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1-17

 武は口を鬼姫から離し、微笑んでいる。

「ごめん……俺には……」

(今も、俺の中にはいつもあいつがいるんだ……)


「はっ! 申し訳ありません!」

 鬼姫は慌てて頭を下げてから、武から距離を取った。けれど、頬を染めながら、武に「お慕いしております」と言葉を残し、修練の間から走り去ってしまった。


 サンサンとした太陽がまぶしい庭で、鬼姫は一人。頭から湯気がでそうなほどの熱を顔にだして佇んでいた。

「はあっ……武様は……地姫の言う通りの方だった」

 実は、地姫は鬼姫だけに武がいずれ必ず世界を救うであろうと教えていたのである。武の前世はやはりだ。だが、証明は誰もできないのだ。



 一方、鳳翼学園では不思議なことが起こっていた。


 それと同時に麻生と卓登が何やら動きだしたようだ。

 いつの間にか雨が止んでいるのだ。

 雨が止み、五体の龍が空を見上げている。

 鳳翼学園の二階の宮本博士と田嶋の前に一人の謎の巫女が現れていた。


「やったー! 雨が止んでくれた! 今よ!」

「そんなの無理だよー!」

 麻生は不思議と雨が止んでいるのを確認してから、廊下を一直線に走り出す。

 当然、学園の二階に集まっていた五体の龍が麻生に気が付いた。大口を開け、廊下の窓ガラスを割って麻生に食らいついてきた。

 けれども、本気を出した麻生の足はなんと湯築と同じくらいの速さだった。

 なんなく麻生は逃げおおせ、廊下の窓から教室側へと突っ込んだ五体の龍の顎に、卓登があらかじめ廊下の教室側に用意した四本の足を鋭利に削った椅子や机などをロープで一斉に横に倒した。

 グサっという音と共に、五体の龍がアギト……そう、顎に椅子や机の足が深く突き刺さった。

血を流した龍が、たまらずそれぞれ逃げ帰って行ったようだ。

 麻生たちから目を離し、学園の外を見てみると、五体の龍が渦潮に引き返していった。

 もう弱点も知られ、龍の脅威も雨の脅威も何もない。

 武はこれで、安心して旅に出られるだろう。

 でも、何故。雨が止むことが起きたのだろうか?

 あの巫女は一体?


 おお、おおよそだがわかった。麻生は武があの日曜日に龍の顎に正拳突きをのめり込ませて傷を負わせていたので、顎が弱点だと知ったのだろう。そして、恐らく雨が止んだのは、あの巫女の謎の力であろう。


 

 一方。存在しないはずの神社では、

「高取。今までどんな凄い修行をしていたんだ?」

 あれほどの対抗意識を辺りにばらまいていた高取に対して、武はどうしても聞きたかったのだろう。

「え? ただ座っているだけだった」


 あっけらかんと言う高取の言葉に、武は目を丸くした。

 高取と武は試練である稽古を終えたという感慨深い気持ちを持って話しているのだろう。

「後は、弓の修行だったわ」

「う……それは……大変だったな。確かに特殊な修行だったんだな」


 ここは存在しないはずの神社の海に面した紅い橋の上である。湯築も修練の間で蓮姫を驚かせるほどの腕を見せて、皆無事に竜宮城を目指すことになった。

 武たちの目の前の大海原には、山の方の空から大船が幾つもザブンザブンと着水してきた。

「どの船に私たちは乗るのかしら?」

 武の隣の湯築は髪をかき上げながら誰にともなく聞いていた。

「ああ、あの船よ」

 高取が素っ気なく不思議な力を使って、数多の船の中から一隻の船を指差した。

「高取さん。鬼姫さんたちも一緒の船に乗るのかしら?」

「ええ、そうよ。私たちの船だけ最強ね」

 武と高取。そして、湯築はサンサンと降る日差しの中で、しばらくは見ることができない太陽を見つめていた。

「ああ、そうかもな……」

(この先には、今まで見ることができなかった世界が広がっているんだ)


 そういえば、あの三人組はどの船に乗るのだろう?


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