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08話

2022年11月11日、一部文章を修正しました。

2023年4月21日、タイトル修正

 帝都を出てから三日目の夕方、終点のシュトレーメの東街に到着した。

「あぁリルツァ、エルツァおかえりなさい」

 エルツァによく似た女性が出迎えてくれた、きっと母親だろう。

「お母さんただいま……、あのね、ごめんね」

 リルツァが言う。

 母親は二人を抱きしめて

「いいのよ。それよりお疲れ様、お父様がお待ちだからはやく帰りましょう」

と言った。

「はーい、はやく帰ろうっか」

とエルツァが言うと、リルツァは僕を見て

「アンジェさんばいばい」

と言って手を振ってくれた。

 それを見てエルツァも手を振る。

「また機会があればね」

 僕はそれに応えると、母親はちらりと見ると会釈し去っていった。


 ファルスから貰ったメモを見ると中街に学校があり、学院長に手紙を渡すよう指示があった。

 中街の修身学院がどこにあるかわからないの。

 乗合馬車乗場で学院方面行きを訊いたら、その循環馬車に乗るよう指示されたので乗る。


 東街よりトラペ川を渡り中街に入る。

 なおトラペ川が本流でトロボ川が支流だ、合流して北部へと流れてゆく。

 街並みは東街も中街に大きな違いはなく、通り沿いはおおむね三階建てのレンガ造りだった。

「次は中街二番街、ザントバンク修身学院前ですぜぇ、お学士様!」

 案内してくれた御者に礼を言い、運賃を手渡して馬車を降りる。

 学校前に停車場表示板があるがこう書かれていた。

『シュルードリヒ修身学院前』

 あららひどい悪戯だな。

 ザントバンクの文字を消してシュルードリヒ(残念な)とは。



 校門にいた衛士に事情を話し、手紙を託すと走って学校へ向かっていった。

 門前で歴史がありそうな校舎を眺める。

 あ、軒下にコウモリが居た。

 もう一人の衛士に

「ここら辺って何かあります?」

と聞いたところ

「んー、その先は一番街だから領主館と大店の商館ばかりだよ。三番街まで行けば庶民的な店が多いな。四番街まで行くと夜市が立つから暑苦しい夜に最適だ。五番街は立飲屋が多いぞ」

と親切に教えてくれた。

「トラペ川とトロボ川の合流地点は見れる?」

と訊くと

「あそこらへんはガチのスラムだ、絶対に近づかんほうがいい」

と警告された。


 先ほど手紙を託した衛士が戻ってきた。

「アンジェ様、学院長がお会いになられるそうなので一緒にどうぞ」

と、言われ学院に足を踏み入れた。


「ということは、アンジェ様はここで教鞭をとられるんですか?」

と衛士が訊いたので僕はその予定ですよと答えると、

「辞めないでくださいね」

と言われた、なんか不安になるなあ。



「学院長、アンジェ様をお連れしました」

 ノックして声をかける衛士、すぐに「どうぞお入りください」と声が聞こえた。

「失礼します」

 僕はドアを押し開けると初老の男性が目に飛び込んできた。

 しかし僕の顔を見て戸惑っているようだ。

「君がアンジェ……さんだよね?」

「えぇ、ファルス教授より紹介されて参りましたアンジェ・リ・カマルカです」

「一つ聞いていい?」

「えぇ」

「女性……だよね?」

「男性です」

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