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魔法道具で得たものは。  作者: 透迷(とうめい)/東容 あがる
第三章 中都市カーラル編
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閑話 小さな影

 冒険者の三人組が、クロノワトルの地下遺跡へ入っていった後。

 その入口となる洞窟の前に座る聖騎士の男は、あくびを漏らしていた。

 鎧の内側に隠した賄賂を何に使おうかと考えていたところで、前方から小さな影が向かってきているのを確認する。


 ……なんだあれ、子どもじゃないか。


 背の低い体躯を、ぼろぼろの布を頭からかぶって覆っている。

 ぼさぼさに伸びた髪の隙間から見えるその顔は、明らかに少年のものだった。


「坊や、どうしたんだい? お母さんとはぐれたのかな」


 腰をかがめて少年の顔を覗き込む。


 そこで若い聖騎士は、初めて気が付いた。


 首元に禍々しくうねる首輪と、自分に向けられた二対の瞳に。


「その目は……!」

「邪魔だ」


 真紅に輝く瞳を確認した途端、鎧を着こんでいるはずの自分が、宙に浮いた。

 ふわりと内臓が持ち上がり、吐き気を感じた次の瞬間には鎧ごと壁に叩きつけられた。


 少年は武器も何も持っていない、ただこちらに手をかざしただけだった。


 失いつつある意識の中で、目の前の光景が暗くなっていく。

 異変に気付いた他の聖騎士が飛び出しては、魔人の少年に返り討ちにあっていた。


 ある者は自分と同じように虚空へと不自然に浮かび上がり。

 鎧を着ていなかった団員に至っては、突然垂直に圧し潰されて陥没した地面へと消えた。


 水の太陽と同じ、重力魔法。


「魔人だぞ!」

「街に戻れ! ジャッジを――魔人狩りを呼んで来い!!」


 もうその怒号は聞こえない。

 眠気にも似た暗闇が視界を覆い、若い聖騎士の意識は途絶えた。




「……」


 名も無き魔人の少年は、洞窟の前に立つ。

 彼は真っ赤な瞳を携えて、禍々しい首輪をわずかに揺らしながら暗闇へと足を踏み入れた。

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