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Prologue

 まず始めに、作者は文才が微妙な為おかしな文があるかもしれません。もしあったら教えてください。

 更新は頑張りますが遅めになりそうです。なるべく沢山更新できるように頑張りますのでしおりやレビュー等お願いします。

 それでは、本編へどうぞ。

 しとしと、しとしと。


 傘がいらない程度の小雨が降っている。


 既に辺りは闇に包まれる虫の鳴き声すらしない静寂の世界へと変わってしまっていた。


 何故真夜中、しかも傘がいらないとは言え外出しているのか。それは現在の時間と自分の住んでいる場所が関係している。


 現在時間は深夜1時30分、自分の家という物は無く友人の家に住まわせてもらっている。


 こんな時間に友人が起きているはずも無く何もする事が無かった俺は、補導されるかもという危険性のある夜を散歩する事にしたのだ。


 前文以外にも刺激のある人生の方が楽しい、という理由もある。


 そんなわけで俺は友人の家から出ると小雨が降り注ぐ夜の道を歩いているわけだ。



 それにしても辺りは暗い。


 自分が歩いている道さえ数歩先がギリギリ見えるくらいだ。


 明るい中を歩く普段とは違い、電灯や稀に道路を走り去る車のライトに僅かに照らされる闇の道を歩くのは何だか不思議な気分だ。


 数分歩いていると十字路に到着した。


 この十字路から伸びる道はそれぞれが交わる事無く別々の場所へと向かっている。


 上手く言うのならば"運命の分岐点"という感じだろうか。少し大袈裟だが。



 真っ直ぐ進めば高校へ、右へ進めば公園へ、左に進めば商店街に繋がっている。

 いつもならば真っ直ぐ進み自分が通う高校へ進むのだが今は深夜、夜の世界。


 迷った結果右に進む事にした。


 暫く歩いていると小さな公園が見えてきた。この公園は遊具が滑り台とブランコだけという少し寂しい公園だ。


 遊具の話をしたがこれはあくまでどれだけ公園が小さいかを表しただけであって自分が使用するわけでは無い。そもそも小雨とは言えぐっしょりと濡れているだろう。



 公園に入るとやはりと言うかなんというか、遊具は全て濡れていて使い物にならなかった。


 ブランコが無事だったら良かったな、なんて心のどこかで思っていた。



 仕方なく公園の隅にある2つのベンチの方へ歩く。


 この公園のベンチは丁度良い感じに木の枝と葉が屋根になっていて雨が降ってもベンチが濡れないのだ。



 ベンチの方へ歩いて行くと先程まで暗くて見えなかったがベンチにはどうやら先客がいるらしい。


 こんな時間に外に出ている奴なんているのか?まぁ俺は外に出ているんだが。


 近づくに連れ段々と容姿がわかってきた。


 黒くて長い髪に綺麗で透き通りそうな白い肌。


 美しい--素直にそう思った。きっと初めての感情だろう。


 これまで可愛いと思えるような女の子には何人か会ったが美しいと思った女の子には初めて出会っただろう。


 背丈は……俺より少し低い、しかし同年代くらいだろう。



 勿論話しかける事などせずに彼女がいない方のベンチに座る。


 こんな時間に外にいるんだ、どうせまともな人じゃ無いだろう。


 などと思いながら目を閉じる。



 小雨だが雨の音が小さく響いている。そんな中誰かが近づいて来て隣に座った気配を感じた。


 まさかと思い目を開けると先程違うベンチに居た人が隣に座っていた。


「っ!?」


「座ってて」

 彼女の声が公園に響く、すると慌てて立ち上がって彼女から離れようとしていた俺は見えない何かに貫かれたような感覚と小さな痛みと共にベンチから立ち上がれなくなった。


 まるで自分がしようとしていた行動を何かでザクリと裂かれ強制的に止められてしまったような、そんな感じだ。


「…………」


「あんた……一体……」


 彼女は俺の上着の裾を掴んでこちらを見ている。その表情は無表情だけどどこか寂しげで--目を離せなくなった。



 数秒間、見知らぬ人と見つめ合う。


 自分の中ではたった数秒の出来事が10分、30分にも感じられた。


「……早く家に帰った方が良い」


 彼女はそう言うと俺の服から手を離しベンチから立ち上がった。


「あっ、うん。わかってるけど……ん?」


 ここで何だか違和感を感じた。


 それは微々たる物だったが確実に俺を貫いた。

 気付くと無意識の内に立ち上がっていた、立とうとなど微塵も思っていなかったのにだ。


 それに心の奥深くで"早く帰らなければ"という思いがぐるぐる回っていた。



 そして気付いた、この(ヒト)は普通では無いのだと。


 先程は"座ってて"と言われると立ち上がろうとしていた俺は意志に反してベンチに座ってしまった。


 その時も見えない何かに貫かれた感覚があった、痛みも感じた。


 今回は"早く帰った方が良い"と言われると無意識の内に立ち上がり心の奥深くでは早く帰らなければと思ってしまっている。


 実際には俺はまだこの人と居たいと思っていた、好意とかでは無く純粋にただ話がしたいと思っていたからだ。



「あの……っく!?」


 ここに残ろう、この人と喋ろうと思っただけで全身を不快感に襲われる。



 早く帰ろう、早く帰ろう、早く帰ろう。


 頭の中でその言葉が何度も何度も繰り返される、下手すれば狂ってしまいそうな程に。


「……鳴瀬鈴」


「えっ……?」


「私の名前は鳴瀬鈴、また会えるから無理しないで帰った方が良いよ」


 そう言って彼女--鳴瀬鈴は俺がいない方のベンチへと移動しベンチに座った。


「あっ……わかった、またな」


「……」


 彼女はこちらをチラッと見ると直ぐに視線を外し別の方を向いてしまった。


 俺は"また会える"と言った彼女の言葉を信じて家に戻る事にした。



 これが俺、黒灯蒼夜と鳴瀬鈴が初めて出会った時であった。

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