事務所の屋根裏から聞こえる物音は鼠か猫かそれとも同僚の高木さんと野田さんの二人なのか。
この作品は「なろうラジオ大賞4」の参加作品です。
千文字と超短いのはルールなのですごめんなさい(><)ノ
ふと事務所内を見渡してみると、残っていた筈の女性陣二人、高木さんと野田さんの姿がない。どうやら今年最後に事務所の鍵を閉めるのは私の役目になったようだ。
「どうせなら声を掛けてくれたらよいのに」
まあ、私がイケメンでないのが原因だろう。時計を確認すると深夜二時を回ろうかというところだった。――その時だ。
とととと……
何かが私の頭上を走り抜ける音がした。
「いつもの鼠かな」
この事務所は都心からほんの少し外れにある二階建ての普通の一戸建てをほとんどそのまま改装もせずに使っているものだ。今、私は二階の一室にいるので、この音は屋根裏から聞こえているということを意味する。このような小動物が走る音は時々あるので、この時私はそれほど気にはならなかった。
とたとたとた……
次は聞きなれない足音だった。
「……猫かな」
いつも聞こえる足音より少し大きな音だったので、私は鼠を追いかける猫だと見当してみた。
作業への集中が途切れてしまったので、気分転換をしようと下の階に移動し冷蔵庫に冷やしてあった缶コーヒーを取り出し、プルタブに指をかける。事務所内には一人なのだから不要なのだが、この時私は無意識にスマホと財布に鍵を持っていた。
「……んん?」
今見えている視界のどこかに何か違和感を感じる。プルタブにかけた指はそのままだ。――この違和感の正体は何だ? 何がどうしてそんなに気になるのか不明だが、この時の私はこの小さな違和感をどうしても見過ごせなかった。そして……気付いた。
「あっ……」
女性陣二人のカバンがまだ残っていることに。
あの二人はまだ帰宅していなかったのか。夜食でも買いに行ったのだろうか。気になって玄関まで見に行くと靴が二人ともそのまま残されている。――いや、高木さんの靴は左足だけだ。
「二人とも事務所の中にまだ……?」
背筋が寒くなるのを感じた。
あと、なぜ高木さんの靴は片っぽだけなんだろう。
――とその時。
どたどたん! どたどたどたん!
ええっ、何? 屋根裏の方? 激しい足音というか、何かがのたうつような音がする。
がただだん!!!
屋根裏から何か激しく落ちた?
ばたん! がちゃん ばたん!!
続けて二階の方から激しくドアを開け閉めする音がする。
「あっ」
とっ、たっ、てん てん
階段の上から落ちてきたのは、さっき見つからなかった高木さんの右足の靴だった。
得体の知れない恐怖に、私は事務所から逃げ出そうと思った。
「えっ」
玄関の鍵が、開かない……
終
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