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『ヘタレと天然の恋に、計算高い女を添えて――これは略奪になりますか?――モテ男を落とす女たち。』【短編版】

作者:
掲載日:2026/09/19

略奪愛とはなにか?考えて書いた作品です。

うわ! お前が、一番の悪女じゃん。

一同が内心で毒づいた。


❖❖❖❖


「私になんてフェリクス様は勿体ない方です。私なんかが婚約者でごめんなさい」

セシリアは眉根を下げ、そっと俯いた。

一番可愛く映る角度で。

これはセシリアの十八番である。


「なんてセシリア様は謙虚な方なのかしら」

「セシリア様がお似合いですわ」

「フェリクス様に嫉妬されないなんて、本当にできた方ですわ」

令嬢達が口々に褒めそやす。


「そんな……。皆さまの方が、素敵ですわ」

セシリアは令嬢達を一人一人見渡した。


内心というと――。

(くすっ。フェリクス様はお優しいから。少し微笑まれただけで、自分が特別だと思ってしまうのね)

にっこり。

(私には勝てないのに)


「セシリア様のような婚約が羨ましいですわ」

「まあ……」

頬に手を添える。

(可哀想。誰も選ばれないのに)

フェリクスほどの男には巡り会えないだろう。

ご愁傷さま。


毒づくのはデフォルトである。


これが計算高い女、侯爵令嬢セシリア・ハーグレーヴの日常である。


❖❖❖


伯爵子息フェリクス・ウェルズは、とにかくよくモテた。

宮廷医師を目指す学生である。


なぜか令嬢達は、彼の前に来るとすぐにどこかが悪くなる。


「フェリクス様、手を少し痛めたみたいで……」

ある令嬢が白く真っ直ぐ伸びた手を差し出した。

彼女の自信のあるパーツである。

フェリクスはその手を取った。

「うーん。腫れていないようだから、貼付薬で様子を見てもらえるかい?」

「……はい。ありがとうございます」

令嬢は頬を染める。


少し離れた場所から、セシリアはその光景を眺めていた。

(ぶふっ、鏡を見たことあるのかしら?)

フェリクスは誰にでも優しい。

分かっている。

だから笑っていられた。

(好きなだけ夢を見ればいいわ)


毎日、自分の足で運び込まれる患者を診る。

それがフェリクスの日課であった。


❖❖❖


昼食時だけは、二人の邪魔をしない。

それが令嬢達の暗黙の協定である。

二人は毎日、多くの学生が利用する食堂の中央に腰を掛ける。

ここが二人の指定席である。

当然、目立つ。

少々不器用なフェリクスが、口元にソースをつけた。

「フェリクス様。ソースがついておられますよ?」

セシリアはハンカチを取り出し、そっと拭ってやる。


どこからかピンクのため息が漏れた。


(見ているわ)

セシリアは優雅に微笑んだ。

(みんな、ここに座る自分を想像しているのかしら)

もう一度、フェリクスを見る。

(ごめんなさいね)

彼の隣にふさわしいのは自分である。


想像するのはご勝手に。


❖❖❖❖


そんなある日。

フェリクスは急いでいた。

令嬢達に囲まれ、予定が押していたのである。

廊下を急ぐ。


ドン。

「きゃっ」

ガチャン。

ぶつかった令嬢の眼鏡が飛んだ。

「ごめん。急いでいて……怪我していないかい?」

眼鏡を拾い、顔を上げる。


トクン――。

フェリクスの動きが止まった。

「可愛い……素敵だ」

恋に落ちた。

鮮やかに。

あっという間に。


相手は子爵令嬢エリーゼ・フェアリー。

(どうしましょう。お母様に、未来の婚約者様以外には素顔を見せるなって言われているのに)

エリーゼはフェリクスから眼鏡をむしり取り、走って逃げた。


❖❖❖


エリーゼは薬師を目指す唯一の女子学生であった。

長い髪を二つの三つ編みにし、眼鏡をかけている。

なかなかのもっさり具合である。 


薬師棟は学校の外れ。

薬草畑の前に建つ、少々古びた建物である。

独特な薬草の匂いもあり、薬師科の学生以外はほとんど訪れない。


ところが最近。

「フェリクス様、また来てないか?」

「来てるな。令嬢達から逃げてるんじゃないか?」

恋愛偏差値が極端に低い薬師科男子は気付かない。


「ねぇ、聞いて。クラリス。最近、フェリクス様がよく薬師棟に現れるんですって。追っかけから逃げているらしいの」

昼食時。

仕入れた最新話題をドヤ顔で披露する。


相手は伯爵令嬢クラリス・モーガン。

エリーゼの幼なじみであり、親友である。


そして。


とても世話好きである。


「なるほど……」

クラリスはゴクリと喉を鳴らした。


また別の日。

「ねぇ、聞いてよ。クラリス。この間、フェリクス様にぶつかったでしょう? 逃げたのは悪かったと思って謝ったの」

「それで?」

「『ああ……』って。それだけよ。随分、噂と違う方ね」

クラリスの手からスプーンが滑り落ちた。


ガチャン。


「それは、フェリクス様の好き避けよ」


少々ボリュームのある声で、そう答えた。


❖❖❖


あれ……。

インクって、こんなになかったかしら?

最近、気付けば色々な物がなくなっている。

一番困ったのは提出用のレポートである。

「あれ? 昼食前に机へ入れた気がするけど……おかしいわね」

エリーゼは首を傾げた。


お馴染みの昼食報告会。

「ねぇ、聞いて。クラリス。最近、よく物がなくなるの。私の気のせいかしら?」

どこからともなく、クスクスと笑い声が聞こえた。

クラリスが眉を寄せる。


「ちょっと。それ、いじめじゃない。フェリクス様の追っかけの嫌がらせよ」

「いじめ?」

「悔しいわね。エリーゼをいじめるなんて許さないわ。対策会議開くわよ」


その日の放課後。

クラリスはエリーゼの家へ乗り込んだ。


実はエリーゼ。

令嬢らしからぬ体型をしていた。

クッキーが大好き。

本を読みながらパクパク食べる。

見つからないように。

ほとんど動かないから、背中にも脂肪を蓄えていた。

「エリーゼ。まずは、そのだらしない身体をなんとかしなさい」

クラリスは隠してあったクッキー缶を奪い取った。

「ああ……私のクッキー……」

無視。

フェアリー子爵夫人の前に差し出す。

当然、エリーゼは叱られた。

クッキー没収。


それから毎日。

クラリスはエリーゼを外へ連れ出した。


若さは素晴らしい。


半年も経つ頃には、綺麗に脂肪が落ちていた。


❖❖❖


もちろん、その間も嫌がらせは続いていた。


発端は、セシリアの涙である。


令嬢しかいない放課後の教室。

「フェリクス様が心変わりをしてしまいました」

セシリアは俯いた。


「エリーゼ様に心を移されてしまったようなのです」

はらはらと涙が落ちる。


「そんな……」

「セシリア様がお可哀想ですわ」

「エリーゼ様だって、セシリア様が婚約者だと知っているはずですのに」


セシリアは小さく首を振った。

「エリーゼ様を責めないでください」

「ですが!」

「きっと悪気はないのでしょう。フェリクス様にあれほど想われれば、自分が特別だと勘違いしてしまうのも仕方ありませんもの」

令嬢達が黙った。


フェリクスが、それほどエリーゼを想っている。

その事実を改めて突きつけられた。


嫉妬に火が灯る。


「……こんな時まで他人を責めないなんて」

「セシリア様はお優しすぎますわ」

「私が身を引けば済むことですから」

「そんなのおかしいです!」

「セシリア様こそ、フェリクス様のお隣にいるべきです!」

「大丈夫です。私達がなんとかしますから」


「いけませんわ。そんなこと……」

セシリアは慌てて首を振った。


同じ男を想う女達。

そこに妙な連帯感が生まれた。


人の婚約者から想いを寄せられる。

それがどれほど私を傷つけるのか。

――少しくらい、思い知ればいいのよ。


❖❖❖


それから少しして。

セシリアは薬師棟を訪れた。

「エリーゼ様」

「セシリア様……」

エリーゼの顔が強張る。

フェリクスの婚約者。

そして、誰にでも優しいと評判の令嬢。

「私、あなたとお友達になりたかったの」

「私と……ですか?」

「ええ」

セシリアはエリーゼの手を取った。

「だって、フェリクス様が大切になさっている方ですもの。私も大切にしたいわ」

「セシリア様……」

エリーゼの表情がほころぶ。

「何か困ったことがあったら、いつでも仰ってね?」

「ありがとうございます。セシリア様って、本当にお優しいんですね」

「まあ」

セシリアは嬉しそうに微笑んだ。

(本当に何も分かっていないのね)

手を離す。

(何も知らない顔をして、フェリクス様の心だけ奪って。私がどんだけ我慢してきたか)

笑顔のままエリーゼを見つめる。

(いつまで、そんな顔で笑っていられるのかしら)


❖❖❖


エリーゼは頑張った。

初めは足を掛けられれば、すぐにこけた。

ぶつかられれば、またこけた。

しかし身体を絞るほど俊敏になり、半年も経つ頃には――。

ひらり。

躱すまでになった。


一方。

フェリクスはというと。

ヘタレが進行していた。

時間さえあれば薬師棟へ足を向ける。

食堂でエリーゼを見れば、ぼーっと眺める。

ポロリ。

パンまで落とす。

誰が見ても惚れている。

なのに、その一歩が出ない。


周囲の方がやきもきする。

令嬢達は嫉妬の炎を燃やす。


そして。

当のエリーゼだけが気付いていない。


「ねぇ、クラリス。本当にフェリクス様って私のことが好きなの?」


「好きよ」


「でも全然そんな風に見えないの。挨拶しても顔を逸らされるし。逆に嫌われてない?」

「それは思春期特有の好き避け。フェリクス様はエリーゼが好き過ぎて、自分をコントロールできないだけよ」

(まあ、正確にはヘタレと言うけど)


「そうなの?」

「そうよ」

クラリスは言い切った。

「それより、エリーゼはフェリクス様のことが好きでしょう?」

「う〜ん。そんなに好かれるならありがたいし、人柄も姿も、皆さんが憧れるだけあって素敵だと思う」

「それが、好きよ」

「そうなの?」

「そうよ」

再び言い切った。


「それから、いいこと。セシリア様がいじめを仕向けているのよ」

「あんなに優しい方が?」

「そうよ。あの方は、内面と態度が随分違うタイプよ」

エリーゼはゾッとした。


『私、あなたとお友達になりたかったの』

そう言ったセシリアは、その後もフェリクスと一緒に薬師棟へやって来た。

楽しそうに話して帰っていく。


「エリーゼ。あなたは下に見られてるの。悔しくないの?」

「え……」

「悔しいでしょう?」

「う……うん」

「絶対、フェリクス様と結ばれてギャフンと言わせましょう。私がついてるから」

エリーゼはコクンと頷いた。


❖❖❖


「最近の君、おかしくないかい? 鏡を見てみろ。意地悪そうな顔だぜ」

セシリアの取り巻きの一人が、婚約者からそう言われた。


その一言が始まりだった。


「私、いつの間にか悪者になっていたの」

別の令嬢に相談する。

「私も最近、婚約者から避けられてる気がするわ」

「私なんて、親しくしていた令息から無視されたのよ」

次々と声が上がる。


これまで。

嫌がらせを報告する度に、セシリアは涙を流した。

「皆さん……私のために、そこまでしてくださっていたのね。ごめんなさい。私、何も知らなくて……」

その度に。


セシリア様のお役に立てた。

可哀想なセシリア様を守れた。

少しだけ、優越感も満たされた。


でも。

「……待って」

一人が顔を上げた。

「セシリア様、私達が何をしていたか知っていたわよね?」

誰も答えない。

「一度でも、本気で止められた?」


沈黙。


「セシリア様は、心変わりされたフェリクス様の隣でずっと笑ってる」

「婚約者に裏切られても耐える、健気な令嬢」

「それに引き換え、私達は?」


一人が唇を震わせた。

「一人の令嬢を集団でいじめる悪女」


ようやく気付いた。


「なんで……」

顔が青ざめる。

「なんで、私達だけ悪者になってるの?」

「セシリア様は何もしてないのよ?」

「違う」

別の令嬢が首を振った。

「何もしなくて済むように、私達を使ったんじゃないの?」

全員が黙った。


❖❖❖


「セシリア嬢。エリーゼをいじめているって本当?」

教室にフェリクスの声が響いた。

「なんのことかしら?」

セシリアは瞬き一つしない。

計算高いセシリアはこれくらいでは動じない。


「ある令嬢から相談されたんだ。君に、エリーゼへの嫌がらせをけしかけられたって」

「私が?」

静かに首を傾げる。


「いつ、どこで?」

「それは……」

「私はいつもフェリクス様のお側におりました。いつエリーゼ様をいじめられるのでしょう?」

フェリクスが口ごもる。


そこへ、公爵令嬢ロッテがさっと進み出た。

「私のお友達が涙ながらに懺悔されましたわ。エリーゼ様に出来心で嫌がらせをしてしまった、と」

セシリアを流し睨む。


「ただし――セシリア様。あなたに利用されたとも仰っていましたが」

流石、公爵令嬢。

素敵なジャブである。


皆がゴクリと成り行きを見守った。

セシリアは動じない。

「証拠でもありまして?」

流石の返しである。


ただ。

セシリアは一つ、ミスを犯した。

健気キャラ崩壊である。

みなが一様に

(セシリア、お前がやったな。)

そう確信した。


空気が変わった。


セシリアにも分かった。

猫を放り投げる。


「自分のしたことを、私のせいになさるの?」

教室が凍る。

「私は一度だって、エリーゼ様をいじめろなんて言っておりませんわ」

「ですが、皆が何をしていたかは知っていたのでしょう?」

ロッテが問う。


「ご自分では何もせず、止めることもしない。なのに、ご友人達には悲しむ姿を見せ続けた」

一歩。

ロッテが近づいた。


「随分、都合のいい被害者ですこと」

セシリアの頬が引きつった。


「だったら何だっていうのよ!」

静まり返る。

「私が何をしたっていうの! 私は泣いただけよ! 傷ついたから泣いたの!」

令嬢達が息を呑んだ。


「勝手にエリーゼ様をいじめたのは、あの人達でしょう! 私がお願いしたわけじゃない!」

「セシリア様……」

「事実でしょう!」

セシリアは吐き捨てた。


「あなた達だってフェリクス様が好きだったからでしょう? 私の婚約者にベタベタして、頬染めて。恥ずかしい。自分達の嫉妬まで私のせいにしないで!」

誰も反論できない。

事実だった。


だからこそ、腹が立つ。


「大体――!」

セシリアがフェリクスを睨んだ。

「あなたが悪いのよ!」

「僕?」

「あなたがエリーゼ様なんかにうつつを抜かすからでしょう!」

一同がフェリクスを見る。

(まあ、それは確かに)

婚約者がいるのに、堂々と別の令嬢を目で追い続けていた。

全員、ちょっと頷いた。


「私は……」

セシリアの声が震える。

「私はずっと、あなたの気持ちが戻ってくるのを待っていたのよ」

涙が落ちた。

「あなたが他の令嬢に優しくするのも我慢した。毎日のように女の子に囲まれて、手を握って、笑いかけて……鼻の下伸ばして。」

「診察だよ!?」

「分かってるわよ!」

一喝。

フェリクスが黙った。


「分かっていたから我慢したの! 私は婚約者だから。最後には私のところへ戻ってくるって!」

セシリアは唇を噛んだ。

「エリーゼ様に心を奪われても待っていたわ。あなたが目を覚ますのを」

涙が頬を伝う。


「なのに、これがその結果ですか」

誰も何も言えなかった。

計算高い。

性格も悪い。

人を利用した。

自分だけ手を汚さなかった。

でも――。

フェリクスを好きだったことだけは、本物だったらしい。


一同の視線がフェリクスへ向いた。

冷たい。

「ご、ごめん。だって仕方がなかったんだ」

さらに冷たくなる。

「違う! そういう意味じゃなくて……!」

フェリクスは慌てた。

「どんどんエリーゼ嬢に惹かれていったんだ。君には悪いと思ってた。でも駄目なんだ。どうしてもエリーゼ嬢が好きなんだ!」



ガラッ。


扉が開いた。

エリーゼとクラリスが立っていた。


揉め始めてすぐ。

クラリスがエリーゼを呼びに走っていたのである。


フェリクスの顔が真っ赤になった。

「僕は……僕は……」

もう後の祭りである。

逃げ道はない。

腹を括った。


「エリーゼ。君だけが好きなんだ」

ヘタレの最後の勝負強さを見た瞬間だった。

観衆は心の中でガッツポーズ。

(言った!)


「ほら、エリーゼ」

クラリスが親友の背中を押した。

エリーゼがおずおずとフェリクスへ近づく。

皆が息を止めた。


「ごめんなさい」

「え?」

「私は、分かり易く好きと伝えてくれる人が良いです」

沈黙。


「……ええええぇぇぇ?」


モテ男が振られた瞬間である。

フェリクスは膝から崩れ落ちた。

「そ、そんな……」


その横で。

セシリアが腕を組む。

「ざまぁみなさい」

髪の毛をバザリとかき揚げる。


「私も、こんな男要らないわ」


セシリア姐さんの爆誕である。


なお。

性格が良くなったわけではない。

猫を被るのをやめただけである。


クラリスが、膝から崩れ落ちたフェリクスへ近づいた。

肩をポン。

「仕方ないわね」

「クラリス……?」

「私がフェリクスを支えるわ」

皆が顔を見合わせる。


まあ……。

クラリスなら。


いじめられていたエリーゼを守った。

半年かけて、周囲の男性まで振り向く美女に仕上げた。

最後には背中を押した。

全部。

クラリスである。


…………。

一人が首を傾げた。


そういえば。

食堂でフェリクスの思い人を大声で知らせたの、クラリスだったよな。

ガチャン。

あの日のスプーンの音を、何人かが思い出した。


あれから。

エリーゼへの嫌がらせが始まった。


…………。

一同の胸に、同じ言葉が浮かんだ。

――お前が、一番の悪女じゃん。


❖❖❖❖


その後。

エリーゼは、自分とよく似た薬師科の学生と婚約した。

彼は好きになったその日から、誰が見ても分かるほど真っ直ぐに好意を伝え続けた。

エリーゼには、そちらの方が合っていたらしい。


セシリアは一皮剥けた。

猫を被らなくなった彼女は、なぜか『姐さん』と慕われるようになった。

性格は相変わらずである。

そして、なんと公爵令嬢ロッテの兄と婚約。

まさかのシンデレラストーリーを歩むこととなった。


フェリクスは、しばらくエリーゼへの恋心を諦められなかった。

しかし、やがて『親友の婚約者』という絶妙なポジションへ落ち着いた。

少々不器用。

かなりヘタレ。

そんなフェリクスの世話を焼くことに、クラリスは満足しているらしい。


フェリクスもまた。

クラリスに上手く操縦されながら、それなりに楽しい人生を送ったのである。


クラリスが最初からどこまで考えていたのか。

それを知る者はいない。


ただ一つ。

彼女は昔から――。

とても世話好きな令嬢だった。

――終――

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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