異世界旅情編:第2話 「熱志!ゴボゴボガァハッ!!(言葉にならない)」
なろうの皆様の作品を読んで思うことがあります・・・
すげぇ・・・
今は完走を目標に頑張ろうと思う、この頃です
一瞬でしがみ付いている大木ごと濁流にのまれる
冷たい泥水が体を引き剥がすかのように荒れ狂う
岩や流木が大木にぶつかり衝撃で吹き飛ばされそうになる
流れてくる木や石が容赦なく体へ襲い掛かる
息をする度に泥水を吸い込んでしまい咳き込む、慌てて吐き出してまた吸い込む
背中、手、足、頭!連続で衝撃が加わる・・・上下左右あらゆる感覚が麻痺する
濁流に流されれば死ぬ!命綱(大木)を渾身の力でしがみ付き耐える!耐える!!耐え!
無常にも木が回転し、手がすべり・・・濁流にのみ込まれた
「熱志!!」
どこか遠くで・・・悲痛な叫び声が聞こ・・・え・・・
俺の意識はそこで途切れた
昨日の雨が嘘のように晴れ渡る快晴!
しかし、メルナル村では昨日の豪雨以上に暗い雰囲気に包まれていた
「村長・・・畑は・・・一部を除いてもう・・・」
「井戸は無事でしたが、用水路は泥や流木で使い物になりません」
「牛が納屋ごと流されて・・・」
「点呼終わりました!避難が早かったので、全員無事です!」
「明日からどうすれば・・・」
「俺の・・・家が・・・くそっ!!」
「おかぁさん・・・怖いよ」
昨日の豪雨で川が氾濫し村の半分が洪水に飲まれてしまったのだ
雨が上がり、日が昇って避難していた高台から戻ってきた村人達の前には厳しい現実が突きつけられていた
「皆、落ち着け!これから出す指示に従って行動してくれ!」
村長のアレン・メルナルの鶴の一声で場が静まり返る
「馬は何頭残っている?」
「3頭です」
「クベート!二人連れて今すぐ町の領主様へ現状を伝えて支援を要請しに行ってくれ!」
「わかった!」
「食料、水は最低限の片道分しか持たせられんが・・・頼んだぞ!!」
指名を受けた男達が慌しく準備をし村を出発する
「残った男は倒壊した家屋の復旧!最低でも雨が防げる状態にしろ!!女は畑の確認!全員、川には近づくな!爺婆は子供達と集会所で待機!」
指示を出し終え、各自が分担へ散る
「こんなところで・・・村を・・・」
「兄さ、村長・・・」
肩を震わせながらも気丈に指示を出す村長に弟のカテル・メルナルは声を掛けるのを躊躇ったが意を決して声を掛ける
「・・・どうした、カテル?」
「備蓄の食糧を確認してきたが、壷に入った一部を除いて泥水でやられてダメだった・・・畑の作物で早期収穫できるものを集めても3日が良いところだ・・・」
「1日を最低限に減らして、可能な範囲で森に入って何かしら食料を採ってくるとしたらどうだ?」
「・・・それも考えて3日だ」
絶望的だった・・・普段であれば町と村の往復は3日だが豪雨の後の悪路では4日以上かかるだろう
さらに支援を要請して、領主様が物資を集め準備を終え村へ来るとすればさらに日数がかかる
着の身着のまま、十分な食料も無く200名ほどの村人が耐えられるか?
答えは否・・・
「くそっ!!くそっ!!」
「兄さん!落ち着いてくれ!!頼む!!」
「これが!落ち着いてられるか!!俺の代で皆が守ってきた!育ててきた村が・・・なんで!こんなっ!!」
兄が泣いている・・・子供の頃から何時でも笑って、兄貴ぶって偉そうにしてて、親父が病気で息を引き取る晩に「大丈夫だ!俺が村長を継いで村を守るから安心しろ!ハッハッハッ!」と枕元で豪快に笑い飛ばして安心した顔で生涯を終えさせた尊敬すべき兄が・・・
「俺は・・・親父に、約束したんだ!村を守るって!!なのに・・・何もできない!」
「・・・・・」
変わり果てた村、ほとんどの家屋は流され、畑は泥に埋もれ、流木や岩、ゴミが所狭しと散乱している
言葉も無く、自然の猛威に言葉も無く立ち竦む
沈黙を破ったのは兄だった
「さぁて・・・やるか!カテル!!村を回って復旧に掛かっている皆から村の状態を細かく聞いてまとめてくれ!俺は集会所に行って追加の指示を出してくる!」
「に・・・兄さん!?」
「おいおい・・・村長と呼べ!!辛気臭ぇ顔してんじゃねぇよ!」
やっぱり・・・何時もの尊敬すべき兄さんだよ・・・流石は村長(メルナル村:抱かれたい男ランキングTop)だよ!(回答者:男女含む)
「村長・・・集会所に行く前に、顔を洗うことを勧めるよ」
「あ?なんでだ?」
「手についた泥のせいで、涙拭った後が残ってるよ」
「ばっ!馬鹿野郎!!泣いてねぇし!!ふざけたこと言ってねぇでさっさと仕事しろぃ!!」
兄さん・・・そんな照れ隠しが可愛いよ(ウホッ!)
集会場は静まり返っていた・・・数分前までは
「いいかガキンチョ共!仕事の時間だ!!」
「はい!村長!!」
「いい返事だ!ほめて遣わす!!」
いつも朗らかで、手の空いたときは子供達と良く遊ぶ村長(メルナル村:子供の心を持った大人ランキングTop)は返事をした子供の頭をぐしゃぐしゃと撫でると指示を出した
「仕事は宝探しだ!」
「!!」
宝と聞いて子供たちが目をキラキラとさせて見上げる
「まず、3人1組になれ!」
わいわい、キャーキャーしながら3人1組になる
「宝は村の中にある!」
「!!」
「壊れた家!流された家!そこから何でもいいから使えそうなものを集めて来い!鍋でも、服でも、食器でも・・・お金でも!」
「はいっ!村長!!」
「報酬は・・・俺の奢りで今度の収穫祭で屋台食べ放題だ!!」
ざわっ・・・ざわざわ・・・うおおおっぉおぉぉおぉ!
漣のように子供たちから歓声が上がる
「あー、まてまて・・・宝探しの注意点だ」
ピタリ・・・
「無理して重いものを持ち上げない、無理そうだったら大人を呼ぶ。川や用水路、深そうな水たまりには近づかない。死んだ動物がいたら場所を覚えておいて報告する。集めたものは集会場に持ってくる」
「わかりました!」
「怪我だけはするなよ!行って来い!!」
わーーー!と歓声を上げて走り出す子供達を見送りながら
「ぬかるんでるから走って転ぶなよ!」
最後に一言言うのを忘れない・・・気配りのできる男である
その後の集会場にて
「村長・・・わしらは、何をするべきかのぅ」
「爺さんと婆さんには悪いが動ける者だけでいいから、備蓄庫の濡れた食料で洗えば食える物や切れば中が食えるものとかを分別してくれ。腐りやすい物は今日中に調理して食ってしまおう」
「任されたぞぃ!」
「すまんな・・・もっとしっかりと備えておけばこんな事には・・・」
「村長・・・わし等は長く生きた、領主様の支援が間に合わなければ森に入る覚悟はできとる」
「そんな事は・・・俺は・・・」
「ほっほっほっ!なぁに、まだ決まったわけではあるまい!頑張らせてもらうぞぃ!!」
「・・・ありがとうございます」
情けなくて涙が出る、顔を上げられない・・・
俺が災害のことを考えて対策をしていなかった事に!
爺さん、婆さんに家族を捨てて森へ入る覚悟をさせてしまった事に!
森へ入る・・・クソ食らえだ!
開拓村であるメルナル村は過去に幾度も災害や飢饉が起こったことがある
その度に村を存続させるために・・・食料が行き渡るように・・・働けない者や老人が森へ入って帰ってこなかった・・・何のことは無い!口減らしだ!
ここ数年、天候も穏やかで村人も徐々に増え開墾も進み順風満帆に安心していた
万が一よりも、目先の事に囚われていた!
こんな時に子供達も、騙して働かせる!
最低すぎて反吐が出そうだ!!
「歯ぁ・・・喰いしばれ!!」
俯いている顔を胸倉を掴んで強引に上に向けると・・・ドゴォ!!
ステラ・メルナル(妊娠9ヶ月)は夫の顔を張り飛ばした!!
「ス・・・ステラ?」
「あんたの考えてること言ってやろうか!」
「な・・・なに?」
「村長なのに災害の対策ができてなかった!」
「うっ!?」
「村長なのに村人に最悪の覚悟をさせちまった!」
「くっ!」
「村長なのに子供達を騙して働かせた!」
「っ!!」
「そんなところだろ?」
「そ、そうだ・・・俺が!なんとかしていれば!!」
「でもね・・・アタシはアンタが大好きだよ!」
「お・・・おまぇ・・・何を?」
「対策?こんな洪水見たことも聞いたことも無いよ!誰だって備える事なんてできやしない!神様じゃないんだよ!」
「そ・・・それでも多少は・・・」
「多少はしてただろ?それを超える想定外だったのさ!はい、これで終了!」
自分の妻ステラ・メルナル(メルナル村:頼れる女性ランキングTop)を呆然と見つめる・・・
「それにね・・・爺様も婆様も子供達も、アンタが大好きさ!アンタが守ってきた、この村が大好き!だからアンタと村を守るために覚悟もするし、怖くて不安でも頑張って笑って役に立とうと頑張るんじゃないか!」
さっきまでの後悔と慙愧の涙とは違う、胸の奥からこみ上げる暖かい涙が止まらない
「アタシが何で殴ったのか分かったかい?」
「・・・(ゴシゴシ、ズビッ!)ああ、情けないところ見せちまったな」
「で?」
「え?」
「あんた、何してんの?」
「えっ?何って?」
「はぁ・・・」
肩を掴んで後ろ向かせられて・・・ゲシッ!
「爺様、婆様に覚悟させずに!子供達に収穫祭で奢りで食べ放題させるんだろ!!ボケッとしてる暇があったら、さっさっと仕事しろぃ!!」
さ・・・流石は俺の嫁!惚れ直したぜ!だけど、ちょっと手加減して欲しいぜ
「いっ・・・いってくる!あと・・・あまり激しい運動するなよ!お腹の子に障るからな!」
最後に一言言うのを忘れない・・・気配りのできる男である
お読みいただき、ありがとうございます