑えて下を向け、口の上で離す。

新鮮な水がツタの切り口から滴り落ち、リヨリの喉を潤した。リヨリはとても美味しそうな表情を浮かべた。


食人ツタは水を豊富に含むため、サバイバル化では貴重な水分の獲得手段にもなる。

もっとも逆に自分が食人ツタの養分にならなければ、だが。


「大丈夫なのか?水場の水を飲んでも同じことなんじゃ……」


ナーサが水場の水を掬うが、すぐに戻し手を拭いた。


「ここの水場は元々飲料用みたいだけどぉ、こんなに古い浄化魔法じゃ取れるのは不純物くらいねぇ。煮沸か魔力抜きをしないと細菌感染症の心配が……ああ、でも吉ちゃんは飲めるわよぉ」


魔力を持たない吉仲は、ダンジョン由来の細菌が身体に入っても増殖できず、感染症には掛からない。だが、耐性があっても細菌まみれと言われた水を飲む気はしなかった。


植物から取れる水は細胞が天然のフィルターとなるため、細菌の心配はグッと下がる。


「ツタの方を飲むよ…」


リヨリからツタを受け取り、同じように口の上で水を出す。リヨリのようにうまく行かず、服の一部にも水が掛かる。


「……ん!冷たくてうまいな!」


しかし、そんなことは気にならなかった。ヒヤリとした水が喉を潤し、さっぱりとした爽快な気分になる。

想像していた草の青臭さなども無く、どこか甘みのある、綺麗で美味しい水だった。


ツタを渡してほしいと手を差し出して来たナーサも飲み、ツタは壁際に捨てる。


ダンジョン内で死んで放置された生物はダンジョンに飲み込まれ、魔力に還元されるのだ。

吉仲は前回の戦闘でリヨリが切ったツタの一部や、トカゲの血が消えていたのに気付いた。


「じゃ、行こうか」


水を飲み緊張がほぐれ、リフレッシュできた一行は先へ進むことにした。

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