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第一章 なろうから二次創作が消える日



1章 なろうから二次創作が消える日



 さて、まず、おさらいです。


 「なろう批判批判」において示された歴史は、「なろう」を主体としたものでした。

 では、なろうから二次創作が消えるその前に、いったいどんな事が起きていたのか?

 某所の「規約違反率100%」などを筆頭に、記憶に新しい方もいるでしょう。



 まず、当時のにじファン(なろう)は控えめに言っても「日本最大規模の二次創作小説投稿サイト」でした。

 もちろん、それ以前の業界最大手だったArcadiaもまだまだ存在感があり、一気に拡大したにじファンに対して、「にじファンは駄作のゴミ箱・システムが作者を甘えさせてる、あんなとこ使う惰弱な作者はいらん・移行した人気作家は裏切り者」など、多数の敵対意見があがりました。



 ……いや、当時は本当にAcadiaこそが正義! 駄作者は潰して業界を浄化しなきゃ(使命感)みたいな思想がありふれていたんですよ。

 穏健な方でも、「作者は多少サンドバックにされてもそれが読者の素直な声なら受け止めるのが作品への責任・ひどいものを読んだらひどいと言うのは読者の権利」というのは認められていました。まんま、Arcadiaの運営の方の意見ですね。

 もちろんそれだけでなく「不特定多数の人に作品を見せるからには罵声の一つくらい覚悟しとけ」というのが当時のウェブ創作の常識だった、というのもありました。


 また、にじファンが一部の方から敵視をされがちだったのは、原作からの盗用を繰り返した作品がランキング1位を取ってそのまま君臨し続けた、などの背景があります。私もあの作品好きだったんですが、後で原作からの盗用が多いと聞いて驚きましたね。

 勢いに乗ったサイトの初期にはよくある事ですが、テンプレ以前にモラルの欠如した作品が多かった、というのはよく言われている事です。



 また、にじファンで流行った作品・もてはやされた作品が、Arcadiaやその他の投稿サイトではとっくに「時代遅れ」とされた「古典的チートハーレム」だった、というのも批判の対象でした。

 他のサイトはにじファンが流行りだす数年前から読者がとっくに飽きていたのです。


 主人公がひたすらチートで最強、読んでいて気持ちいい展開が続く、これらが特徴の作品は、「今更そんなもん人気になるなんておかしいぜ」と言われていた訳です。



 実際には新しい作者・読者が入り込んで、原点回帰した、というのが真相だと思われますが、それはそれ。

 「今いる場所が世界で一番素晴らしい!」と思いたがる人間の悪い癖という奴。


 ちょっと話がそれました。





 つまり、にじファンは日本最大規模(pixivと2ch系列は除く)の二次創作小説(以下SS)投稿サイトだったのです。






ある日、それが「なくなる」という話が出ました。






 あの時の驚きは、当時Arcadia民だった私もよく覚えています。

 どんなにArcadiaのユーザーが蔑視しようと業界最大手、まぎれもなくトップのサイトが、「やーめたっ」と二次創作を禁止にしたのです。



 いわく「劣等生などの作品が書籍化していってなろうが有名になって、ユーザーを呼び込んでいこうって中で、ヒナプロ(なろうの運営会社)にとってSSが法的に邪魔になったから」



 などと言われていました。事実かどうかは分かりませんが、現実として、「二次創作は禁止」となったわけです。

 実際には許諾された作品の二次創作は可能だったわけですが、まあ、そこは置いておきますね。



 さて、しかし、これは何もその日からすぐにSSが無くなる、という話ではなく、段階的なものでした。

 完全にSSが禁止となるまで数か月猶予があり、にじファンで書いていた作者達は移住先の選択を迫られました。

 これはつまり、日本で一位のシェアを持っていた投稿サイトから、SSを書いていた全ての作者・全ての読者が、少ない人数で牧歌的に暮らしていた他のサイトへなだれ込む、という事を意味していました。






俗にいう「にじファン難民騒動」です。






 さっきも書いた通り、にじファンで流行っていた作品は他のサイトから見ると「古典的なチートハーレムもの」であり、「盗作でも面白ければOKな連中」というイメージがありました。


 そんな、「古めかしいテンプレ作品を愛好する、しかも盗作歓迎のユーザー」が移民してくる。

 しかも「サイトの利用者全部を入れ替えられる程の人数」です。

 それを受け入れる。


 もちろん、受け入れ先のサイトの既存利用者は否定的でしたし、多すぎるユーザーを受け入れる事にはサーバーの関係から運営者も抵抗を示した訳です。



 それでもエックスデーは迫り、にじファンから撤退し、別のサイトへ移動する作者が次々に現れました。


 なだれ込む移民に対処しきれずサーバーが打撃を受けた上、余りにも新規が多すぎて規約違反率100%伝説を残したサイトもあります。



 とりわけ強烈な反応をしたのは、まだまだ存在感があったArcadiaでした。

 にじファンに押されがちだったとはいえ、いくら管理人が姿を見せなくなったとはいえ、そこは業界トップ2。当然、移民が集中する事は明らかです。

 これに対して、元々にじファンを嫌っていたArcadiaユーザーの中には「徹底抗戦」を唱える人も現れました。


 「駄作量産工場だ」「叩いて潰せ」「やる」という(実際にはちょっと違いますが)威圧的文言で威嚇するユーザーもちらほら見られ、

 Arcadiaでウケる作品に仕上げてきた凄腕の何人かは生き残りましたが、ほとんどの作者は凄まじい罵詈雑言を受けて去る結果となりました。

 実質的な業界のトップでも、この結果です。



 他のサイトでも、移住は上手くいきませんでいた。理由は簡単。規模が小さかったのです。

 あのエッセイを読んだ方ならもうご存知の通り、ウェブ小説の作者は読者からの好反応をモチベーションにして作品を書く人が多いです。

 当然、読者は全部のサイトに目を通しているわけではないので、多数のサイトに作者が散ってしまえば、当然、読者からの反応は減ります。


 また、当時は同じ作品を別所に投稿する「マルチポスト」はまだまだ嫌われており、今のように「~でも連載」というのは「そんなに反応が欲しいのか」良い顔をされませんでした。

 一つのサイトに投稿すると決めたからには、選んだサイトに作品を埋める覚悟で連載しなければならなかったのです。


 にじファンより規模が小さく、読者の数も少ない。

 反応も少なく、システムもにじファンに比べると古めかしい。

 あまりにもにじファンとは違いすぎるその姿。


 作者が去っていくのは、自然な流れでした。



 比較的多くのユーザーを受け止められたArcadiaは「反にじファン」の姿勢を取っており、他のサイトは規模が小さい。

 つまり、にじファンの移民先になれるサイトなど、既存の投稿サイトの中には存在しなかった、という事です。



 SS界隈からなろうが去り、誰もが次なる「にじファン」の在りかを探していた。そんな激動の時代





「そうだ、にじファンの後継サイトを作ろう」と、ある方が立ち上がります。



その方こそ、「ハーメルンを作る人」。

業界ナンバー2の投稿サイトを作り上げた、脅威の個人サイト開発者です。

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