異世界編:第6話 「熱志、戦う!肉まんの為に!!」
戦闘って難しいですねぇ・・・
俺は今年で一番の殺気<食欲を込めた目で睨みつける・・・
そいつは警戒しているのか飢えた野獣の目をしつつも俺の周りをグルグルと回りながらスキを見て襲い掛かろうとしている様だ
見た目は熊だ・・・太い爪と口からはみ出た大きな牙(20cmくらいあるんじゃないか?)・・・
うん・・・一番の問題は2m以上あることだな
命名しよう「熊(仮)」
さて・・・今のうちに状況を整理しよう・・・落ち着け!私は冷静だ!!(ヒッヒッフー、ヒッヒッフー)
朝起きてコーヒーを飲む→昼時まで竹細工で日用品を作る→昼飯を作ってる途中に飢えた熊乱入→もうすぐ蒸しあがる肉まんが喰われそう
よし・・・理解した・・・奴は敵だ!
隙を見せないようにしつつ、半身になり腰を落として重心は低くし瞬時に対応できる体勢にする
「ふーー、武器は・・・」
相手から視線を外さずに視界を全体像で捉え確認する
足元:石、包丁 後方:肉まん蒸し中の竈in燃え盛る薪 更に後方:崖下の軒に薪と鉈
周囲:竹細工の材料や完成品 熊後方:テントin色々
「まずは・・・肉まんではなく俺を見てもらおうか(ニヤリ)」
熊が移動のために前足を上げた瞬間に踏み込む!(これで一手先攻・・・)
蒸し器の前で暑かったので羽織るだけにしていた上着を投げつけて視界を奪う
当然、上着はすぐに吹き飛ばされるが(ビリビリビリッ!!)
「お・・・俺の一張羅が・・・」
「馬鹿!あの爪見たら当然の結果だろ!!」
「くっ!」
足元の石を拾い顔面に投擲する!
「シッ!!」
昼田流 投技:討ち礫
腕を大きく振るわず、極限までモーションをコンパクトにまとめ石を撃ち出す!
戦国時代に石投げは刀や弓と同じく有効な戦闘手段であった、そもそも昼田家は・・・(親父の話だ)
ダメージを期待しての攻撃ではないが、顔面に石が当たれば誰しも怒りこちらに意識が向く!俺もそうする・・・
「GAAAAAAAAAAA!!」
怒りに燃えて咆哮しつつも、痛みから顔を振ってる隙に薪置き場へ移動し鉈を入手!
包丁は間違いなく折れるからな・・・
「さて・・・準備は出来た・・・」
「どうするんですか?」
「決まってるだろ・・・一撃食らわせてから・・・」
「から?」
「逃げるんだYOOOOOOOO!!」
「・・・・」
「いくぜ!!」
こちらに向かってくる熊へ無謀ともいえる速度で突進する
野生の獣の反射神経で爪でなぎ倒そうとする熊
絶妙なタイミングでカウンターが決まりそうだが・・・
「計画通り・・・(ニヤリ)」
相手の間合い前で脚を止めつつ、上半身の重心だけ前にかけることにより相手に間合いを錯覚させる
昼田流 歩技:残進
間合いが外れれば、当然攻撃は当たらない
顔面に鉈を叩き込む!
「GURUUUU!!」
流石野生!首をひねって回避行動を取る!!
顔面を浅く切り裂くにとどまったが十分だ・・・
「全力で・・・・逃げる!!」
野生動物の耐久力を舐めてはいけない、銃や鉄砲があるならともかく生身の人間が鉈一本で倒せるわけが無い
全力で逃げて、逃げ切ったら大型動物向けの罠や武器を作成して万全の状態で戦うべきだ
あの巨体だ、森の中に入れば突進の速度も落ちるし半年間歩き回った森は俺の庭とも言える
逃げ切れるはずだ・・・
「と思っていたんですが・・・」
「ありえないな・・・」
「KISYAAAA!!(バキャーン!!)」
「木が障害物にならないってどういうこと?」
「・・・(絶句)」
もちろん腕で抱えきれないほどの大木は大丈夫だが、ある程度の木は突進で粉砕されて障害にならない
所々に仕掛けてあった猪や鹿用の落とし穴で速度が落ちなければ完全に追いつかれていた
半年の生活で体力がついているとはいえこのまま逃げ続けては詰んでしまう
必死に思考を加速させる
逃げるにしろ反撃するにしろ足止めが必要だ・・・木に登るか?駄目だ!熊は木登りが得意ってTVで言ってた!川に入る・・・論外だ!俺のほうが速度が落ちる!・・・罠にかける・・・使い切ってる!・・・あああああああああああああ!!どうすりゃいいんだ!!
必死に逃げる!避ける!逃げる!飛ぶ!逃げる!転がる!(ぐっ!背中切られた!!)走る!(息が・・・)木を背に呼吸を整え・・・(ドカーン!)吹き飛ぶ!受身!!逃げる!!
「落ち着け(ゼイゼイ)・・・落ちる組んだ俺!」
「落ち着いてないよ!むしろ動揺してるよ!」
「落ち着いて素数を数えるんだ・・・1・3・5・7・9・11・13」
「それ・・・奇数だよ・・・」
会議をして少し冷静になった
目標に向かって走る!
目標は・・・・竹林だ
バキバキバキ・・・ビキビキ・・・
「GUOOOOOOO!!」
やっと一息つけた・・・木と違い竹は簡単には折れない、しなり折れても絡みつく
巨体故に密集した竹林は、俺のような男であれば通り抜けられるがヤツにとっては進めば進むほど絡まり進行を阻害する天然の要塞となる
鉈で即席の竹槍を作成し距離をとりつつ攻撃する
「ちぇすとーーー!(ドスッ)」
「GYOAAAA!!(ブンブン!バキッ!ギリギリ)」
竹槍を牽制に、隙を見て鉈で切りつける!
「そろそろ、逃げてくれないかな・・・(ドスッ!)」
「いやいや・・・攻撃してたら怒って逃げないだろ!(ズバッ!)」
「ある程度、消耗して欲しいし・・・ふんっ!!(泥を投げつける)」
「なんか毛を逆立てて、ますます怒ってるぞ・・・」
「くくくく・・・所詮は畜生か、沸点が低いぜ」
「自分にどん引きだよ・・・」
パチパチパチパチ・・・・・
「ん?何の音だ?」
正直・・・気を抜いていた、油断していた、侮っていた、舐めきっていた・・・
薄々とは気が付いていた
ここは日本じゃない・・・植物や動物も生態や規格が違う
異世界である事を・・・
「GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
「えっ!?」
閃光・・・俺は吹き飛ばされていた・・・
体が中から弾ける様な激痛!気を失うことも許されない断続的な痛み!意識に反して痙攣し跳ねる体!
視界が明滅し涙が溢れ、口からは血の混じった吐しゃ物が溢れ呼吸もままならない!
「がぁ!(ゲボッ)かっ!ぎぃぃぃい!!(ビクンビクン)」
唯一の幸運は吹き飛ばされたが、竹がクッションになり落下のダメージが軽減されたことだろうか・・・その幸運を感じる余裕は無い
「あ・・・あぁ・・・ひぃ・・・(ガクガク)」
痙攣し震える体を抱きしめ必死に顔を上げる・・・何が起こったか理解できずに恐怖から自然と対象を見上げた
そこには・・・
毛を逆立てて全身からバチバチと放電しながら竹を踏み潰し掻き分けながらこちらへ進む
青く光り輝く熊だった
戦闘、まだ続きます
戦いはこれからだ!(フラグ)