1日目 宇宙人と猫
とある大学での出来事…30台の教授から50台の叔母を紹介してくれと土下座までされて、心底教授を人としてダメだと思っていた矢先、目の前に昨日拾ってきた宇宙人が現れた。
「お腹すいた…」
心臓が痛い…びっくりしすぎてものすごくドキドキしてる…
宇宙人は私の服を鷲掴みにしながらグイグイ引っ張りながら、子犬のような目でお腹空いたアピールしてくる。やばい…これ私弱いやつだ…
「君の妹…か?へ、へー…可愛いけど…なんで大学に…?」
ごもっともな質問が飛んでくる…妹を大学に連れてくるヤツなんて居ないだろう、こんなド平日の何もない時に…ここで妹と言ってしまうと後々メンドイ事になると思ったので…
「し、親戚の子なんですよ~…」
時が止まったように感じた…
妹でも親戚の子でも大学に居る理由はなんだ?!と自分の中で言い訳を考えるも…
なかなか出てこない…
どうしよう…親戚の子で確定として…寂しいから付いてきちゃったって事にしとくか?!いや、無理あるだろ…
「親戚の子…ってことは加奈さんと何か関係あるのか?」
手と頭を全力で振って全否定する。今私が住んでるアパートの大家さんとこの宇宙人が関係あるなんて事になったら、あの子供好き大家の耳に入った時にどんな行動に出るか分かり切っていた。きっと全力で大歓迎しながら、あの人ならこれを機に子供を引き取る施設を作りかねない…
「な、なんか付いてきちゃって…すみません…遠い親戚の子で…えっと…」
そ、そうだ…名前…この宇宙人の名前は…?!
ど、どうしよう…口がごもる、名前…コイツの名前…この宇宙人の名前…
「か、楓ちゃんです…」
咄嗟に思いついたのが高校時代レスリングの後輩の名前だった。美咲と並んで可愛くて一緒に海外遠征に行った後輩…
宇宙人は自分に名前を付けられたと、私の服をグイグイ引っ張りながら…
「紗弥…お腹空いた…」
うおおおおおおおおおおお…!!
思わず声が出そうになった、なんでこの宇宙人私の名前知ってんだ…!
もしかして私の部屋漁ったのか?!
「お、おなか空いたんだ…じゃ、じゃあちょっと早いけど学食いこうか…」
と、親戚の子のワガママを聞く良いお姉さんというキャラでその場を逃げようとするが、
「ぁっ…あの…加奈さんの件は…」
ガッと肩を掴まれ、止められる…私じゃ無かったらセクハラ行為になりそうなくらい強い力で肩を握られ…
「頼むよ…!!僕は本気なんだ…!」
やばい、本気でムカついてきた…この教授…猫にでも転生すればいいのに…加奈さん猫好きだし…
「猫でいいなら…」
と、教授に向かって人差し指を向ける宇宙人…すると次の瞬間教授はテレビのノイズのように歪んで…だんだんその姿は猫の…なんだっけ、脚の短い…マンチカン…?
になった。
…………?
ぁ、混乱してる…キョロキョロとマンチカンは辺りを見渡して、おそらくいきなり視点が変わったことで自分の状態が分からなくなっているんだろう…
っていうか、いきなり猫にするなんてこの宇宙人…
「だって猫になればいいって…」
いや、思ったけど…ホントにやるなんて…っていうかそんなチート持ってるのか、この未確認生物は…
「と、とりあえず…」
猫を見下ろすと目を合わせてくる…とてもさっきの教授とは思えないくらい可愛い…ちょっとウルウル涙目っぽくなってるマンチカン…モフモフの毛並みに短い脚で、私に待ってくれと訴えるようにピョコピョコ振っている…
「うぅ…これは猫…ただの猫…可愛いコネコ…」
言い聞かせながら胸に抱っこして…コイツは猫…断じてあの教授じゃない…
猫…猫…加奈さんに見せたら飼いたがるだろうな…あのアパート…ペット禁止なのに大家が積極的にルールを破ってくることは十分に考えられる…
加奈さんは50台だけど自分のしたいと思ったことは何を犠牲にしてでも叶えるような人だった。本人曰く人生経験しとかないと勿体ない…だそうだ。だから離婚4度もする羽目になったとは言えないが…
「持ち帰るの?猫…」
宇宙人が私も私もーと手を広げて猫を抱っこしたがっている…
ほい、と宇宙人に猫をパスすると、見た目幼女が可愛い猫を抱っこしてモフモフほおずりしてる微笑ましい姿にしか見えないが…
実際は未確認生物が30台のおっさんに頬ずりしてるのだ…そう思うと全然可愛くおもえない…
「えっと…なんだっけ…ぁ、学食か…流石に猫を食堂に持っていくのもなぁ…」
そういうと、宇宙人は自分のワンピースのスカートから猫をお腹に隠して…
「いや…いやいやいや…そんな可愛い事しなくていいから…猫はこの辺にでも置いておけば大丈夫でしょ…元は教授だし…日本語も通じそうだし?」
最後は疑問形になってしまったが…宇宙人のお腹から猫を奪うと
「教授…加奈さんの事紹介しますんで…大人しくここで待っててください…」
そういうと猫はコクコクと頷き始める…猫とここまでハッキリ意志のそっつうが出来るとは思ってなかった。
そのまま教授を屋上で遊ばせておいて、宇宙人とともに食堂へ…まだ少し早いけどこの大学は基本いつでも利用できる。おばちゃんに食券を出せば食べさせてくれる。
「ほら、うちゅう…じゃない…楓ちゃん…?何食うの…」
とても親戚の子に話しかけてる風ではないけど…
「モシャガヒルモアのから揚げ…」
Bパターンでお願いします
「じゃあ鶏?のから揚げ…ていしょく?で…」
よくできました、と券を発券しておばちゃんの元へ…私は食欲がない…
どうせまたあとで美咲に引っ張られて食堂に来るハメになるんだし…
おばちゃんからから揚げ定食を受け取ると窓辺の席に…宇宙人と共に席をともにして向かい合う…から揚げ定食を持っていた注射器で刺して食べようとって…
「ちょ…ちょちょちょちょっ、何それどこから持ってきたの?!」
注射器にから揚げを突き刺して頬張っている宇宙人…なんか凄い図だ…
「さっき…猫の人から…」
いや、猫の人っていうか元々人だし…それだと猫人間みたいな…猫氏てきなものを想像してしまう…
「いや、あの…楓サン…?それはフォークとか…お箸でたべるのですよ…」
なぜか変な言葉使いになりながらフォークを手渡す。
そのままフォークをわしづかみにしてから揚げを食べ始める宇宙人…
宇宙人もから揚げたべるのか…と思っていると、あっという間に感触してしまった。結構な量があったから残すと思ったけど…そうだ、こいつは見た目の幼女じゃない…未確認生物で幼女の格好してるけど実はグロい生き物かもしれない…と勝手に想像してしまう…
「そんな見た目じゃないけど…というか私もあんまり覚えてないし…」
またしても心を読む宇宙人…覚えてない…ということはアレか、宇宙船の事故で記憶喪失ってことか…
「いやいや、単純に時間起ちすぎて覚えてないっていうか…私がこの宙域に来たのは
55億3000万年前だから…」
貴方は弥勒菩薩ですか?と思ってしまったが、微妙に数が違うのに気が付いて頭を振る…そんな前からコイツはこの星にいるのか…
「ちなみに恐竜も食べた事あるけど結構美味しいよ」
そんな情報はイラン
宇宙人の腹ごしらえを終えて食堂をあとする…もうなんか疲れた…美咲には悪いけどこのまま今日は帰ろう…屋上の猫も拾っていかないと…そしてまた屋上に向かい…
「おーい、猫ー…」
名前決めてあげないと…猫ーなんて読んでてそれで定着してしまったら…っていうか教授だから別にいいか…と思っていると、マンチカンが屋上のベンチの上で日向ボッコしてるのが見えた。この猫…ちゃんと猫してる…
猫を回収してそのまま大学を後にする。宇宙人の頭の上に猫が器用に寝そべっている…そしてその宇宙人と手を繋いでいる私…なんかシュールだ…
バスに乗るときも猫はまるでヌイグルミのように微動だにせず…電車の中でもただのヌイグルミとして振る舞い続けた…さすがは教授…それなりに考えているのだろうかと思っている矢先、
猫が宇宙人の髪の毛にからめとられているのが分かった…ホントは暴れたいのかもしれないけど宇宙人の触手髪の毛に絡まっている猫は動くことができない…っ
器用に乗っているとは思ってたけど…乗ってるんじゃなくて拘束されてたのか…と宇宙人の頭の上にいる猫に同情しながら…そのまま自分の家…猫にとっては新しい生活のスタートだった、なにせあの猫好き大家に買われるのだ…それこそ同情してしまうかも…
コンコン…「加奈さーん…」
大家の部屋のドアをノックする…ハーイと声のあとにドアが開き、身長140cmで今だに小学生と間違えられる大家が顔をだしてきた…
マンチカン可愛いですよね




