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〜転生した元勇者は世界一のVtuberを目指す〜  作者: ina
第1章 Vtuber準備編
9/26

第8話 運動会①

『これより、運動会を開催致します』


スピーカー越しのアナウンスが、校庭全体に響いた。

ざっ、と一斉に足音が止まり、視線が前に揃う。


開会宣言。

校長挨拶。

選手宣誓。

準備体操。


決まりきった流れだが、今日という日を実感させるには十分だった。


……いや、やっぱり校長挨拶は長い。


壇上で話し続ける校長の声は、途中から内容が頭に入ってこなくなる。

風に揺れる万国旗や、テントの端がぱたぱたと鳴る音のほうが、よほど意識に残った。


隣を見ると、桜はもう限界らしい。

つま先で小さく跳ねそうになったり、腕をぶらぶらさせたりと、明らかに落ち着きがない。


「……あおいちゃん、まだ終わらないのかな?」


精一杯の小声で話しかけてきた。


「校長の話が長いのは世界共通だよ」

「もう少し我慢できる?」


そう言いながら、軽く桜の袖を引く。


「……うん」


口ではそう答えたものの、体は正直だ。

今にも動き出しそうな雰囲気が全身から伝わってくる。


桜だけじゃない。

周りを見渡せば、ほかの一年生も同じようなものだった。

きょろきょろと視線を動かしたり、靴のつま先で地面をこすったり。


(まぁ、無理もないよな)


———


ようやく、校長の話が終わる。


拍手が起こり、校庭の空気が少しだけ軽くなった。


その瞬間を逃さず、桜が小声で話しかけてくる。


「あおいちゃん、ようやく終わったね」

「これで終わり?」


「この後は選手宣誓、その次に準備体操だよ」


「ふへぇ……まだあるのー?」


心底うんざりしたような声だ。


「準備体操が終われば、開会式は終わりだから」

「もう少しだけ頑張って」


「あともう少し!」

「やっと体、動かせる!」


嬉しそうに声を上げたせいで、周囲の視線が一瞬集まる。


「こら、桜。静かに」


注意すると、桜は慌てて口を押さえた。


ちょうどそのタイミングで、選手宣誓が終わる。

高学年の代表が、少し緊張した声で宣誓を終えると、拍手が校庭に広がった。




そして——


『次は準備体操の為、間隔を空けて並んでください』


アナウンスが流れた瞬間、校庭の空気が一気に動いた。


「ほら、桜。動いて」


「やっと動ける!!」


待ちきれなかったと言わんばかりに、桜は一歩前に飛び出す。

その勢いに少し引っ張られつつ、俺も指定された位置へ移動した。


クラスごと、学年ごとに間隔を空けて整列する。

赤、青、黄……色とりどりのジャージが校庭に並び、朝の日差しを受けてやけに眩しく見えた。


『それでは、準備体操を始めます』


スピーカーから流れてきた音楽に合わせて、体操が始まる。


腕を上げて、伸ばして、回す。

普段の体育と同じ動きのはずなのに、今日は妙に気合が入る。


『いち、に、さん、し!』


先生の掛け声が響く。

あちこちから、少しずつズレた声が返ってくるのも、こういう行事らしい。


横を見ると、桜は全力だった。

腕を伸ばすたびに、ジャージの袖がぱたぱたと揺れる。


「あおいちゃん!」

「ちゃんとやらないとケガするよ!」


「……桜、真面目だね」


「だって運動会だもん!」


その一言が、妙に胸に残った。


体操が進むにつれて、体が温まっていくのが分かる。

校庭の緊張感も、少しずつ和らいでいった。


最後の深呼吸を終えると、準備体操は終了した。


『これで開会式を終わります』

『本日の競技は、次の順番で行います』


アナウンスが、今日一日の流れを告げる。


午前中は——

短距離走。

次に、綱引き。

そして、組体操。


その後、待ちに待った昼休憩。


午後は——

大玉転がし。

玉入れ。

最後に、全学年リレー。


どれも、練習してきた競技ばかりだ。


「いよいよだね、あおいちゃん」


桜が小さく、でも嬉しそうに言う。


「……うん」


胸の奥が、少しだけ高鳴る。



校庭では次の競技、短距離走の準備が始まっていた。


競技は1年生→6年生と順番に行っていくため1年生は大抵最初に準備をする。


「あおいちゃん!ほら!わたしたちからだよ!」


「うん...わかった」


桜に手を引かれ待機場所に向かう。

手を引かれたまま、その背中を見ながら歩く。


桜の背中を見て歩いていると、

このまま無事に運動会が終わることを願った。




何故かそう願ってしまった。

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