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〜転生した元勇者は世界一のVtuberを目指す〜  作者: ina
第1章 Vtuber準備編
13/26

第12話 午後の種目と他視点

昼休憩が終わり、

校庭に再び放送が響き渡る。


午後の競技が始まった。


最初は——大玉転がし。

組み分けは、1組・2組・3組の三組。


色分けされた大玉を、

学年ごと、組ごとに力を合わせて転がしていく。


「まえー!」

「おしてー!」


1年生は声だけは立派で、

玉に押し返されながらも必死についていく。


桜も全力で押していて、

途中で足をもつらせるが、すぐに体勢を立て直していた。


結果は——

1位は1組、2位が3組、3位が2組。


「くやしー!」

「でも、たのしかった!」


桜は悔しそうにしながらも、すぐに笑顔に戻る。


次は——玉入れ。


合図と同時に、

無数の玉が宙を舞う。


「えいっ!」

「はいったー!」


桜は勢いよく投げては、

気づけば少しずつ前に出ている。


「桜、でてる」


「えへへ」


結果は接戦。

最後の合図で玉がいくつ入っているか、

先生たちが数え始めるまで分からなかった。


そして——

運動会最後の競技、全学年リレー。


1年生から6年生まで、

各組の代表がバトンをつなぐ。


そして今回は——

桜も、俺も、1年生代表として選ばれていた。


本当は桜だけが1年生代表だったのだが、

俺が午前中の短距離走を本気で走ってしまったため、

急遽、代表入りしたというわけだ。


「ねぇ、あおいちゃん」


「なに?」


「いっしょにリレーだね!」


「……うん」


少しだけ、胸が高鳴る。


スタートの合図と同時に、

校庭の空気が一変する。


バトンが次々とつながれ、

高学年の走りに歓声が大きくなる。


そして、

1年生の番。


桜が先に走り、

全力でバトンを俺に渡す。


「はいっ!」


その声に応えるように、

俺はバトンを受け取った。


短い距離。

だが、確かに全力だった。


すべての学年が走り終え、

最後のアンカーがゴールした瞬間——


校庭は、大きな拍手と歓声に包まれた。


『これをもちまして、すべての競技を終了します』

『10分後に、閉会式を開始いたします』


閉会式では、校長の長い話はなかった。

もしあったら、俺は魔法を使うのも辞さなかっただろう。


閉会式の最後に、各組の得点が発表される。


『総合結果を発表します』

『第1位——1組』

『第2位——2組』

『第3位——3組』


俺たち2組は、惜しくも2位だった。


「おしかったね!」

「でも、すごいよ!」


そんな声があちこちから上がる。


それは隣の桜も同じだった。


「あおいちゃん!2位だって!」


俺は1つ桜に聞きたいことがあった。

「桜、今日楽しかった?」


「うん!!」


俺はそんな元気な返事を聞いて。


「そう、なら良かった」

本心からそう思った。




アナウンスが流れ、

長い一日が、ようやく終わりを迎えた。



初めての運動会は——

楽しくて、騒がしくて、

そして、秘密がバレた。


確かに、忘れられない一日になった。








————桜視点————



教室に入ったとき、

あおいちゃんは少しだけ、遠くにいるみたいだった。


あおいちゃんが話してくれるまで、

さくらは待とうって決めてた。


だって、あおいちゃんは、

ちゃんと話すって言ってくれたから。


それでもこれだけは言いたかった。


「あおいちゃん、くみたいそうのとき……たすけてくれたの、あおいちゃんだよね?」


ほんとは、もうわかってた。


落ちるって思った瞬間、

あたたかくて、やさしいものに包まれた。


こわくなかった。


あれは、ぜったいにあおいちゃんだった。


「……うん」


ちょっとだけ迷った声。


でも、ちゃんと答えてくれた。


それがうれしくて、

さくらはすぐに言った。


「そっか!ありがとう!」


だって、ほんとうにありがとうだったから。



なのに。


あおいちゃんは、

なんだか苦しそうな顔をした。


「なんで気味悪がらないの?」

「なんでおかしいと思わないの?」

「なんで離れようとしないの?」


どうしてあおいちゃんはそんなこと言うの?


さくらには、わからなかった。



そしたら。


あおいちゃん、泣いてた。


ぽろぽろって、

大きななみだが落ちてた。


「あおいちゃん、いたいの?」


さくら、むねがぎゅってなった。


あおいちゃんは、

ずっとひとりでがんばってたのかなって思った。


だから、ぎゅってした。


「あおいちゃんから、ぜったいにはなれないよ!」


ほんとうの気持ち。


ひみつでも、ふしぎなものでも、

そんなのどうでもいい。


あおいちゃんが、

あおいちゃんでいてくれれば、それでいい。


泣いてるあおいちゃんを見て、

さくらは決めた。


この子のそばに、ずっといるって。


だって――


あおいちゃんがいたいなら、

さくらも、いっしょにいたいから。








———両親視点———



午前中の競技で、ちょっとした事故があった。


娘の友達――桜ちゃんが、組体操で足を踏み外して落ちたらしい。


だが幸い怪我はなかった。そのまま競技は続行された。


問題は、むしろその後だ。


桜ちゃんの両親が今にも駆け出しそうになるのを、止めるほうが大変だった。


「桜ー!!」


「大丈夫かー!!怪我してないかー!!」


身を乗り出す蓮さんを、必死に制する。


「蓮さん!怪我は一切なかったそうなので安心してください!」


「だが桜が心に怪我をしたかもしれない!」


「見てください!桜ちゃん、めっちゃ笑顔ですよ!」


「う、うむ……確かに」


腕を組みながらもしょんぼりと座り直す蓮さん。


よく僕のことを親バカだと言うが、正直――大して変わらない気がする。


本当に問題が起きたのは、昼休憩に入ってからだった。


弁当を広げ、葵と桜ちゃんの帰りを待っていた。


だが、想像とは裏腹に。


「パパ、ママ。少し桜と話してくるから待ってて」


そう言った葵の顔は、今まで見たことがないものだった。


今にも壊れそうで、泣き出しそうな――そんな顔。


それは、その場にいた全員が感じ取っていた。


俺が絞り出せた言葉は、それだけだった。


「あ、あぁ、わかった」


「気をつけて」


葵は表情を変えないまま、


「ありがとう」


それだけを言って、桜ちゃんと一緒に校舎へ向かった。


二人の背中が見えなくなると、小さな沈黙が落ちる。


そして。


「ね、ねぇ、パパ」


「今の葵……」


「わかってる」


自分でも驚くくらい、声が低かった。


さっきまでの運動会の喧騒が、まるで遠い。


ママが弁当箱の蓋を、ぎゅっと握りしめる。


「……あんな顔、初めて見た」


「ああ」


即答だった。


そこへ、蓮さんが心配そうに口を開く。


「もしかして……組体操の事故の時、何かあったんじゃ?」


華さんも静かに続けた。


「桜も、さっき真剣な表情してましたし」


蓮さんがさらに踏み込む。


「それにな。桜が落ちる瞬間――落下速度が、少し落ちた気がするんだ」


俺は思わず顔を上げた。


「落下速度……?」


「誰も騒がなかったから気のせいだと思ってた。でも……」


言葉を濁す。


華さんが小さく頷く。


「確かに、大した高さじゃないにしても……かすり傷ひとつないって、やっぱり変じゃないですか?」


蓮さんも強く頷いた。


「それは俺も思った」


静かな緊張が、場を包む。


蓮さんは、ゆっくりと俺とママの顔を見た。


その目は、ふざけていない。


真剣そのものだった。


「もし、本当に――」


一拍、置く。


「もし本当に葵ちゃんが桜を助けてくれたなら……」


深く、息を吸い。


「うちの桜を助けていただいて、ありがとうございます」


そう言って、蓮さんは深く頭を下げた。

華さんも同じように頭を下げる。


思わず立ち上がる。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


慌てて手を振る。


「何も……何も分かってないんです」


声が少し震えていた。


否定したいわけじゃない。


だが、認めるわけにもいかない。


ママも立ち上がり、静かに言う。


「もし、もし仮にそうだったとしても……」


言葉を選ぶ。


「同様に葵も桜ちゃんに沢山助けられています」


蓮さんは顔を上げた。


その目は、少しだけ赤い。


「ありがとう」


小さく笑う。


「だからこそ、言いたかったんです」


その瞬間。


校舎の方から話し声が聞こえた。


四人が同時に振り向く。


そこには――


並んで歩いてくる、葵と桜の姿。


桜は、少し目が赤い。


だが笑っている。


葵も――

確かに笑っていた。


それは先程見た表情とは違い子供らしさがある

——本心からの笑顔だった。



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