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6話:夜会での告白

6話になりました。

ついにあのキャラが○○します!

私にとって1番好きな話です。

 3日後の夜、王立学園の夜会の時間がやってきた。煌びやかな装飾が施された大広間には多くの貴族や名家の子女などが集まる。私とリリアもその1人だ。皆、友達や一緒に踊る相手を待っているのだろう。


「アリシア〜!どうしよう……ちゃんと踊れるかな」

「大丈夫よ。私とたくさん練習したでしょ?それに、一緒に買ったドレスもとっても似合ってるわ。ほら、深呼吸!」

「うん、ありがとう。アリシア」


 リリアは深呼吸をして、顔を上げる。その瞬間、扉が開いてまた何人かの男女が会場へ入ってきた。その中にいたイーリスを見つけて、リリアは笑顔を取り戻す。

 イーリスもこちらに気づき、柔らかい笑顔で近づいてきた。


「リリア、頑張れ!」


 そう小声で言うと、彼女も安心したような表情を見せてくれた。


「リリア、来てくれてありがとう。一緒に踊ってくれるかい?」

「はい、もちろん!」


 その言葉とともにイーリスは手を差し出して、リリアと共に中央へと向かった。ちょうど一曲目が始まり、彼らは優雅に踊り始めた。リリアの緊張もだんだん和らぎ、イーリスと共に微笑み合う姿が印象的だった。

 そしてセレーナとエレナも、婚約者と一緒に踊っている。


(あぁ……みんな、お似合いだわ)


 私は中央を離れて、たくさんの食べ物、スイーツが並ぶテーブルへと向かった。


(……こうなったらやけ食いよ!)


 ◇


 私はスイーツが並ぶテーブルに近づき、色とりどりのケーキやタルトを見つめた。どれも美味しそうで、選ぶのが大変なくらいだ。

 私は最初にベリータルトを皿にとった。その時、後ろに誰かがいるのに気づき、場所を変わろうと後ろを見たら、そこにいたのはアランだった。


「アラン、あなたもここに来たのね」

「アリシア!君もここに避難かい?」


 そう言いながらアランは自分の皿にチーズケーキをのせた。


「避難?」

「人が多すぎる所は少し苦手でね。こうやってたくさん食べる方が楽しいし」

「ああ、まぁ私もそんなところかしら」


 人が多い所苦手なんだ、と私は少し意外に思った。


「でも、あなたは踊る方が得意そうに見えるけどね」

「踊るのと人付き合いは別だよ。そっちは君の方が得意そうだね。佳絶の令嬢さん?」


 アランが冗談めかして言うと、私は少しむっとして言い返した。


「またその呼び方。あんまり好きじゃないのよね」

「悪い悪い、でも君の存在感は本物だと思うよ?あっちの人たちも、君を誘いたがってるんじゃないかな?」


 アランの言葉通りに視線をやると、確かに何人かがこちらをちらちらと見ている。だけど、今はそんな気分じゃなかった。


「今日はリリアのために頑張った夜会だもの。私は踊らなくてもいいのよ」

「そっか、それならここでスイーツを分け合うくらいなら許されるかな?」


 アランはそう言って私の皿から勝手にタルトを取って口に運んだ。


「ちょっとそれ、私のよ!」

「大丈夫、俺のも一個わけるから」


 彼は自分のチーズケーキを一口分ケーキにのせて私に差し出した。そのふざけた様子に私は笑いを堪えきれなかった。


「仕方ないわね、じゃあいただくわ」


 一口食べると、口の中に甘さがいっぱい広がった。アランも満足そうに笑みを浮かべる。


(不思議な人ね……だけどこうやって気を使わずにいられるのは悪くないかも)


「ふふ……アリシア〜ずいぶん楽しそうだね?」


 声の主を見ると、そこにいたのはダンス終わりのリリアとイーリスだった。


「えっ!?リリア、それにイーリスも……」

「悪い、アリシアとはあまり話せてなかったから探してたんだが、……その、アリシア、アランも、邪魔したか?」


 イーリスは少し気まずそうに私とアランを見つめながら言葉を探している。


「……邪魔なんかじゃないわ。それにほら、スイーツがこんなにあるんだから、リリアもイーリスと食べたら?」

「ほんと?何食べようかな〜」

「リリア、あっちのシュークリームが美味しかったよ」


 2人のやり取りが甘い雰囲気を漂わせる中、私は自分の中で苦い感情を覚える。けれどそれを勘付かれないように笑顔を浮かべた。

 一方アランはその様子を静かに見ているようだ。ふと、彼の方を見る。ちょうど目が合い、アランは少し声をおとして話しかけてきた。


「アリシア、ここにいるの少し辛いんじゃない?」


 その言葉に、一瞬心臓が止まる。彼は何かを察したのか、それともただの勘なのか、私にはわからなかった。


「……そんなこと、ないわよ。リリアが楽しそうにしてるんだし、私も嬉しいに決まってるじゃない」


 私はなんでもないふりをして笑って見せた。アランはその笑顔をじっと見つめて、無言になる。


「……私少し食べすぎちゃったみたい。ちょっと外の空気吸ってくるわね」

「そうなの?行ってらっしゃいアリシア」


 そんなことを言って私はその場を離れた。確かに辛かったが、アランの言葉で認めざるを得なかった。


 ◇


「はぁ……」


 大広間の賑やかな音楽を背に、私はベランダへ出た。ひんやりとした夜風が頬を撫で少しだけ息苦しかった胸が軽くなる。


 ベランダには誰もおらず、静寂が広がっている。月明かりが外の木々や花を照らし、ぼんやりと浮かび上がる。

 私は深く息を吸い、夜空を見上げた。


(……こういうのを()()()()()()って言うんだろうな。結果は分かってた。その上でリリアを応援していたんだから)


 目の端に小さな涙が滲んだ。号泣とまではいかないが、今日くらい完璧な「佳絶の令嬢」も泣いたって、誰も責めやしないだろう。


 ふとベランダの扉を開ける音が聞こえ、私は涙を拭う。振り返るとそこにはアランが立っていた。彼は私の前まで歩いてくると、月明かりの中で私の顔を見つめた。


「アラン、どうしてここに?」

「……いや、かわいい令嬢を()()()に、ね」

「かわっ……お誘いっ!?」


 私が彼の言葉に戸惑っていると、アランは私の前に手を差し出した。


「アリシア、最後の一曲、俺と一緒に踊らない?」

「えっ!?……っ……えぇ?」


「……無言は肯定って事でいいよね!じゃあ行こう!」


 そう言ってアランは私の手を引っ張って中央へと向かう。


「ちょっ……待って!準備が──」

「準備なんて必要ないさ。君はもう十分、誰よりも綺麗なんだから」


 その言葉に胸が高鳴る。お世辞だと分かっていても、彼の言葉には嘘を感じない。

 アランの手に引かれるまま私たちは中央へとたどり着いた。その瞬間、最後の曲がながれる。


(こんな大勢の前で踊るなんて恥ずかしいけれど……)


「ほらぁ、もたもたしてると足引っかけちゃうよ?」


 そうやってアランが挑発的な笑みを浮かべて言う。


「……佳絶の令嬢が失敗をするわけにはいかないものね。最後なんだから、精一杯踊るわよ」


 私が微笑むと彼は満足そうにうなずく。そして私は、アランにリードされながら音楽のリズムに合わせて踊り始めた。


「どう?俺のダンス。意外と上手いでしょ?」

「……まぁ、悪くはないんじゃない?」


 彼の問いかけに私は少し意地悪に答えると、アランはくすっと笑った。涙はアランのおかげでいつのまにか引っ込んでしまったようだ。


「ほんとアリシアって素直じゃないなぁ。まぁ、そんな君だからいいんだけど」


 彼の言葉に私は目を伏せた。この場で踊るとは思っていなかったけれど、不思議と、悪い気分じゃなかった。


「ところで……相談なんだけど、」


 と、踊りながらアランが話し始める。


「アリシア、俺と()()しない?」

「……っ!?えっ!?」


 私が動揺してアランの足を思いっきり踏んでしまったのは、

 また別のお話。

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