働く代わりにハーレムよこせ
俺は死んだ。
死んだはずだった。
死因はなんだっけ。えーと、オ○ニーのやりすぎで死んじゃうっていうアレ。思い出したくもないけど。
けれど、それは《神様》って奴の手違いだったらしい。
まあ、よくある異世界転生ってやつだ。
このまま、チートスキルかなにかを授けられて、ウハウハの異世界ライフが待っている――って展開だと思っていた。
けど、ロリっ子神様はそれを真っ向から否定した。
「いや、転生はしないよ」
――え、違うの?
「転生はしない。君は死んだままだ」
――おいおい、勘弁してくださいよ。
「君の場合はオ○ニー死だからね? 交通事故ならともかく、これは自業自得」
――でもさっき《手違い》って言ったじゃないすか。
「君が予想外に変態だったってだけ。本当は死ぬ予定じゃなかったんだよ。でも、君があまりに変態で……」
――わかったんで、人をあんまり変態変態言うのやめてくださいよ。
「コホン、失礼。だから君には、戦乙女になってもらおうと思う。これならいろんな能力が使えるし、望めばハーレムもできるよ? どう、変態くん」
戦乙女とはなにか。
なにをすればいいのか。
こんなとき、それを考えなかったのが間違いだったと思う。
ハーレム。
この単語を聞いただけで、
「やります!」
と答えた俺の単純さには、後々、自分自身が後悔することになる。
★
「女神様よ! どうか我らを救いたまえ!」
――どこかで俺を呼ぶ声が聞こえる。
「ああ女神様! 悪鬼に苦しむ我らを救えるのは、もはやあなた様しかおりませぬ!」
――呼ばれた。
ボンッ。
滑稽な爆発音と同時に、俺の意識がはっきりと覚醒した。
うっすらと目を開ける。
俺にひざまずいている数十人の大人たちが見えた。
しかも俺は宙に浮いているらしい。大人たちがだいぶ低い位置に見える。
――どこだここは……?
点在する木々。
木製のボロい民家たち。
一見して、心地良かった生前の《日本》ではないことはわかる。
言うなれば、RPGゲーム然とした、中世風の村というべきか……
大人たちの服装もどこかみずぼらしい。
薄着の布をまとっているだけで、おしゃれさはほとんどない。
逆に言えば、女性はかなり際どいところまで露出してしまっている。
グヘへ。ピンク色のアレが見えそうだ。
「め、女神様だ! やったぞ! 我らの祈りが通じたのだ!」
「ま、待て、女神っていうけど、このヒト男じゃ……」
「馬鹿たれ! 神に向かって無礼なことを言うな!」
ここにきて、俺は自分の置かれた状況を理解し始めていた。
あの《神様》は言っていた。
俺を戦乙女にさせると。
戦乙女――生前、北欧神話で聞いたことがある。
昔、《ラグナロク》という戦争が起ころうとしていた。
神々の戦争ってやつだ。
主神オーディンは、その戦争に備え、人間界から有力な戦士を募集しようとした。
要するにスカウトだ。人間界で優秀な戦歴を納めた者は、ラグナロクに採用しますよーっていうこと。
それをリクルートするのが、つまり戦乙女ってわけ。
俺はラグナロクに備え、強い人間を集めてこなければならないのだ。
「って、なんだよこれ! めんどくせえじゃねえか!」
そもそも、戦争とかなんとか絶対ごめんである。
関わりたくないね。
と思っていたら、脳内に声が響いてきた。あのロリっ子神様の声だ。
――もう契約しちゃったから取り消せないよ。さあ、どんどん働きなさい(笑い声)
くそったれめ……!
こうなったらやけだ。労働の対価はきっちり頂くぜ。