10話:観察開始!
記念すべき10話目になります。
アリシアは観察に成功するのでしょうか……?
レティアに言われた、観察をしてみる。と言う案を元に、アランの事をもっと知ることにした。
「あ、アリシアおはよう!」
「あらセレーナ。おはよう」
「もう、昨日のこと聞きたかったのにすぐ行っちゃうんだから!」
セレーナは笑って話しかける。私も軽く微笑みながら昨日の事を思い返していた。お兄様とセシル、それとレティアたちにもお説教をして──
「昨日のことって……何かあったかしら?」
「もう、レオリス様のことよ。昨日だけじゃなくて、夜会でダンスも踊ったんでしょ?それに昼も呼び出されたって……恋愛に疎かったアリシアが男の人と2人きりになるなんて、私の中では重大ニュースなのよ!」
私は少し目を細め、心の中でため息をついた。
恋愛小説オタクのセレーナに捕まると、お兄様たちと同じくらい厄介だ。……むしろセレーナにも相談をして、アランの観察を手伝ってもらおうか?
いや、きっとさらに面倒なことになる気がするわ……
「たまたま誘われたから言っただけよ。別に特別な関係ではないわ」
「ふぅーん?そうなのね。でも、私にできることがあったらなんでも言ってね!」
「ええ、ありがとう」
セレーナには悪いが、彼女の好奇心は止まる事を知らない。きっと巻き込まれると収拾がつかなくなってしまうだろう。
「じゃあ、また後でね」
セレーナは楽しそうに手を振りながら去っていった。
◇
その日の午後、私はアランの観察をしに彼を探した。
教室にはいなかったわね……どこにいるのかしら?
廊下を歩いて考えていると、アランといつも話している中の2人とすれ違った。闇雲に探しても見つからないだろうし、聞いてみようか。
「あの……ちょっといいかしら?」
「はい?……っ、!?あ、アリシアさん?」
なぜかとても驚いている様子だったが、私は気にせず話しかけた。
「アランを探しているんだけど、どこにいるか知らないかしら?」
「アランを……ですか?」
「ええ、少し話したい事があって」
私は微笑みながら、言葉を重ねた。話したいことがある、というのは少し嘘になってしまい、申し訳なく思う。
「えっ……と、アランなら中庭にいると思います。最近よくいるから」
もう1人がやっと答えると、私は軽く頷いて感謝を述べた。
「ありがとう、助かったわ」
「は、はい」
2人はどこか緊張している様子で頭を下げながら帰っていった。その様子を不思議に思いながらも、私は中庭へと向かった。
◇
中庭に着くと、アランがベンチに腰掛けて本を読んでいるのが見えた。ふだんの冗談を言って賑やかな彼とは違い、静かな雰囲気を漂わせている。
私はその様子を少し離れた木の後ろから観察していた。
……なんだか少し意外。こういう一面も持っているのね
するとアランはおもむろに本から顔をあげて中庭を見渡した。
「……アリシア?」
アランの声が静かな雰囲気の中で響いた。私は慌てて木の後ろから顔を出して軽く手を振った。
「き、奇遇ね」
「そこで何してたの?」
「ええっと、ちょっと散歩をしようと思って」
私がそう答えるとアランは不思議そうな顔をした。
「ところで、アランは何を読んでいたの?」
「俺?俺はね……これ読んでたんだ」
アランが見せたのは経営に関する本だった。そういえば、彼の家は有名な商会だったっけ。
「ビジネス書……確か、アランも家の経営手伝っているのよね?」
「うん。最近やり方少し変えてみようと思ってて。たまにはこう言うの読むのもいいかなぁって」
「さすが、若き才子様ね?」
普段、彼が冗談で私の事を「佳絶の令嬢」と呼ぶように、私も笑みを浮かべながら言った。
「もう、それはやめてくれよ!面と向かって言われると、なんか恥ずかしいし」
「あら、あなたもいつも私の事を佳絶の令嬢って呼んでるじゃない。これはいつものお返しよ」
私が笑いながら言うと、アランは少し頬を膨らませた。
「それはそうだけどさ。なんかこう、アリシアに言われると変な感じがするんだ……」
「あら、それは私もよ」
「あ、そうだ」
急にアランが顔をあげていたずらっぽい笑みを浮かべた。
「じゃあ、これからはお互いにその呼び名は禁止。どう?」
「急にどうしたの?」
「だってさ、俺が『佳絶の令嬢』って呼ぶと、アリシアがいっつも目で刺してくるじゃん。それなら、お互い平等ってことで」
「ふぅーん?まあ、それもいいかもね」
「本当?じゃあ、決まり!これからはちゃんと俺の名前で呼んでね?」
「ふふ、分かったわよ」
その後も5分ほど話を続けたが、やっぱりアランの新たな一面は中々見えなかった。
……でも、こうやって少しずつ知ればいいわよね




