テーマ 諭吉さん
(くそっ!俺はどうすればいいんだ……)
少年は悩んでいた。
(これは欲しいが買ってしまったら……くそっ!)
ここまで少年が悩んでいるのだからよっぽど深刻な問題に違いない。
(ここで買ってしまったらあれが……)
少年が言っているあれとはいったい……
(諭吉さんが財布から消えてしまう!)
諭吉さん……つまり1万円札の事だったらしい。
(俺がここでこれを買ってしまったら尊敬する諭吉さんとは二度と会えなくなってしまう!)
ちなみにこの世界ではもう諭吉さんはめったに見れなくなってしまっている。
まあ、ぶっちゃけ私にはどうでも良い話なんだがな……
(おい天の声!俺の悩みをどうでも良い話にするなよ!)
なぜ私にツッコミ入れることが出来るのかは気になるが……
仕方ないだろ。私は時給900円で雇われている天の声なんだ。
お前の事情なんてどうでも良い話にすぎん。
(時給900円で雇われているのかよ!ってそんな事はどうでも良い。俺は諭吉さんを手放してでもこれを買うべきだと思うか?)
私が知るか、勝手にしろ。
(なら仕方ないな……今日は諦めて明日……)
ああそうだ。お前が買わないなら後10分後に私の妹が買うことになってるからwww
(ちょっと!それって結局今買うしか無いって事かよ!)
知wるwかw
(笑いすぎだろ!)
ほらほらさっさと諭吉さん手放せよ。つーか早く買いやがれ。これ終われば今日の仕事終わりなんだからよ。さっさとしやがれ。
(そんなの俺が知るかよ!お前の事情だろうが!)
ほらほら早くしないと私の妹に買われちまうぞwww
(こいつ超うぜぇわ……分かったよ。買うから笑うのやめろ)
それは無理だwww
お前が苦しむ姿見るのは楽しすぎるwww
(すっげえムカつく!)
早くしろよ!!私は休みたいんだよ!
(分かったから黙れ!お前うるさいんだよ!)
ああそうだ。一応言っておくよ。
(なにをだよ……)
「こちらの商品は9850円になりまーす。1万円からでよろしいですか?」
「はい。お願いします」
その諭吉さん使うと……
(使うと?)
『危ない!』
「ほぇ?」
ドガーーーーン!!
トラック突っ込んでくるからwww
(そういうのは先に良いやがれぇ!!)
大丈夫大丈夫体は痛くないだろ?
(確かに痛くないな……)
お前はその世界にはいない存在だったからね。本来なら生まれないはずだったはずなんだけど……
(えっなにそれ怖い。今初めて知ったんだけど)
まあ私の雇い主も昨日知ったばかりだしねぇ~
(逆になんで昨日分かったんだよ……)
暇だったから誰かを転生させようとしたみたいだよ。そしたら変な反応があるから調べてみたら君がいたわけだよ。
(お前の雇い主っていったい何者だよ……)
さぁ?私もよく知らないけどね。私はただのバイトだから。
(バイトなのか!? )
うん。今日が初めての仕事だよ。
(しかも初めて!?)
まあ、そんなのどうでもいいじゃん。
どうせ君は転生するんだし。
(いや、どうでも良くは無いだろ。つーか俺が転生ってどういう事だよ?)
どうやら私の雇い主が「いないはずの存在なら消えても問題ないよね。ついでだしこいつを転生させるか」って事らしいよ。
(お前の雇い主に一回文句を言ってやりたいわ……)
文句ねぇ……言えないと思うけどな~
(どういう事だ?)
だって私の雇い主の正体、諭吉さんだし。
(えっ、えー……何だよそれって)
私に聞かないでよ。
(なんで諭吉さんなんだよ……訳が分からん。いったいどういう事だよ……)
うーん……なんか面倒だから、もう転生させようか。
諭吉さん。転生させて良いですか?
「ああ、うんやっちゃて良いよ~」
じゃあ……行ってらっしゃーい。
(本当にどういう訳だよ……っていきなり足元に穴が!?ギャー……)
まあ、転生してもがんばってね~
やっと今日の仕事終わった~
さーて家に帰ってTVでも見るかな~
まっ、いきなり死ぬなんて事は無いから安心しといてね~
(安心なんて出来るかよ!)
あれ?なんでまだ私と話せるんだろう?まあ、いいか。
(良くねえよ!)