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03話

 ラフェル達に紙吹雪を投げつけ、その後逃げ出そうとするルーチェをとっ捕まえ、そして道路の掃除を終えると僕たちは領主館へと向かった。余程緊張してるのかルーチェの歩き方が余りにもぎこち無かったが。


 僕らが住む三番街から領主館へは歩くにしてもそんなに遠くはない、散歩するには丁度良い距離感である。ただ、僕は普段履かないであろう良い革靴だし、ルーチェはヒールだが。



「ほらほら、ヴァカッシュの祭りもうやってるみたいね!」


「どこにも気の早い奴は居るもんさ……、ところであれ、ミノン君じゃないか?」


「あ、ほんとだ。あなた、ちょっと寄っていきましょうよ!」


と、ルーチェは僕の服袖を掴み引っ張っていく。なんとなく場違いな格好の僕達が近づいてくるのに気付いたのだろうミノンは、それが僕達と気付くとお玉とお皿を持って大きく手を振った。



「おー、あー、アンジェ先生とルーチェ先生! おめでとうございます」


「あぁ新年明けたもんな、おめでとう」


「おめでとうミノンちゃん。あら、それ甘藍(キャベツ)と腸詰めのスープ?」


「えぇそうなんですよ! ヴァカッシュに献上したお酒をどうしても下賜してほしい子どもみたいな大人が多くて! ……先生たちも如何ですか?」


と言いながらミノンはお皿にスープを丁寧に注ぐ。爽やかなスパイスの薫りと甘みのある香りが当たりを包み、鼻腔に広がる。


「じゃあ一杯頂戴!」


「おい、少しは遠慮しろよ」


「あなたも欲しいんでしょ? ───ミノンちゃん二人前宜しく!」


「アンジェ先生って甘藍が好きですもんね、いっぱい入れたげますよ」



 そう言ってミノンはルーチェに、そして僕にスープを渡した。しかし僕のスープには……


「ミノン君、甘藍は好きだが芯は……」


「べぇッ! ───新年早々見せつけてくれるアンジェ先生にはこれぐらいが丁度良いんですぅ!」


と、出汁取り用だろうか甘藍の芯ばかり入ったスープを手渡されたのだ。あかんべーして悪態付きながらもウインクしたミノン。皿の中身をよく見たら随分大きい腸詰めが入っていた。


「腸詰めからスープから私が全部作ったんですよ! なんなら一杯飲んでってくださいな!」


「あはは、これ以上ご相伴に預かったらここら自治会から叱られるよ」


 僕は笑いながら応えていたが、僕たちの近くに来た婦人部の方々がルーチェにパンとワインを手渡していた。それを彼女は嬉しそうに喜んで受け取った。


「良いんですよ新年ですから! ってか先生達って凄く気合い入った格好ですがどうしたんですか?」


「あ、あぁ。今から領主館で、な……」


 僕は少々伏せ目がちに応えた、なおルーチェはそこらへんのテーブル席に混じって乾杯をし、宴会に参加していた。それを聞いたミノンは二度三度口をパクパク動かした途端、



「なッ、なななッ! ───みんなぁー! ここに新年早々結婚するカップルがいるぞぉー!」



とかなりの大声で叫んだのだ。


「なな、なんだってー!」「おい婦人部、酒と肴持ってこーい」「羊飼いとシルヴィかっ!」「宴会だーッ!」「ちょっと青年部ぅー!?」「テーブルと椅子こっちだ、急げ!」「んだとぉ!」



 途端に皆が立ち上がって僕らを見ると、あれやこれや怒声を上げつつ動き出す。今まで飲み散らかったテーブルをあっという間に片付けると料理やお酒を綺麗に並べ、僕たちを上座席に座らされたのだ。まるで高砂席のようであろう。本当に彼ら自治会員の動きは俊敏だったのだ。


「えー、この度は新郎……あ、アンジェさんね……アンジェ先生と……はいはいルーさんね……新婦のルー先生、え、ルーチェ先生ね? のおめでたい日を祝う会です! 司会は自治会副会長のライドゥです!」


  わーぱちぱち



「挨拶不要! 皆の者、飲むぞー!」



「酒だー!」「かんぱーい!」「おめでとー」「もげろ」「おめでとうございます!」


と、僕たちはこの自治会で酒のアテにされたのだ。しかも若い乙女が笑顔で僕のグラスにワインを注ぐ。ルーチェはもう一人の乙女に注がれたワインを美味そうに飲む。そして小休止してた辻楽団が景気のいい演奏をし何人かが踊りだす。気が付いたら皆に誘われ僕たちも踊る。





「───んで、遅いなぁ思ってたらそういう事?」


「あぁ、本当に面目無い」「コーキちゃんごめんー」


 すっかり日が暮れた頃、領主館へ着いた私達をコーキは煙管を燻らせながら僕らを見る。どうやら僕たちが春分(年明け)に来る事をツァルカから聞いていたようで、休日出勤して待ってたのだ。


 しかし待てど暮らせど来ない僕たちに業を煮やしたコーキは帰宅しようと領主館を出た所、裏手の官舎でやんやと踊る私達を見て連れて来た次第だ。



「んま休日出勤手当、弾んで貰うわ」


「本当に面目無い」


「気にしないで、───書類は完璧ね。はい、領主の執行代理人として署名捺印したわ。おめでとうございます、晴れて夫婦になりましたお二人に幸多からん事を」


「ありがとう、コーキ嬢」


「兄の件、ちゃんと約束守ってくださいね!」


「あ、コーキちゃん! その件だけど、ジンも近々結婚するわよ」


「そうなんですかぁ!?」「マジ?」



 コーキ以上に僕が驚き叫んでいた。あの遊び人を絵に描いたかのような男が結婚するなんてと思ったぐらいだ。しかし僕の内心を読んだかルーチェは僕の蟀谷を軽く突いたが。


「なんか縁が合ったんだって! 近々コーキちゃんにも連絡が行くと思うわ。───あなた、ジンは軽薄じゃないわよ、……遊び人だけど」



 そうかあいつもついに結婚か……、たぶんお互い同じ事思ってたりして。

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