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蒼炎の装者  作者: シママシタ
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大切な存在

長らくお待たせしました。三ヶ月振りの更新です!


人気がなく、本堂は年季が経って所々がいたんでいるそんなお寺、権堂寺に息を荒げた始が現れた。


「早かったな、始。」


すると横から始の親友、稲城剛が腕を組みながら始の元に歩いてきた。


「星奈は!」


「落ち着け。あそこで座ってる。」


始は剛を見るや否、星奈の状況について問い詰めた。いつもとは違い、冷静ではない始を剛は落ち着かせようと、自分のペースを保ちながら、星奈の元へと案内する。


「始君……」


2人は星奈の元に行くと、そこには体育座りをして、酷く怯えたような表情を浮かべた星奈がいた。

すると、始はすぐさま星奈の前に移動し、線を合わせるため片膝をつき、しゃがむ。


「……怪我はない?」


始に星奈に優しく問いかけ、申し訳ない気持ちでいっぱいだった星奈は目に涙を浮かべながら頷く。

とりあえず、星奈を安全を確認した始は突然、星奈を抱き寄せ、耳元で囁いた。


「良かった……。星奈にもしものことがあったら僕は……!」


本当に心配だった始は星奈を力強く抱きしめる。一方の星奈はあまりの突然の行動に理解が追いつかず、さらに恥ずかしさから、オーバーヒート寸前だった。


「おい、とりあえず話をしたいんだが。」


剛は居心地の悪さと早く自分の目的を達成がさせたいがため、わざと咳をして2人の世界を壊した。

すると、始はそれに気付き、星奈を離した。そして、星奈は顔を真っ赤にして黙ってしまう。


「始、こいつに陰陽師について話したんだな。」


「あぁ、妖に襲われたから知る権利があると思って。」


先程星奈からある程度の話を聞いたが、やはり始のその行動は始らしくないと違和感を感じてしまい、剛は何とも言えない調子になってしまう。


「……らしくねぇな。まぁいい。それで俺が一番気になることがあるんだが。お前、装像式を使ったんだってな。」


「あぁ……使ったさ。」


「本当だったのか。……意外だな。」


「えっ?何で意外なの?」


話を聞く限りでは使えば純粋に強くなる装像式を始が使うのが意外だと聞いて星奈は疑問を抱く。すると、剛は説明し始める。


「確かに装像式は普通の陰陽師にとっては純粋に戦闘能力を上げる伝家の宝刀だ。だがなぁ、あいつにとってはデメリットになっちまうところもある。」


「始君だけ?」


「始は全ての式神が使えるの知ってるよな。装像式を使っちまうと、その装像式に属性にしか使えなくなっちまう。まぁ、一つの属性しか極めない普通の陰陽師ならいいが、全ての属性を使える始にとっては取れる戦略を自ら狭めることになる。」


普通の陰陽師なら装像式を使えば強化されるが普通では陰陽師にとっては必ずしも同じとは限らない。特異な存在であるが故の問題。始はそれに該当していたのだ。


「それにあいつは……いいや、これはよそう。とにかく、始が装像式を使うことは本当に珍しい。まぁ、使うとしても、切り札としてだな。」


「そ、そうなんだ。」


始は装像式をトドメや普通の式神では対処できない時に切り札とし使う。しかし、星奈の時は何も惜しむこともなく、ただ星奈を守るためだけに使った。いくら相手が鬼、さらに守るべき者が居たとしても、始ならわざわざ装像式を使わなくても鬼を倒せていただろう。だから、剛は大きな違和感をずっと覚えていた。わざわざトラウマを抉り出してまで使うのは合理的な始らしくないとずっと考えていた。

しかし、始が来た頃から剛はうっすらとだが気づき始めていた。真っ先に星奈を心配し、大事にしていた。始にとって星奈は特別なのは間違いなかった。大切な存在を守るためなら過去のことなどもろともせず戦う。それなら、始が装像式を使ってもおかしくはない。

始にとって特別な存在である星奈を剛は一瞥する。その星奈はまた何か言われるのかとビクビクと震えていた。


「おい、お前。」


「は、はい!」


「さっき言ったことを始に言ってやれ。」


「でも……」


「ウジウジしてんじゃねぇ!」


ついでに剛は星奈に先ほど言っていたことを直接始に言えと強要する。しかし、星奈は始に嫌われるのが嫌なのか、ウジウジと躊躇っていた。

剛に対しては気兼ねなく言えたくせにいざとなるとウジウジするその態度が気に食わず、思わず剛は声を荒げる。そして、星奈は怯えながら、始に再びをお願いをする。


「は、始君……」


半ば強引にやられたため、気持ちの整理がつかず、戸惑ってしまう。しかし、ここでしっかりしなくては前に進めないと自らに喝を入れる。そして拳をギュッと握りしめる、勇気を出す。


「や、やっぱり私……始君の力になりたい!例え、危険な目に遭っても……私は!」


星奈は再び始の手伝いをしたいと言った。また、断られるかもしれない。それなら認められるまで続けるまで。星奈は並々ならぬ覚悟だった。


「また、ダメだって言われたら?」


半ば諦めながらもあえて、始は星奈に問いかける。しかし、星奈は反応はせず、その真っ直ぐな瞳で始を見つめた。


「はぁ、わかったよ。いいよ。」


「本当!!」


案の定、始は星奈の願いを聞き入れ、星奈は飛ぶように喜んだ。


「ただし、俺の言うことは聞くこと。いいね?」


「うん!」


「一件落着か……」


始と星奈の関わりを見て、腕を組み、安心する剛。そんな剛を見て、星奈は始に話しかけた。


「そういえば始君。この人って始君の言ってたもう1人の陰陽師の人だよね。」


「そうだけど?名前は稲城剛。自己紹介とかしなかったのかい?」


「だって……」


すると、星奈はまるで近所の怖いおじいさんを見るように恐れながら剛を見る。先程の星奈と剛の仲を見る限り、しょうがないかなと思い、始は剛のフォローを入れる。


「まぁ……見た目は怖いけど、根は優しいからさ。」


「えー嘘!ありえない!絶対不良だよ!」


「なんか言ったか?」


剛にも会話が聞こえていたようで、不機嫌そうに星奈に怒鳴る。すると、星奈はヒッと声を漏らし、始を盾にするように背後に隠れた。


「まぁ……お互いに頑張って仲良くしてね。」


そんな状況に始も苦笑いをしてしまう。すると、剛は頭を掻き、何やら気まずいそうにしながらも、覚悟を決め、星奈に声をかける。


「おい……春海!腹……減ってるか?」


「はい?」


星奈にとって恐怖の塊でしかない剛から突然、腹が減ってるかと言われて、どういう意図でそんなことを言ったのか訳がわからず、困惑してしまう。


「……ラーメン奢ってやる。」


「えっ?」


「2度は言わん。ついて来い。」


ポケットに手を入れ、そのまま剛は黙って歩き始める。あまりの突然の行動に、星奈はただ口を開けたまま、立ちすくんでいた。


「ふふ、全く剛は不器用だな。」


「ねぇ、どういうことなの?」


「剛はラーメンが好きでね。よく、一緒に食べに行くんだ。だけど、剛は気のあった人としか食べに行かないんだ。……後はわかるね?」


始に説明されて星奈は剛の行動を理解出来た。同時に剛のそういうことに気づける程、始と剛は互いに理解し合っている。星奈にとってそれが羨ましくもあった。

そして、自分も始のことをもっと理解して支えたいと星奈は決心する。


「星奈、行こうか。」


「うん!」


そして、始の隣に並びながら、剛の後を追うため、歩き始めた。



次回は早めに更新したいと思います

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