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紡ぐ日々  作者: PandaDePon
8/25

07

 『檸檬』にカフェラテを買いに店に入った。

あれ?!誰もいない?「おはようございます!」

すると奥から出てきたのは、なんと海翔そっくりのあの男性だった。

「え!?」驚く私に「何になさいますか?」

私はやっとのことで「ホットラテで。」と答えた。


 奥からいつもの店員が慌てて出てきた。

「すみません、オーナー変わります。

あっ、オーナー、こちらのお客様は毎朝うちでラテを買ってくださってるんですよ。」

彼は初めて私の顔を正面から捉え「ありがとうございます。どうですか?うちの豆。」と尋ねた。

「凄く美味しいです。ここ珈琲は苦みだけでなく豆の甘味や深みを感じます。

なによりスパイシーで、格別です。」

彼は照れくさそうに微かに笑って「ありがとうございます。」と言って、奥に戻っていった。


 「オーナーはいつも表には出ないんですけど、今朝は僕が遅刻しちゃって。」

「食事もオーナーさんが作られているんですか?」

「そうですね、基本的には。勿論スタッフはいますが、メインシェフはオーナーです。

オーナーはこだわりが強くて、何をするにも突き詰めちゃうんですよ。

若い子達は、泣きながらついて行ってます。

納得できない物は提供しないし、一日中仕事のこと考えてるんじゃないかな。」

「だから、こんな美味しい物を提供できるんでしょうね。」

私は、彼の仕事に対する姿勢に好感を覚えてた。


 すると、彼が奥から出てきて包みを渡された。

「これ試作品なんで良かったら食べてください。また感想聞かせてもらえれば。」

受け取った包みからはバターの香り、そして檸檬の爽やかな香りがした。

「ありがとうございます。」



 お昼休みに包みを開けてみると檸檬バターケーキだった。

一口食べると、檸檬の爽やかな香りが鼻を駈け抜けた。

表面がシャリシャリと砂糖でコーティングしてあるが、檸檬果汁が入っているからか甘すぎない。

ケーキの生地にも檸檬の果汁と皮が入っている、フワフワで口の中で溶けていく。

「美味しい!!」思わず声に出していた。

やっぱり檸檬のオーナーは凄いな、デザートもこんなに美味しく作れるのだ。

 

 オーナーは若そうに見えた。

なのに自分でお店を出して、これだけの美味しい物を提供してくれる。

彼の並々ならぬ努力がうかがえた。

いい年した私は、いつまでも海翔に囚われて惰性で日々を過ごしてている。

新たなことにチャレンジすることも、新な人間関係の構築もできない。

誰かを信じることが怖くて何もできない、自分の器の小ささを思い知らされた。


 少しずつで良いんだ、もっと人生を丁寧に生きてみよう、そう思えた。



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