ふかいよる
お酒を飲みたい。
でも未成年だから、買ったら怒られちゃう。
もう、みんな先輩に飲まされたとか、打ち上げでいっぱい飲んだとか。
羨ましい。もはや恨めしい。
だって私の知り合い、みーんな真面目なんだもん。飲ましてくれないんだもん。
子供は大人が当たり前にやってのけることが、輝いて見えるの。
ひとつひとつに憧れて、現実になって、色褪せていく。
いいの、もうモノクロになったっていいから、私は大人になりたい。
もう充分、つまらない世界まで歩いてきた。
午前2時、池から流れてくる冷たい風。
野良猫が足元を通っていく。人の気配に慣れているのか、私の気配が死んだのか。
蚊の羽音が耳元を掠める。こいつはきっと気配なんてどうでもいいんだろう。
泣きそうになる。
人がいなくなった世界を、見てしまっている。
遠くでバイクが駆けていく。みんな楽しそうに笑っている。
こんなにつまんなかったかな。
大人って、もっとつまんないのかな。
もう少し歩いて行ったら、本当に白と黒しか見えなくなるのかな。
柵のない水たまりの方へ歩いて行ったら、誰かが私を引き上げてくれるかな。
うるさいな。
みーんなみんな、きらきらした目、ばっかり。
うざったいな。
リュックも傘も落として、私も一緒に入ってしまおうか。
ねえ、そこには色がいっぱいあるの?
私の目で見える色が、そこにはあふれているの?
嘘ならいいよ。それならいらないよ。
…本当?
信じて、いいかな。
だめだよ、私はどうせ優柔不断なの。きっと他人のことしか信じられない。
夢の中で昇華した女の子とはわけが違うの。
こんなにも気楽に生きれなくて、醜くて。
こんな私を、誘ってくれるの?
甘いね。
甘ったるいよ。このあたりのお菓子屋さんのマカロンより、ずうっと甘いのに。
さよなら。