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ここは、修練の間。
社の一端に位置した。周囲を灯籠で灯された薄暗い間である。広い間で、そこに蓮姫が佇んでいた。湯築が畳の上を歩いていると、蓮姫は頷いた。
「いい足ね」
どっしりとした重い空気の間であった。ところどころから身を圧してくる生暖かい空気に、湯築は自然と額に汗がにじみ出てきたようである。
「さあ、この槍を持って」
「ととっ、重いわ……」
蓮姫の渡した一際長い槍に、湯築はバランスを失い困った顔をした。体中で持つかのようである。
「足に重点を置くんじゃなくて、腰に置いて、そして呼吸を整える」
蓮姫はもう一本の槍を軽々携えたようだ。この修練の間の壁には、様々な武器が掛けてあった。湯築は槍の重さでまだグラついているようだ。 ここから見ても重そうな槍だった。
「知ってる? 私は海神を祀る巫女。あなたは私と一緒に海や川。水の上を歩けるようになるの」
湯築は目をオーバーに回し、
「この槍を持って?」
「そうよ。後、三カ月間で習得してもらうわ。できないことは、教えないから。ハイッ!」
突然、蓮姫は槍を湯築の目前で、薙ぎ払った。
すると、風圧で湯築の後ろにある。かなり離れた灯籠の火が全て消えた。しかし、瞬く間に、灯籠には再び火が灯った。不思議な間である。
湯築はいきなりのことに驚いて、腰を抜かしたようだ。
「あ、危ないんじゃなくて!?」
「これくらいができないと、こっちも困るのよ」
蓮姫は一呼吸置いて、槍を振り回して、構えた。
湯築は負けじと、その構えを真似たようだ。
湯築は何やら蓮姫との稽古を必死にしている。恐らくは、武に負担を掛けたくないのだろう。
この修練の間には、時間割というか。入る番がある。最初は蓮姫と湯築の番だ。
一方。
武は湯築の番が終わって、高取の不思議な修練のあいだに、布団から起き出して空手の構えを片っ端からしている。
一つの構えから腰を落として正拳を打ちだすと、三人組が歓声を上げた。
鬼姫はこっくりと頷き。
「筋はとてもよいです。私との番には是非お手合わせをお願いしますね」
頭を深く下げる鬼姫に武は急に軽く震えた。
「ああ。けど、どうなるかな? 少し離れているけど、鬼姫さんって、隙がないどころか……なんていうか……。すでに俺が威圧されているみたいなんだ。そのせいで、型に移行する動きが鈍くなっているみたいだ」
(鬼姫さんは、まるで未知の力を持ってそうだよ)
確かに鬼神を祀る巫女の鬼姫からは、何かの気圧されるとてつもない空気のようなものが発せられている。これからの修練は、私にとっては楽しいものだ。
そんな空気のようなものを発している鬼姫は、平然とまたこっくりと頷いたようで、
「そこまでわかるのなら大丈夫です。きっと、成長は早いでしょう。あ、まだ少し時間があります。お茶を持ってまいります」
「あ、お構いなく……」
武は律儀に頭を下げたのであった。




