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2話:あなたは誰?

 リリアが夜会用の準備を迎えた翌日、アリシアとリリアは王立学園の教室にいた。昼下がりの穏やかな日差しの中、リリアの緊張は最高潮に達していた。


「大丈夫かな、緊張してきた…」

「絶対大丈夫よ!メイクもしたし、髪型だってリリアにとっても似合っているわ」


 リリアの肩に手を添えながら落ち着かせる。


「今ならイーリスの友達と2人きりだから行ってらっしゃい」


 リリアは緊張で震えながらも小さな声で「行ってくるね」と言い残し、一歩ずつイーリスの方へと歩いていった。


「イ、イーリス、今大丈夫?」

「リリア!久しぶりだね。どうしたんだい?」


 リリアはアリシアに言われたように深呼吸をして、言葉を紡いだ。


「あの、来週の夜会、私と一緒に行ってくれませんか…!」


 その瞬間、イーリスは驚いた顔をしたが、一気に笑顔になり、頷いた。


「もちろんだよ!誘ってくれてありがとう。本当は僕も誘おうと思っていたんだ」

「ほ、本当…!ありがとう」


 2人だけの世界が広がっている。私はその場から離れて、中庭のベンチへと向かった。


 ◇


(はぁ、分かってはいたけど、見るの辛いな…)


 そう思いながらベンチへ座ろうとすると、ほぼ同時に1人の男の人が座ろうとしていた。


「おっと、ごめんなさい」

「いえ、こちらこそ。私、場所変わりますね」


 私が席を移動しようとした時、相手が声をかけてきた。


「…あれ、さっきの女子と一緒にいた子じゃん」


 顔を上げてよく見ると、どこか見覚えがある。

先ほどまでイーリスの隣にいた男の人だ。


「あなたは…イーリスと一緒にいた人ですよね」

「うん。さすがに気まずくて逃げてきちゃった」


 そう言って「ははは」と笑った。空いた口から見える八重歯は彼のチャームポイントだと思う。


「同い年でしょ?敬語じゃなくていいし、場所も変えなくていいから」

「…そうね。ありがとう」


 私が座ると、彼はさらに話を続けようとした。


「ところで、君、アリシアさんでしょ?」

「えっ、なんで私の名前知ってるの?」


 私の名前を自然と出したから、少し驚いた。なんで彼は私の名前を知っているのだろう。


「だって有名だもん。「佳絶の令嬢(かぜつのれいじょう)」さん?」

「…驚いたわ、確かにそう呼ばれているのは知っているけれど、面と向かって言われたことは初めてよ」


 佳絶の令嬢。確かに噂で呼ばれているのは知っていた。だけど、面と向かって言うのは少し失礼ではないのだろうか?


「…ところで、あなたの名前は?自分から聞いておいて名のらないのは失礼じゃないかしら?」

「確かにそうだな。俺の名前は、アラン・レオリス。」


 アラン・レオリス…噂で聞いたことがある。

若き才子(わかきさいし)」と呼ばれるほどの実力者。


 確か家が有名な商業家でもあって、幼い頃から商業に触れて、実際に交渉して大きな売り上げを残したとか。今は家のやり方に縛られずに、独自の方法で機転を効かせて売り上げているとか……。


 話したことはないが、社交界で何度か面識がある。そして、私はさっきの皮肉もこめて同じように彼に返した。


「アラン・レオリス…あなたこそ有名じゃない。「()()()()」さん?」

「…っはは!そんなふうに面と向かって言われたの、初めてだよ。なんか違和感あるなぁ」

「私だって初めてに決まってるじゃない。あなたがはじめに言ったんだからね」


 そう言うと、彼は苦笑いをしながらこう返した。


「確かに、それはそうだな。でも、俺はただ周りが勝手に噂しているだけだから。」

「ふぅん…ずいぶん自信があるようね」

「まぁ、否定する理由もないからね」


「でも…君みたいな面白い人、初めてあったよ」

「面白い…?」

「うん。だって普通の子だったら、『すごい人ですね』とか、『噂通りの方ですね』とか言って近づいてくるだろう?でも君は…なんというか少し挑発的だ。そういう反応の人ってなかなかいないんだよ」

「挑発的…」


 そう呟くと、彼は「ああ」と言って少し訂正する。


「気分を悪くしたらごめん。なんていうか、悪い意味じゃなくて噂通りのまじめちゃんって感じじゃなかったから、つい」


 彼はにこっと笑って視線を空の方へ向けた。


「『つい』ってなによ。…でも、私もあなたが噂通りのまじめな人じゃなさそうってことは分かったわ」


 その言葉を聞いて、彼は楽しそうに笑う。


「ははっ!君、想像以上の性格してるね。でも、対等に話せる女子っていないから、なんか新鮮だなぁ」

「対等に?」

「ん?ああ、だって俺に寄ってくる女子っていえば、噂を聞いてだとか、家が有名だからって感じてくるから、ちゃんと話せる子っていないんだよ」

「へぇ、あなたも中々大変なのね」


 そう言って、私は少し背伸びをする。彼と話して、少し落ち着いたというか、リラックスができたみたいだ。


「じゃあ、私そろそろ行かなくちゃ。昼休みも終わるころだろうし」

「ん、俺もそうしようかな」


 そう言って私は立ち上がり、校舎へ戻ろうとすると後ろから彼が「ねぇ、」と言って呼び止めた。


「なにかしら?」

「アリシア、って呼んでもいい?」

「…好きにしたら。それじゃあ、私先に行くから。またね()()()


 顔が熱くなっていく気がする。でも、それと同時にさっきの気持ちを少し忘れる事ができて落ち着いた。



「なかなか手強そうだけど、やっぱりかわいいなぁ…」


 アランの呟きは誰にも聞かれることは無いまま、昼休みは終わった。

ついに「若き才子」様の登場です!

2人の冗談を言いあえるような関係は見ていて微笑ましいですよね

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