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婚約者を妹に奪われた次は、男色公爵と偽装結婚ですか!? ~隠れた溺愛は重すぎるようです~  作者: てんつぶ


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40 和気あいあいとした雰囲気

 ルネがジュールと両想いになった。



 ありえないと思っていたのはルネだけで、フォーレ公爵家ではジュールの片思いは下男まで周知されていたらしい。

 両想いになったあの日、ルネが肩を抱かれてジュールと共に帰宅した際には、メイドたちの拍手で出迎えられてしまった。

 いつになく笑顔を振りまくジュールの表情で皆、察してしまったらしい。

 恥ずかしさと嬉しさに、ルネはどんな顔をしたらいいのか分からなかった。



 リュカにも失礼な勘違いをしたことを何度も謝って、近いうちにリュカの恋人を紹介してもらえることとなった。

 以前ルネがもらったプレゼントにリュカ宛ての物があった話をしたところ、それはリュカの恋人からの贈り物が混じっただけだったと教えてもらった。

 恋人のことを語る彼は大変可愛らしい表情をしていて、なるほど本当に恋をしているリュカはもっと可愛らしかったのだと、ルネは変なところで納得した。




 ジュールはといえば両想い以降、隙あらばルネと同じ時間を過ごすようになった。

 時々リュカが眉を吊り上げて「仕事をしてください」と引き摺って行く。

 長く勘違いしていたのは、お互いを知る時間が少なかったせいだとジュールもルネも反省して、以前よりもおしゃべりをする時間も増えた。

 一緒にいるだけでルネはまだドキドキしてしまう。

 でも幸せだな、と感じるのだ。




 ジャネットにも改めて挨拶に行った。

 ルネの記憶によれば、ジャネットに対してはジュールとリュカの仲を認めて貰おうと、必死で言葉を尽くしていた気がするからだ。

 だがジャネットの中では、ルネとジュールは既に愛し合っているという話になっていたようで、混乱する女性二人の思い違いを、ジュールとリュカが必死に解説する羽目になっていた。


 最後にはジャネットもルネも顔を見合わせて笑いあった。

 笑いすぎて、こんなこともあるのねと涙を浮かべたくらいだ。

 どうなるかとも思ったが、ジャネットは今後もルネとの関係を大事にしていきたいと言ってくれたし、今度ジャネットの友人を集めて刺繍の会を開くことになった。

 もちろん講師はルネである。

 緊張するものの、認めてもらえたのはとても嬉しいことだった。




 そして今日は、ルネの実家であるベルトラン伯爵家にも改めて挨拶に来た。

 少し前に挨拶に来たし、もういいのではないかとルネは言ったが「義父と交流を持つことは悪くないだろう」となぜかジュールは前向きだった。

 小声で「外堀は埋めれるだけ埋めたいしな」と言っていたジュールの声はルネにも聞こえていたが、なんのことか分からずルネは首を傾げて終わった。

 恐る恐る探ったが、結局ルネの父であるベルトラン伯爵には、そもそもジュールが男色だという話は耳に入っていなかったようで安心した。

 与太話を信じたのはルネだけだったようで、恥ずかしさにジュールの横で小さくなる。

 この日は、改めてルネの気持ちがジュールへ向かったこと、挙式の日取りや計画についての具体的な話を進めた。


「なるほど、では持参金代わりにそちらは我が家が負担いたします」

「いえ、結構。ルネに関わることは俺が全て用意したいので、むしろこちらで持たせてもらえますか」


 話の端々にジュールからの愛情がにじみ出ていて、ルネはジュールの隣に座りながら改めて幸せな気持ちになった。

 後ろからリュカが「愛情、おっも……」とげんなりとした様子で呟いていたが。


「そういえばリュンカール公爵夫人から、絹の買い取りについて商談をいただき、まとまりそうです。ジュール様の姉上だとか。素晴らしい機会をいただきありがとうございます」


 父親が深々と頭を下げる。


「それについてはルネですよ。気難しい姉と仲良くなったと聞いています。俺はなにもしていません」

「なんと……ルネ、本当か。ありがとう。公爵夫人がうちの絹に価値を見いだしてくださってな。いい値段で買って貰えることになった。これで今年の養蚕にも力が入るというものだ」


 父の瞳には深い感謝の色が溢れている。

 領地を愛し、領民を愛する父親が、ルネは好きだった。そんな父の役に立てたことを嬉しく思う。


「ジャネット様……お義姉様はとても優しい方なんです。たまたま、私の刺繍に興味を持ってくださって、それで絹生地がいいものだと知ってくださったんですよ」


 もしも絹の出来が悪いものだったらきっと、いくら優しいジャネットだろうと買い取ろうとはしなかっただろう。

 だからルネがしたことは、あくまできっかけにすぎない。全ては父と領民の頑張りによるものだ。


「そうか。本当によい縁をいただいたものだ。なんと礼を言ったらいいか」


 目元を擦る父に、ルネはハンカチを差し出した。

 ジュールも微笑みを浮かべ、ルネ親子の様子を見守っていた。

 前回よりも和気あいあいとした雰囲気に、ルネの表情も自然とほころぶ。

 まさかこんな未来が訪れるとは。

 ジュールも父も同じように感じたのか、気付けば手土産に持ってきたワインを父が勝手に開けてしまった。


「こうして息子と酒を飲みたいと思ってたんですよ」


 窓の外は空が赤く染まり始めている。

 そろそろ帰らなければいけない時間なのだが、ルネは父の言葉になにも言えなくなる。

 父にはずっと心配ばかりかけてきた。

 今までのことを考えると、父の言葉には重い実感が籠もる。


「俺でよければ一緒に飲みましょう。そうだ、ワインに合うチョコレートもある。ルネに渡そうと買っていたんですが……リュカ、荷物から出してきてくれ」


 父の気持ちを察したジュールにも、気を使わせてしまった。

 楽しそうにグラスを傾ける父とジュールの間で、ルネはこの幸せを守りたい、そう強く思ったのだった。









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