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紡ぐ日々  作者: PandaDePon
3/25

02

 この街にも少しずつ慣れてきて油断していた。

社内での新プロジェクトの決起会、いつもなら断るのに何故かその日は参加してしまった。


 会場は会社の下のカフェ『檸檬』、そう毎朝私が珈琲を買うお店だ。

夜になるとお酒も出してくれるらしい。

今まで数回しかないが、弁当をサボった日にランチを食べた。

味もさることながら、見た目の美しさに感動した。

そんな『檸檬』が会場なら、もう行くしかない。


 金曜ということもあり、店内は混んでいた。

大皿に盛られた料理はどれも盛り付けが美しく、食べるのが勿体無いくらいだ。

一口食べると見ためを上回る美味しさだった。

特にミートローフにモッツアレラが入っていたのは絶品で、こっそりお代わりしてしまった。

 また、珍しい国産のジンやウオッカを使ったカクテルも絶品で、ついつい飲み過ぎてしまった。

自分で言うのも何だが、アルコールにはめっぽう強い。しかし混んでいる店内は別だ。

香水の匂いや化粧品の匂い、柔軟剤や整髪剤の匂い、それにアルコールと食べ物の匂い。

そうなるともうカオスだ。いつものなら平気なのに酔ってしまった。



 酔いを醒まそうと、外に出た。雨の匂いが鼻を掠める、ああ降りだしたんだ。

朝のニュースで今夜は雨って言ってたな。

ふと、女性の話声

「分かってるって、早く帰るから。アマネは心配性なんだよ。はいはい、わかりました!!」

女性は携帯を乱暴にカバンにつっ込んだ。

「なに、彼氏?相変わらずの心配性?愛されてるじゃん。」

「いやいや、やり過ぎでしょ、窮屈だよ。しかもあれは愛では無い。」

そんな女性達のやり取りを聞きながらふと思った。

それは愛いではなのか?であれば独占欲なのか?


「まぁでも彼氏の心配は当たってるよね、だってこれ合コンだしね。」

「だって私を優先しないアマネが悪いし。愛しているなら私が最優先でしょ。

なのにいつも仕事仕事ってさ。付き合ったらもっと私を見てくれると思ったのに。

これじゃぁ付き合う前と変わんない、心配性の親が増えただけよ。」

「確かに、カレシって感じより、父親って感じ。」「でしょ~」

やっぱり『愛』は分からない。『最優先にしてくれない』そう思うあなたは彼を愛していますか?


 「おい、おーい、伊藤、大丈夫か?」自分が呼ばれていることに気がついて、慌てて振り返る。

高橋マネージャーだ、急に振り返ったから、バランスを崩してふらついてしまった。

咄嗟にマネージャーに肩を支えられた。

私は平静を装いつつマネージャーと距離を取った、海翔と別れてから男性が少し苦手になっている。

「はい、大丈夫です、ちょうど戻るとこでした。」

「無理すんな、タクシー拾おうか?」

「いえ、自分の足で帰れます。」

「じゃぁ駅まで。」

「いえいえ、大丈夫です。皆さんマネージャーをお待ちですよ。」

マネージャーは、クスっと笑って小さな声で「相変わらずの隙無しだな。」とつぶやいた。

私は敢えて聞こえない振りをした。

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