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05話

2022年11月11日、一部文章を修正しました。

2023年4月21日、タイトル修正

 修身学院について簡単に説明をする。


 この帝国の学制令上、中等教育に相当する。

 元々は礼節学校と呼ばれており、古今位置づけとすれば「淑女育成」が主の女子校だ。

 教育に執心だった始祖様は貴族や富豪、もしくは商家で奉公させる行儀見習いについて官吏に諮問した際に、

『賃金はしっかり支払われてるのか? 休暇はあるのか? 労働基準令は守られてるか? 虐待などないか? まさか性奴隷になってないだろうな?』

と思い至ったらしく、主要都市や地方領主に礼節学院の創立を命じたそうだ。

 今では修身学院と呼ばれているが、年寄りで時々礼節学校と呼ぶ人もいる。


 私学教育だが学制令できちんカリキュラムに定めがあり、それに則った教育をすれば帝国から補助金が出る。

 そのため私学なのに学費は公教育の中等学院と殆ど変わらない。

 ちなみに学制令上で定められたカリキュラムは一般教養、周辺諸国の公用語であるストリバ語、ダンスや言葉遣い、マナーと言った淑女育成がなされるため、成績優秀者は良い就職先、場合によっては王宮が紹介されるのだ。

 初等教育が四年単位制のため、順調に進級すれば十二歳で入学し、五年制だ。

 とはいえこの国での婚姻下限齢は男女とも十五歳のため結婚したら退学となる。

 もし進学を希望するなら「女子師範学校」があるが、説明はここでは割愛する。




「で、アンジェリカは何を教えるんだ?」

 リーナが訊く。


「あぁ、魔法力学とストリバ語だ、あと剣闘術も」

 モックテール(ノンアル)を飲みつつ答えると、

「ま、まほうりきがく……?」

 リーナが明後日の方向を見て考える仕草をする。


「理論法力や物理法力とかだぞー、リーナ様ぁ!」

 誰かが言う。

 リーナは物理系学問が苦手で、いつも赤点すれすれだったことを思い出す。

「そーそー、理論法力っていまだに全然わかんないわー!」

「理論法力は物理学と魔法力学が合わさった学問だよ。十年ほど前まで別個の学問だったんだが組み合わせたら物理法力の証明ができるようになったため、今では理論法力学として確立してるんだよ」

「なんかアンジェリカって博士みたい……」

「げふっ……」

 博士論文通らずに僕は腐って飛ばされるんだよ、リーナよ。

「アンジェ、泣くな」

 ジンが頭をぽんぽんと叩く。お前はいいやつだな、変人だけど。



「それよりも、アンジェリカが剣闘術ぅ?」

「あぁ、アンジェ君は放課選択は私やリーナっちと同じ剣闘術だったよね。でもアンジェ君ってそんなに強くなかったよね?」

と、ツァルカが言う。

「いやいや、お前らが強すぎなんだよ!」

と僕は反論した。


 剣闘術とは剣術と体術を足したフルコンタクト剣術だ。決まった場所(頭・首・籠手・胴)に剣か拳がきちんと当たるか、相手の剣を飛ばすか倒すかすれば勝ち、という元々剣奴が闘技場で行っていた賭け試合がルーツなのだが、護身のため中等教育や高等教育では放課選択に行われている。

 ただし宗教上の理由で武道が選択できない良心的武術拒否者のため、基本的に授業ではやらない。

 ここ最近ではストレス発散や健康保持のため街中にも剣闘術の道場はある。

 そして怪我も多いのか道場の横には接骨院も併設しているが。


 なお、学院時代はリーナとツァルカには剣闘術で勝ったことは無く、公式戦でも一度しか勝ったことない。

 が、教士四級は持っているので引率として闘技場(コート)に入れるし指導も出来る。


「そういえば、アンジェってなんで剣闘術を放課選択してたんだ?」

 ジンがワインをラッパ飲みしながら聞いてきた。


「あぁ、僕が通ってた中等学校って放課選択が剣闘部か軽音部かお茶会部しかなくてな」

「なんだよその偏った選択」

 誰かが言う。ほんとだよ。

「てか、お茶会部ってなんだよアンジェリカー、お嬢様部かぁー?」

 リーナが僕の背中に抱きついてきて、うざがらみしてきた。

「僕の中等学校って男女共学だったんだけど、お茶会部はみんなドレス着用なんだ」

「ほぅ」「はい」

「で、お茶会するんだよ、名前の通り。リーナ嬢が言う通りのお嬢様部だ」

「男子も?」

「もちろん。ドレス着用でお嬢様言葉は必須だ」

「男子も?」

「そうだ、ヒゲ剃ってウィッグ着けてメイクもするぞ」

「ちょっとその中等学校、お父様に伝えておくわ」

 なお、お茶会部は創立当時からの伝統ある由緒正しい放課選択である。

 しかも創立当時は男子校だった。




「それでさぁアンジェリカー、剣闘(デュエル)しよーぜ」

 目が座ってきたリーナが急に立ち上がる。

 なにが『それで』なのかは分からないが、こんなところで剣闘なんかできるわけがないだろうに。


「おいリーナ嬢、飲みすぎだ、落ち着け」

 ジンがリーナを抑えようとするが、聞く気はないらしい。


「うっせぇ! おーい誰か木剣くれぇ」

「そんなもん誰も持ってねえよ!」

「そっか、じゃあ真剣使うか」

 リーナはおもむろに腰に差したサーベルを抜こうとした。


「殺す気か! やめろリーナ」

「リーナ様っ! 店内の抜剣は法令違反です!」

 ジンとミルスがリーナを止めようとしたが、

「はっ!」

の一声で二人は床に転がっていた。


「はーいあたしの勝ちぃー!」

とリーナはゲラゲラ笑っていた。

 なんだ今の。何故、二人の腕に触れただけで何故転がるんだよ。


「おいリーナ様、今のなにしたんだよ!」

と僕が言うが、リーナはご機嫌のようでけらけら笑うだけだ。

「ん? 必殺技だよー。相手の動きと宇宙の法則に合わせてちぃっとずらせばズバーンだよ!」

 そうリーナが言うが、何を言ってるかさっぱりわからない。

「てか剣闘を知らんやつに使う技じゃないだろよ」

「えへへー、ごめんちぃ」


 リーナは反省はしてないだろう、けらけら笑いながらワインをラッパ飲みしていた。

 それ、ジンが飲んでたやつじゃないのか。

 飲んでたワインをテーブルに置くと

「それでアンジェリカー! 勝ぶ……」



「……おーい、ミルス嬢、モップとバケツもってきてくれ」

 どうやらお開きのようで。

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